協力者
あのダンジョンを攻略する為に生じる問題を紙に書き出したルッツは
共有スペースで溜め息を吐きながら
椅子の背もたれに背中を預け伸びをした
まずは最も重要な攻略の為のパーティー
あのダンジョンがどのくらいそこにあるのか分からないが
発生してから時間が経っているほど深く
雑魚やボスのレベルも高くなってしまう
「高く見積もって60は欲しいよな」
レベルが60にもなってくると
エルカトルのギルドでも登録している冒険者のごく一部と少なくなる
そして、そんな冒険者となるとパーティーを組む為に必要な費用が格段に高くなる
「一人当たり日当400は必要かも
…多分それ以上にふっかけてくるよな」
確実に攻略することを考えるなら
前衛2人後衛2、最低でも4人は欲しい
更にあの場所まで行って帰ってとそこまで考えると、かなりの大金が必要になる
安く済ませる方法として、ここの住人に友達価格で頼むという方法も考えたが
これは現実的ではなかった
そもそも、ルッツもノロイーストのウルベテルまで行くのに
膨大な魔結石を捧げる必要があった
ここの住人で数人パーティーに誘って同行してくれそうな人は居ても
行動範囲がクリア出来ないのである
そしてもう一つ
ルッツはどんなに頑張っても7日間しかノーシルプを離れられないということ
普通に歩いてあのダンジョンまで移動するのに5日は掛かる
前回は所々寄り道をしたので
ウルベテルに着くのに6日を要し、そこで更に道草を食ったので結果として強制送還を喰らっていた
「ウルベテルまでもう強行軍だよな
寝るまも惜しんで進んだ上で、馬車を使うか」
そうすれば片道3日くらいには短縮出来る筈だとルッツは紙に書き込んだ
とにかく、強制送還される前に老ゾンビを見つけられればいい
その後、強制送還されても今度は迎えに行くだけでいいから問題はないだろうとルッツは立ち上がった
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【エルカトル・冒険者ギルド】
何処に行ってもギルドとは
ゴロツキと言われても仕方ないような集団の溜まり場になっている
ルッツは騒ぐ下品な男達の席の間を通り抜けカウンターまで来た
「…仕事が欲しいのか?坊や」
エルカトルのギルド長、ジョザイアは長いもみあげと太い眉が特徴的なニヒルな男だった
「パーティーメンバーを探してる
レベルは60前後で、前衛と後衛2人づつ」
「…おいおい、マジで言ってるか?
そのレベルの人間と坊やは釣り合わない
雇うって話ならあるかも知れないな」
「いくら掛かる?」
「さあ?それは自分で交渉するんだ」
そう言いながら、ジョザイアはギルドに登録している名簿から条件に合う人物の情報を出した
「今丁度ここにいるのは、あそこのグループだ」
指さされた方を見て、ルッツは礼を述べ交渉に向かった
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結果、誰も雇えなかった
ルッツを見て相手はマトモに話にすら応じなかったのだ
適当にあしらわれ、金を出すと言っても大爆笑される始末
話にならないとギルドを後にした
「クソムカつくぜ…」
しかし、このままではダンジョン攻略など夢のまた夢である
ルッツは考えた後、クリスタルレイに足を運んだ
前に王から貰った“通行書”を使い
城に入った彼は王の前まで連れて行かれる
ルッツが現れエドリック王は暫し驚いていたが、直ぐにニヤッと笑顔を作ると手招きしてきた
「俺のが恋しくなったか?ん?」
「いやwあんたのデカくてイテぇから好きじゃないwww
じゃなくて、俺に何人か兵士を貸してくんない?」
想像もしてなかったお願いに、王は呆気に取られたあと大笑いした
「何だ?今度はあれか?
俺から借りた兵隊で王になろうってか!?
