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NOSIRP  作者: まるっち
18/84

国とは

王に敵わないと悟ったルッツは

あれから考えに考えた末に、今ある国を変えるのではなく

新しい国を作ってはどうだろうという考えに至っていた

それについて、ジクスにどう思うか

意見を求めてみたところ、問題点を次々と挙げられた


まず、一番最初に引っ掛かるのは土地の問題である

国を作るのなら、それ相応の国土が必要になるが、ルッツは家一軒分の土地さえ持っていない

それに、この世界の全ての陸地は

既に誰かしらの所有者がいると静かに言われた

そして、次に国として認めてもらえるかという話になる

土地を手に入れたとして、その場所で「ここは自分の国で自分は王だ」と主張した所で

周りがそれを認めるかどうかという話だ

「国は幾つもあるけど、その全てが使徒に認識されて初めて国を名乗ることが許されてる

使徒が首を縦に振らなければ、どんなに広大な土地と領民がいても

そこは国とは認めてもらえないんだ」

更にとジクスは続けた

「王だって誰でもなれる訳じゃないよ」

土地と使徒からの認定が貰えたとしても

その持ち主が王になれるとは限らないという

「推奨レベルって知ってるよね?

エルカトルだと50だったかな

あれの1.5倍は超えてないと先ず王位を得られない

だから現王は確実にレベル75以上だよ」

これの理由は

推奨レベルよりも王の能力が低いと、どうしても国のレベルも低くなってしまう

それにより、魔物の類を退けられずに不毛の土地へとなってしまうことを防ぐためなのだという

「大昔の話だし、国ほど大きな単位ではないのだけど

小さな領地を治める貴族が、まだレベル的に充分でない我が子に席を譲ったことで

1つの街が魔物に襲われて、アンデットの街と化した事例があるんだ」

「つまり?俺には無理って事?www」

「無理とは言わないよ

君に必要なのは先ず強くなる事だね

そして、お金を集める

で、土地を買って…後は天に祈る…かな」

「最後神頼みとかwww」

駄目じゃん、とルッツは笑う

「使徒に認めてもらうなら祈らないと

実際、彼らがどういう基準でOKだしてるのかなんて俺も知らないし

ああ、でも…ルッツはかなり厳しいかもなぁ」

使徒は魔物、魔獣、魔族…その手の不浄の者たちを忌み嫌う

彼の目的と彼から漂うゾンビの気配は、使徒にしてみれば処分の対象になりうるかもと

ジクスは表情を曇らせた

「その使徒って使徒なら誰でもいいの?」

「え?いやどうなんだろう?なんで?」

「知り合いに使徒が居んだよねwww」

ルッツはここに来ることになった経緯を話す

老ゾンビに対して、友好的とは言い難いが

話を聞いてくれる使徒がいるというのは事実だった

「それは異端…あ!そうだ、10日後のレプレイスには使徒がこのエルカトルに降臨する筈だよ」


“レプレイス”それはこの世界で一番大事な日とされ、各国各地で様々な数日かけてお祭りが行われる

それは遥か昔に、人類が魔王を倒し、生存する権利を得た日であり

英雄達を讃え、この先の人類の繁栄を願う日でもある

そんな有難い日には、使徒が各国の首都に降臨する日でもあるのだ

「祭りは知ってるけど、大きな街には使徒も来るのは知らなかったわw」

「お祭り自体は1週間続くけど

18日だけはノーシルプの外に出る時、忘れずにルッツはあの香水を着けてね

本来使徒は人間の言葉なんて聞いてくれないから…」

少しジクスの表情が曇った

「建国について聞くとしても、慎重にするんだよ」

聖職者であるジクスは、むしろ使徒は崇め奉対象で信仰の象徴かと思っていたルッツは

彼の奥歯に物が挟まったような物言いを不思議に思った


◆◆◆◆◆◆


「18日のレプレイスの日、我々は外に出てはなりません」

満月の光だけで、薄らと明るくなった部屋の中

噛みちぎられた首元に簡単な応急処置の魔法をかけたマルクスは静かに言った

2度目の吸血を終え、自我を取り戻したセシルは

抗い難い欲求に、彼の血を啜ったことに

激しい嫌悪感を覚え部屋の隅で塞ぎこんでいた

「…どうでもいい…クソっ…」

相手は人間ではなく、魔族であるのだが

セシルは無抵抗な、人と同じ姿をした彼を襲う自分が許せずにいた

「真面目な話です

この場所は非常に強力な魔術によって

招かれざる者から隠されています

今回のレプレイスに降臨するウラノフェンは、非常に凶暴で凶悪だと知られています

この日は他の2人も魔族領に帰してある程には…」

魔族にとって、使徒は天敵のような存在である

如何に魔族の王子といえど、容易にやり合ってはいけない相手なのだという

「貴方も、形を潜めていても此方側の存在

見つかれば血祭りに挙げられるでしょう」

「…ッ俺は人間だ!!」

しかし、セシル自身

ノーシルプに囚われて以来

本能的にレプレイスの日は自室に籠る選択をとってきていた

それがまた、彼は自分が人間ではないと認めているようで嫌になる

「何故そう人間であることに拘るのですか?」

「…何故?そんなもん、人間として産まれたからに決まってるだろ!」

マルクスはよく分からないといった風に肩をすくめると

机に置いてあった小さなガラスの箱を手に取り開けた

赤黒く太いムカデがゾロゾロと足を動かしながら箱の中から這い出してきて

マルクスの腕を伝って肩まで上がっていく

そして、それは彼の耳元に鎌首をまたがるようにして立ち上がった

「“彼”はヴェノム、産まれた時はただのムカデでした」

彼とは今、マルクスの肩の上で立ち上がっているムカデの事だろう

「“彼”はその他の生物がそうであるように

生きて行くためにその他の生物を捕食していきました

その捕食した、幾つかの生物が魔物だった

ただ、それだけです

彼も魔物に分類されるムカデになってしまいましたが

彼はそれを悲観してはいません」

ヴェノムはマルクスの使い魔である為に

魔物にしてそれ相応の知性と理性を備えているようだった

主人であるマルクスとは言葉が交わせるらしく、耳元で立ち上がっているのはその為らしい

「…そんな毒虫と一緒にすんな!何とでもいえるだろ!

俺はお前らの仲間に成り下がるつもりはねぇ!!」

「人間はか弱い、ほんの些細なことで死んでしまいます」

マルクスが部屋の隅に膝を抱えてうずくまるセシルのすぐ前まで歩いてきて

徐に短剣を引き抜き、彼の左肩に突き立てた

一瞬、何が起きたか理解出来なかったセシルだが

左側の少し後ろ側から刺された短剣は肩を貫通し

直ぐに引き抜かれた

その苦痛に、セシルは声にならない悲鳴をあげ

犬歯をむき出しにして歯を食いしばる

「…ッ…テメェ…!」

短剣が引き抜かれた事で血液が溢れてくる

マルクスは刀身についた血液をハンカチで綺麗に拭き取りながら

セシルに視線を送ることもなく元の位置に歩いて行く

「真人間なら、放っておけば

その程度の傷でも死が訪れる」

セシルが押さえている傷口の指の隙間を溢れる血液の量が、みるみる減っていく

「その再生能力は我々に与えられた特権ではありませんか」

すっかり血液の流れ出さなくなった傷口から、震える手をどけた

短剣に貫かれた筈の穴は既に何処にもないが

破れた服が、確かに穴が空いていたのを物語っていた…


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