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NOSIRP  作者: まるっち
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クレバスの妖精

ルッツは隠密の服を装備し、必要最低限の荷物を持ってダスカに向かった

前回来た時に道を塞いでいた罠の群れは無くなっていてその先に進めるようになっている

ルッツは魔物に警戒しながら隠密に徹する

途中、見たことのない恐らく高レベルだろう魔物を何度かやり過ごし雪原地帯に出た

「ここ、隠れる場所全然ねぇじゃんw」

真っ白な山肌に所々、隆起した岩と常緑樹が少し生えている程度

だが、ぱっと見た感じ魔物らしきものも一切見えない

ルッツはなら大丈夫かと、一応気配を殺しながら雪原をすすんだ

そして、彼は致命的なミスを犯すことになる


「…あっ…!」


マズイと思った時にはもう遅かった

足元は一瞬で崩れ去り

氷の谷間に彼は真っ逆さまに落ちていった…



目覚めた時、ルッツは周りを氷に囲まれた暗い場所にいた

痛む身体を無理やり起こし、怪我の程度を確認する

幸いな事に、大きな怪我はしておらず

殆ど打撲症で済んでいた

それでも、大幅にダメージを受けていたのには変わらない

持ち物の中から、貴重な回復ポーションを使って数分待ち

全快してから立ち上がった

「…落ちてきたところ見えねぇしw」

相当な距離を転げ落ちたのか、穴自体が曲がっているのか

見上げても空は見えない


彼の落ちたクレバスはどうやら細長く左右に続いているらしく

登り返すのは早々に諦め先に進む事にした

「あ、あれそうじゃね?」

進んでいくと淡く光る花、ピクシーフラガを発見することが出来た

それは群生している訳ではないが、クレバスの中にポツポツと少なくはない数が生えている

「これ一つ10エルクとか、一瞬で金持ちじゃんwww」

ルッツは届く範囲のそれを全て詰み、ざっと50は集めた

「さてと…で、どうやって出ようw」

この花の単価が高い理由はそこだった

クレバスに降りる危険性、運よく生えているクレバスに当たったとしても

登り返すのが困難であること

まだクレバスは先に続いている

もしかしたら出口とかあったりして、なんてまだこの時は楽観的に考えていた


それからもう数時間は経っただろうか

ルッツは相変わらずクレバスの中を彷徨っていた

進んでいた方向は結局行き止まりになっていて、そこに氷漬けの人間の遺体が転がっており

彼の持ち物であるカバンからは大量のピクシーフラガが咲き乱れていた

まるで、自分の未来の姿のようなそれを目の当たりにしたルッツは

一瞬怯んだが、ちゃっかり遺体に群生するピクシーフラガを全て摘み取り

進んできた方とは反対側を目指して延々と歩いていた


「…ここ、俺が落ちてきた所かな」

真新しい崩れた跡を見つけて、やっと戻ってきた事にため息をつく

さっき歩いて行ったのと反対方向に伸びる氷の谷の細い道をルッツは睨みつけた

「行くしかないよな」

出口がある保証はないが、ここで立ち止まればあの遺体のように

ピクシーフラガの養分になる未来が待っている

ルッツは先の見えない道を再び歩み始めた

気がつくとルッツはソファーに寝かされていた

暖炉の明かりだけの薄暗い見知らぬ部屋の中にいる

一体何が起こったのかと、動揺しながら起き上がった

「俺、クレバスの中に居たよな…」

延々と氷の谷の細い道を歩いていた筈だ

ガチャ…部屋のドアノブが回り、ルッツは体を強張らせた

マントを着てフードを目深に被った男が入ってきて、そのマントを脱ぎ近くのポールハンガーにかけた

彼はスキンヘッドの頭を一度撫でて、暖炉の前まで来て、ようやくルッツが起きている事に気が付いた

「…ああ驚いた、目を覚ましたか人間」

変な言い回しをした彼は、暖炉の上に置いてあったヤカンを取り

コップに熱くなったお湯を注いでソファーの横にあるエンドテーブルにそれを置いた

「寒すぎると死ぬだろう?

雪解け水を温めた、飲め、温まる」

ルッツは恐る恐るコップを手に取り、匂いを嗅いでから口をつけたが

本当にただのお湯だった

「…あのさ、俺なんでここにいんの?