ハハハハハ!!!」
「違うしwww攻略したいダンジョンがあるけどレベル的にキチーのwww」
「バカか!?そんな事で民間人に兵隊貸せるわけないだろう!?ギャハハハ!!」
一頻り腹を抱えて笑った後、王は涙を拭いて大きく溜め息を吐いてから静かにNOと言った
「何を企んでるのかは知らないが
今はお前と遊んでやっている場合ではない」
やれやれ、こんな時でもなければ
むしろ俺が羽を伸ばしに着いて行ったのにと王はルッツを追い返した
城から出る前に、兵舎に寄り
キースにも声を掛けてみたが盛大にバカにされただけだった
しかしルッツは諦めない
一度ノーシルプに戻ると、セシルを捕まえ
以前にチユノバス廃坑で一緒にいた男を紹介するようにと迫った
「…いや、アイツは俺を雇ってあそこに行ったくらいだから強くないぞ…」
とセシルに断られてしまった
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最後に幾つもの裏路地を折れ、とある一軒の家の玄関前まで来た
ここに来るのは3度目になる
一度はセシルに連れて来られ、2度目は王と一緒に来た場所だ
コンコンと扉をノックすると
少しの間を置いて、はーいと若い男の返事があり扉が開いた
「えーっと、あ、前に王様と来た子か」
黒髪の青年にリビングに通された
そこではあの紳士が、紙に何か難しい図形や計算式をガリガリと書き込んでいる
「ダーリン、お客さんだよ」
青年に声を掛けられて、紳士はルッツをチラッと一瞬見た
「多分聞こえてるから話していいよ」
相変わらず、一心不乱に何かを書いているが
青年にそう言われたので、ルッツは要件を話した
「ダンジョンで探しものしてて、潜りたいんだけどレベルが足りない
もし良かったら手伝って欲しいんだけど…
ちゃんと金も払うし」
紳士は聞こえているのか、うんともすんとも言わなかった
「あー、この人にお金とか意味ないよw
それよりもっと知識欲とか突かないとw」
ルッツは少し考えた後
アスシアスが老ゾンビに興味を持っていた事を思い出した
「喋るゾンビ、普通に意思の疎通が出来るゾンビがいる!
俺の恋人なんだけど、そいつを捜すために手を貸してほしい!」
紳士の手がピタッと止まり、ルッツを見た
「要は魔族か?」
「え、いや、魔族かどうかは知らない
自分でゾンビって言ってたし
どっからどう見てもゾンビなんだけど…
普通の人間みたいに生活してる…」
紳士は少し考えた後、また目の前の紙にガリガリと書き込み始めた
ダメだったかと、ルッツが落胆した時
紳士は書くのを止め、紙をまとめて立ち上がった
「何処のダンジョンだ」
「お、やる気出たって良かったな」
青年はそう言って出掛ける準備を始めたが
お前は留守だと言われ、紳士に文句を垂れる
「ノロイーストのウルベテルにある」
「そこそこ距離があるな」
紳士はそう言うと、ルッツに着いてこいと言い別の部屋に移動した
そこはゴチャゴチャと魔術に関連した物が置いてある部屋だが
中央の床は何も置かれていおらず片付いていた
「転移魔法で一気に飛ぶ」
紳士は床に這いつくばって魔法陣を描き始めた
「あ、えっと…」
「バイロンだ」
「バイロンさん?
俺もう1人、会えれば連れて行きたい奴居るんだけど…」
「書き上がるのに少し時間がいる
その間に連れて来い」
ルッツは急いでバイロンの家からダスカに向かった
ニゲラの後、呼び掛けた時は来てくれなかったが
アレから時間が経っているのでもしかしたらと思ったのだ
そして、登山口まで来て彼の名前を叫んだ
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10分待ったが現れない
「…やっぱ、来ないか」
諦めて城下街に戻る
とんだ無駄足だったと思いつつ
アスシアスのことが少し心配になったルッツは
「…まさか、ニゲラの時の魔族ってアスシアスじゃねぇよな…」
なんて独り言を呟いていた
ルッツは急に目の前に現れた人にぶつかり尻餅をついた
「いってーっ…どこ見て歩いてんだよ」
「呼んだだろう」
頭上から降る声に、驚いて顔を上げるとアスシアスが立っていた
「はっ?何で…ダスカじゃなくて街に」
「買い出しだ、私も食べねば生きていけないからな」
彼はそう言って買い物袋の中を見せてきた
この後、バイロンの家にアスシアスを連れて行き
危うく戦闘になりそうになったのは
また別のお話…




