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NOSIRP  作者: まるっち
23/84

頭頂眼

その日は、前日に遅くまで客を相手にしていたルッツは

起きるのが遅くなり、いつもよりも2時間遅く自室を出て来た

「えっなに?何か始まんのw?」

広くはない共有スペースに5人以上の住人が集まっているという珍しい光景に、驚き声が上がる

「あ、ルッツおはよう

君もこっちにおいで、大事な話があるから」

ジクスに手招きされ、適当な場所に座る

その場にいるのはジクスを始め

セシル、リゼット、カノープスにボム

そして初めて見る赤毛の髭の男と

リグマンR型の男がいた

皆の視線はこの、リグマンの男1人に注がれている

「5日…恐らく5日後だ、ニゲラの月が始まる

今回は長いぞ、2週間…いや3週間は備えた方がいい」

リグマンは表情の読めない顔でそう呟く

「3週は長いわ、商売にならないじゃないか!

あんた何とかならないの!?」

カノープスはキンキンと頭に響く声で叫ぶ

「俺は感じるだけだ」

んもー!役立たず!と勝手に怒ってシェアハウスを飛び出して行った

「…まだ新聞にも載ってねぇ、お前の情報はどのぐらい信憑性があるんだ」

リグマンは自らの頭のてっぺんを指差した

「目で実際に見えている

少なくとも、俺は今まで外したことがない」

「えーっと、悪いんだけど

俺今来たばっかで状況が分からないんだけど、誰かおせーて?」

ルッツは手を挙げ、この不思議な集まりに入り込んだ

「ニゲラの月が始まるのよ」

「何それwww」

「え?…何度か経験してるよね?

去年もその前の年もあったし」

初歩的なことが分かっていないルッツにジクスが詳しく説明することになる

「一年は基本12ヶ月あるのは分かる?」

「いや流石に馬鹿にしすぎw」

一年はアルブムから始まり

ロセウム、ルブルム、アウランティ、フラーウム、スマラルダ、ウィリデ、サッフィル、カエルラ、ウィオラーケ、プッルム、ラーウムの12の月で構成される

そして、この12に加えニゲラと呼ばれる月がある

このニゲラはカレンダーには載らない

いつ始まり、終わるのか

何日続くのかも誰にも分からないからだ

しかも、ニゲラは毎年あるとは限らず、ない年が続くこともあるし、ある年が続くこともある


このニゲラの月の間、世界からは日光が消える

空は闇に覆われ何日も夜のような日が続く

「言われてみれば、長い間夜が明けないことがあったっけ

…ジジイには外に出るなって言われてたからよく知らねぇけどw」

「それがニゲラの月だよ」

ただ、日が上らないだけではない

原因は不明だがこの期間は空気に含まれる魔素が異常に増える

この魔素は魔力の素であるが、濃度が高いと人間の健康を害する

風邪のような症状から、重症化すると意識喪失や麻痺…死ぬことすらある危険なものだ

「魔素に関しては、家の中なら安全というわけでもない

魔素を吸着する物を置くのを忘れると酷い目に合う

初めまして、僕はヴィンセントだ

安価で手に入れやすいのはウメニカブサっていう薬草の苗だ

これは周囲の魔素を取り込みながら成長する

鉢植えを部屋に置いておくだけでいい」

ヴィンセントのアドバイスをふーんと頭の片隅に置いておく

「要は“魔力あたり”とか“魔力酔い”起こすから外に出るなってことなんだ?」

「…それだけじゃねぇよ

魔物が増える、街の外壁外は道の上でも安全じゃなくなる

外壁の中ですら低レベルの魔物が彷徨くぞ」

「壁の意味www」

リグマンの男は徐に立ち上がり、シェアハウスを出て行こうとした

「えwおっさん、話しはそれで終わりなのw?」

「ニゲラに備える必要がある

同胞に察知している者はいるだろうが

まだ人間は知らないはずだ

早く物資を集めないと手に入らなくなるぞ

…あと、俺はテインだ

お前と年もそう変わらない、忘れるな」

かくして、ニゲラの準備を皆で進めることになった

セシル、リゼットは魔物除けの作成

ヴィンセントは魔素対策

ルッツはジクスについて食料の確保

ボムやテイン、先に出ていったカノープスといった獣人達はこれに加わらず

各々好きに動くようである

「獣人って集団行動できないのな」

これについてルッツが愚痴をこぼすと

ジクスはまぁ…と苦笑いを浮かべる

「そもそも、ニゲラで被害を受けるのは人間だけだから

彼らには準備とか必要ないんだよね

むしろ、一部の獣人には稼ぎ時でもあるくらいだし

テインは毎回教えてくれるけど、それすら珍しいことなんだよ」

獣人は種類に問わず、非常に魔力耐性が高く“魔力に嫌われし者”と比喩される

そのせいなのか、彼等は体内に魔力を蓄積できず、魔道具など道具を用いなければ、一切魔法を使えない

「人間はニゲラの月は基本外に出られない、けど魔物は活発になる

誰が街を守ってくれると思う?」

「…獣人?」

「そう、この期間は国が高いお金を払って獣人に守りをお願いするんだ」

「はっwwwついこの前レプレイスで除け者にしといてwww?

普段だってめっちゃ差別するじゃん?

虫が良すぎwww」

「そうだね、だから彼らもかなり吹っかけてくるよ

ボムもテインも今頃そういう仕事を探してるんじゃないかな」

「カノープスは?商売上がったりって言ってたじゃん」

「カノープスは商人だ、商売の相手は人間だから

人通りがなくなると不利益なんだ

だから多分、国がニゲラの発表するのに合わせて売る品でも集めてるんじゃない?」

市場に辿り着いた2人は、保存の効く食糧を中心に多めに見積もって20人で4週間は待つくらいの量を集める

借りたリヤカーに穀物や干し肉、ドライフルーツなどを積み込みノーシルプに戻った

手に入れた食糧をしまいながら

ルッツは一番気になっている事を聞く

「てかさ、これ俺とジクスの財布から出てるじゃん?」

買ってきたのはノーシルプの住人の食料

結構な量の食品を買ったのでそれなりの額になっている

「ああ、心配いらないよ

後で全て割り勘にするから」

ジクスの言葉にホッと胸を撫で下ろす

そうこうしているうちに、他の住人も戻ってきた

「いやぁ、4軒回ったんだけどウメニカブサの苗が買い占められてて

5軒目でようやくある程度確保できた」

「カノープスかな…ありがとう」

元々、需要のある薬草の苗なので

割とどこにでもある筈なのだが

結構探したとヴィンセントは50株ほど机に置いた

「魔物自体ここには辿り着けないとは思うけど、準備をするに越したことはないものね

余ったら売ればいいし」

リゼットとセシルは、錬金素材を調合し

かなり強い魔物除けのお香を20個ほど作ってきた

「これで、やれることはやったかな

じゃあ、言うまでも無いとは思うけど

ニゲラが始まったら極力外には出ないこと」

「極力ってことは出てもいいのw?」

「自己責任でなら

あ、あと、俺は殆ど教会の方にいると思う

あまり帰ってこられないから宜しくね」


2日後、王宮からニゲラが迫っていると

スノームース全土に知らせが走った

既に準備を終えていたルッツは特に慌てることはなかったが

エルカトルの街は小さなパニックが起こったように慌ただしくなり

人々は長い夜に備えて右往左往していた

その中で、大量の薬草の苗や魔物除けアイテムを通常の倍の売値で売り捌くカノープスを見て

ルッツは彼の商売根性に関心するのであった


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