ここあんたの家?」

「ここは私の臨時ラボ、お前はフィールドワーク中に拾ったんだ

低体温症だったか?ここは人間が長時間いていい場所じゃない」

男はそう言い、自分もただのお湯を飲む

「…助けてくれたって事だよな?

てか、さっきから人間人間っていうけど

あんたも人間だろ?てか誰?」

男はハハハと笑う、そして暖炉の火の上に鍋をひっかけ温め始めた

「私はアスシアス、魔族だ」

ルッツは思わず飛び上がり、ソファーを盾にするようにその後ろに回った

「…俺食っても美味くねぇしw

あ!俺、特技があるんだ殺さないで…」

「食べない、殺さない、魔女ではない

私はしがない学者だ」

「…ほ、本当に?その鍋は?」

「これは昨日の残りだ

腹が減っているだろう?」

アスシアスはツルツルの頭を2、3度撫で近くの椅子に座った

「腹ごしらえが済んだら上まで送ってやる」

「なんでそんな親切なのwww」

魔族といえば、ルッツはキースしかしらない

彼は親切ではなく、小馬鹿にしたように興味だけで絡んでくる感じだ

それに比べて、目の前のアスシアスは本当に魔族なのかと疑いたくなるような対応をしてくる

「人間は保護対象

お前達を無駄に殺してはいけないという法律が魔族にはある」

「なにそれwww地上に魔物とか送っておいて何言ってるのwww」

「魔物はお前達の領地でいう“動物”と変わらない

誰かの意思で人間を襲っている訳じゃない

奴らは腹が減ったら手近な物を食べる、それだけだ」

「魔女は?魔女って魔族だろ?」

「あれは犯罪者だ、魔力に魅入られた成れの果て…

私達の法でも駆除対象だ」

初めてまともに会話のできる魔族と出会い

ルッツはしつこい程、アスシアスに質問を浴びせた

彼はそれに対して嫌そうにすることもなく淡々と答えてくれる

「じゃあ、アスシアスは

隠れながらニゲラの研究をしてるんだ?」

「そうだ、邪魔が入るのでひっそりとな」

「てか、ニゲラって魔族の仕業じゃないのかよ…」

あれは自然現象だと、アスシアスはいい

ニゲラが起こると魔族領もただでさえ濃い魔素が更に濃くなると続けた

「魔素が濃すぎると、魔族でも狂う者が出る

それが“魔女”だ

ニゲラの解明は私達にとっても必要なことなのだよ」

「…そういう理由なら、国に認めてもらってちゃんとした場所で研究したらいいじゃん」

「スノームースはアデモスと友好国ではあるが、魔族というだけでお前はさっきどうしたね?

こうして話ができる人間がいる事が私にはある意味大発見だ」

「友好国なのwww

初めて知ったんですけどwww

俺は恋人がゾンビだから、敵意がないなら魔物でも平気っていうかw」

アスシアスはルッツの言葉におお、と声を上げた

「だからお前から異様な気配がするのか…

魔族と積極的に交わりたい者が

あの風変わりな王意外にいたとはね」

「なにどういう話?」

アスシアスが言うには、現スノームース王エドリックは貢ぎ物として

魔族の女を1人王宮に迎え入れているという

「私も噂でしか知らないが

随分と惚れ込んでいると聞く」

「あー…そうなんだ」

これはなかなかヤバイゴシップかもとこの情報は丁寧に扱うことにした


昨日の残りという、アスシアスの料理を食べて身体が回復したルッツは

彼に頼んで地上に戻してもらう事にした

「所でお前は何をしにここに来た?」

「俺?俺は金になる錬金素材を探してただけで、あんたの邪魔はしないよw」

「その鞄に詰まっていた花か?

他にもまだ何か探すのか?」

「山頂にパウダーモスを採りに行くw」

ルッツの装備を見てアスシアスは何か考えた風な仕草をしてからこんな提案をしてきた

「さっき研究に丁度一区切りついた所だ、手伝おう」

「なんでwww」

「その装備では山頂の吹雪に長時間は耐えられない

それに、人間の錬金術とやらに興味がある」

「俺はただのお使いで錬金術分かんないんだけどwww」

こうして、ルッツは魔族とまさかのパーティーを組むことになった

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