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NOSIRP  作者: まるっち
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浄化

マルクスに部屋に招かれたルッツと、来なさいと命令され

仕方なく彼の部屋に来たセシルは

居心地悪そうにいつものように部屋の隅に立って腕組みをした

「魔女と聞こえましたが」

マルクスが静かに問うと、セシルはぐるると唸り声を上げながら

「…狂宴…の魔女を見つけた…」

と苦しそうに言う

更に質問をされ、場所、状況など全て洗いざらい吐かされたセシルは

ゼェゼェと肩で呼吸をしながらその場に膝をついた

「貴方は私に反抗できない

いい加減に覚えた方が得策です」

「…っせぇ!アイツは俺の獲物だ!!

勝手にテメェに殺されてたまるか!!」

「魔物にもなりきれない半端な貴方が対抗できるような相手ではありません

何せアレは旧魔族…格が違う

それに、ヴィルヘルムとキースを向かわせますが

恐らくもう件の場所には居ないでしょう」

ルッツはマルクスのベッドに勝手に腰を下ろして

何を見せられてるんだろうなwと半笑いでそれを見ていた

そんな彼に、マルクスが視線を向ける

「貴方も会ったのでしょう

何かされましたか」

「俺?なんで?」

じっと感情のない目で見据えられ、ルッツは少し怯んだが

何もないと言い切った

「そうですか、しかし魔女は危険ですので

今度出会っても迂闊に近付かないようにして下さい

何事もなく生きて帰れたのは奇跡といっても過言ではありません」

注意されて、はーいと気のない返事を返す

それで良かったらしくルッツはそれ以上は何も追求されなかった


解放された2人は共有スペースに戻ってきた

「つか、おっさんとあの兄ちゃんはどういう関係なのw」

「…あぁ?…チッ、テメェには関係ねぇだろ

お前はとにかくもう俺に関わるな

ろくに戦いもしねぇくせに着いてくんな!

分かったな!?」

セシルは怒りながら自室へ戻って行ったのでルッツも自室へと戻ってきた


魔女に登山口まで送ってもらった

あれは嘘である

気を失って目が覚めたら、1人ヴィシャスの道の途中で倒れていた

セシルやデリックは既に帰った後か誰も居らず

ルッツは1人、隠れながらノーシルプまで帰ってきていたのである

魔女が“何かくれた”のですごくパワーアップしたとか

すごい能力が身についたとか

そういうのを期待していたが、特に何かが変わったという感覚もなく

ルッツは騙されたという気持ちで一杯であった

「ま、そもそも魔女だしな

そんな奴が本当にいいものくれるわけねーわなwww」

気が付いたら時計が21時を指しており

窓の外はすっかり暗くなっていた

「いけね…寝ちったw」

ベッドの上でゴロゴロしているうちに

いつの間にか眠っていたらしい

お腹も空いていたので、何か食べようと共有スペースに出ていくと

ジクスとリゼットが居た

「あれ?何かあった?」

2人とも深刻そうな面持ちでいたので、不思議に思った彼は声を掛けた

「城下街に使徒が降臨しているの」

「え?レプレイス以外でも来るんだ?」

「いや異例だよ」


それは今日の午後のこと

薄曇りの空に急に穴が空き、そこから数人の使徒がクリスタルレイの城下街に舞い降りた

その中にはウラノフェンの姿もあった

それらは先ず、クリスタルレイの城へ降り

少しの間を置いて街の四方へ散った


そして…街中で悲鳴があがる

使徒は何人かの市民を捕まえ、広場に引きずってくると

彼らを民衆の前で八つ裂きにした

恐れ慄き唖然とする民衆の前で、後からやってきたウラノフェンは

女の生首を広場に投げ捨てた

「魔族はお前達人間の好む姿で現れ、紛れ込み

再びこの人間の世界を掌握しようとしている!

その女を見よ!

その女は現にエドリック王に取り入り

このスノームースを内側から貪ろうとしていたのだ!!」


民衆は恐る恐る地面に転がった生首を覗き込んだ

その顔は、確かにコロゴロフが城下街の市民に向けて放送した映像の中の魔族の女に違いなかった

更に、別の使徒達が連れてきた市民達が民衆の前に引き出された

「彼らを見よ、この善良な市民に見える者達はお前達の世界を狙う魔族の手先である!」

ウラノフェンが1人の男に手をかざすと

男は苦しみ唸り声をあげ、数分の後に異形へと姿を変え

ウラノフェンに襲い掛かろうとした所を

別の使徒によって首を切り落とされた

「魔族がすぐ隣まで侵食してきている!

これは由々しき自体だ

これから我々は人間の世界を守る為に浄化作業に入る!

怪しい者を見つけた者は手を挙げろ!

人間の世界を取り戻すのだ!!」

わぁー!と歓声が沸き起こり

人々は我先にと怪しいと思う知り合いを、隣人を、果ては恋人…家族までを使徒に密告し始めた


「な…何だよそれ…」

自分が寝ている間に、外でそんな恐ろしいことが起きていると知ったルッツは声を震わせた

「密告された全員が殺される訳ではないけど

もう何人も広場で首を切り落とされたわ…

今のところ、殺された人々は本当に魔族だったかも知れないような変貌を遂げてるけど…」

「使徒を信用しちゃダメだ」

ジクスが強く言い放った

「確かに、王は魔族の女性を囲ってたけど

市民にそんなに沢山の魔族が紛れ込んで居たとは思えない」

「…そうなのか?」

ルッツは人間のフリをした魔族を数人知っている

とはいえ、彼らは圧倒的に強者であり

そんなに簡単に広場で首を落とされるようにも思えない

「ノーシルプは使徒達には見つけられない筈だ

2人ともいい?使徒が城下街から出ていくまでは、絶対に外に出てはダメだからね」



それは少し前のこと

ヴィンセントは広間での使徒の降臨を民衆に紛れて見ていた

人々の前で次々と処刑されていく、魔族と言われた市民達の首が全て地面に落ち、民衆たちの歓喜の声が沸き起こり

ウラノフェンを除く使徒が、まだ潜む魔族を狩るために城下街の四方へ飛び去った


彼はそれを見届けて、民衆達が魔族の死体蹴りに飽きるのも見届け

やっと滅茶苦茶になった死体の所に歩いてきた

「…魔族…」

光を失った半目を開いたままの女の頭部や市民の頭部…

それを見下ろすヴィンセントの背後から大きな影がさす

「魔族に何か思い入れがあるのか?」

ゆっくり振り返ると、使徒ウラノフェンが逆光で立っていた

「…いや?魔女も魔族も変わらないなと思っていた所だ」

「…ほう?」

「僕は冒険者だ

実際、こういう魔族は人間と区別がつき難い

金銭を得るために魔女を狩る時に、本当に魔女なのかと悩む事もある

可能なら人間との区別の仕方を教えてほしい」

ヴィンセントは存在そのものが威圧のようなウラノフェンを真っ直ぐに見上げて言った

すると、ウラノフェンは彼の胸に手を当てた

「ふん、平伏さないのか、いい度胸だ

魔族には人間にはない臓器が存在する」

「それだけか?」

「その為、濃い魔素の影響を受けることなく過ごすことが可能だ」

「…ニゲラで外に出ても平気な人間は怪しいということか?」

ウラノフェンは不気味に笑った

「魔力の流れが見えれば、見ただけでも分かるのだが

人間にはまず無理だろうな」

「つまり、怪しい者は殺せと…?」

「人間はこの世界の財産だ、無闇に数を減らされては困る

お前達が見分けるならよく観察する、これしかない

魔族も延々と人間に姿を寄せておく事は出来ない

いつかは真の姿を曝け出す」

ヴィンセントはノーシルプに向けて歩きだした

街の何処かから、悲鳴が聞こえる

きっとまた“魔族”が使徒に裁かれたのだろう

「おいおい、ヴィンス

危ないじゃないか、なあ?

話すにしてももっと謙ってやらないと

奴らいつ機嫌を損ねるか分からない」

「すまないジョン…知りたかったんだ」

ヴィンセントは1人で会話するように喋り出した

「使徒も大概だ、関わらない方がいい」

「そうだな、気をつけるよ」

2人分の言葉を1人で話し、器用に表情まで変えている様は異様だ

「それで?あんな事を聞いたんだから

気になる奴がいるって事だよな?

無茶はするなよな

お前だけの身体じゃないんだからさ」

「うん、分かってる」

さあ、あの子が待ってる

そう言うとヴィンセントは足早にノーシルプへ戻った

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