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NOSIRP  作者: まるっち
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逃げる箆鹿、追う山熊

ノーシルプの共有スペースの机に、ルッツがぐったりと突っ伏していた

そんな彼に、キンキンと耳に響く声量でカノープスが話しかける

「ちょっとー!おたく生きてたの!?

あんなに毎日誰かしらにウザ絡みしてたクセに急に1週間も姿見せないから

死んだんだと思ってた!!」

ヤケに楽しそうなテンションで捲し立てる

「はw死んでたまるかよwww

あーでも、今回はマジやばかったw

流石の俺も死ぬかと思ったもんwww」

勿体ぶるような言い方をされ、カノープスの野次馬心に火がついた

ちょっと聞かせなさいよ!とルッツの前に座って訳を話せと促す

あの後、無事にクリスタルレイに侵入することに成功したルッツだったが

娼婦2人とは別にされ、彼だけが王の寝室へと通された

王のお気に入りになれれば、それはそれで事が運びやすいだろうと

とびっきりの猫を被って性技のあれこれを披露しようとしたがそうは問屋が卸さなかった


王は50を超えた初老の男だが

その肉体は鍛え上げられ、逞しい

そんな彼にベッドに組み敷かれ身動きが取れなくなったルッツに王は言うのだ

「お前、王の座を狙ってるらしいな」と

別に隠している訳では無かったが

王本人にそう言われては流石のルッツもドキリと言葉を失う

「反逆罪、あるいはベアのスパイか…

どちらにしても投獄して処すには充分だよなぁ?」

ルッツは彼のそんな言葉に、血の気が引いた

「だが、それじゃつまらない、だろ?

こんな面白い方法で俺に近付いてきたんだからな

だから“解らせて”やるよ

俺には敵わないってことを…」

「あのエロ国王まじバケモンじゃんw

7日間、毎晩何時間もかけて何回も…

しかも絶倫な上にクソデカいんだぜ!?

ケツが壊れるっつーの!」

なんと、ルッツは7日間の間

毎晩、精力旺盛な王の全力プレイの相手をしたという

7日耐え抜いた事で、投獄されずに城から出して貰えたが

最後に城への通行書を渡され

「まだ“解らない”ならいつでも来いよ

俺は生涯現役だからな、がははは!」

なんて、悪魔のような笑顔で見送られたのだ

「一応、城の医者に診てもらってるけどさ

ケツまだイテェのwww

コレ当分仕事になんねぇしwww」

「おたく、馬鹿ねぇ…

そういう問題じゃないでしょうに」

カノープスも呆れ返っている

そこへ、いつ共有スペースに来たのか

気付かない間にセシルが机の隣に立っていて

ルッツの目の前に新聞を投げ置いた

「…それ、笑い事じゃねぇぞ」

机の上の新聞記事を人差し指でトントンと叩く

そこには見出しで【グラウンドベア、2カ国と軍事同盟締結へ】とある

「…世界情勢っつか、近隣との情勢が不安定だ

お前、本気で死刑にされてもおかしくなかったんだぞ

…帰されたってことは、殺す価値もないと思われたんだろうけど」

「マジ?wwwてか、戦争起こるの?www」

「…俺も難しい事は知らねぇ

けど…ベアはずっと、スノームースの国土を狙ってるぞ

停戦合意して表向きは平和に見えてただけだ

実際はファングを使って攻撃し続けてる」

グラウンドベアとは、スノームースに隣接している国である

殆ど全ての国民がフェルゴン人で構成されていて非常に攻撃的な国として有名だ

スノームースとは数年前まで戦争をしていたのだが、そもそもレベル帯の高いこの国の国民は強く

落とせないと悟ったのか、ベアの方から停戦を提案してきていた

「おたく、もしかしてファングを知らない?

武装集団、テロリストね」

「そのファングを組織してるのはベアだって

…実しやかに囁かれてんだ」

「そうね、まあ、噂っていうか

事実でしょ?最近は隠す気も無さそうね

そうやってテロ組織使って、じわじわとスノームースの中で紛争起こしたりして

国力を弱めようとしてるって見解だわ

ただそれも無理そうだからの軍事同盟じゃないの?知らんけど」

「ヤベェ国じゃんw」

「それを知らないおたくも相当ヤバいよ」

「しょうがなくね?w

俺、ずっと墓地に住んでたしwww」

セシルとカノープスが若干引いた

「…とにかくだ、今の情勢で王座を狙う発言はヤバいってことだ

…ていうか、王になるってんなら

新聞くらい読んで時事ネタを頭に入れとけよ…」

「そんな紙切れ買う金勿体なくね?」

「…やるよ、俺が読んだ後だけどな」

セシルは机に置いた新聞をそのままにして外へ出て行った

「ていうか、おたく“あの臭い”が消えてるけど何したの?

かなり頑固そうだったのが、こんな完璧に消えるなんて

…アタシの鼻がイカれてんのかね」

あの臭いとはルッツの纏っていた死霊術的なアレのことだろう

「あーあれ?

何かそれを隠せる香水貰ったんだよね」

「何それ!見せてちょうだい!!幾らの値がつくか鑑定してあげる!

あ!なんなら友人のよしみで市場で売る時に付く値段より上乗せして買ってあげるわよ!?」

カノープスが机を乗り越えそうなほど前のめりになった

その目は瞳孔が開き切っていて、興奮しているのが分かる

「売らねぇよwww絶対詐欺るじゃんwww」

「じゃあ見せてくれるだけでいいから!」

お願いお願いと纏わりついてくるカノープスをヘラヘラとあしらっていると

ゴホン、と帰ってきたジクスが咳払いをした

カノープスはジクスを見ると、頭の羽をブワッと大きく広げルッツから離れ

「ケチねぇ、見せてもくれないなんて

あーあー、時間の無駄だわ、仕事仕事…」

などと、ブツブツ文句を言いながら外へ出て行った


「大丈夫?」

「大丈夫w流石に俺も学習するし、アイツの評判は街で聞いてるってw」

手癖の悪いあこぎな商人、だろ?というルッツにジクスは困ったもんだよとため息を吐く

「さーて、どうしたもんかな…」

今回のことで、王には手も足も出ない事が分かった

老ゾンビと普通に生活を送る夢は、どうしたら叶えられるのだろうかと頭を悩ませる

「いっそ、墓場に戻って…

あーでもそれだと使徒が来たら面倒いし…」

「王様になるのはやめたのかな?」

ジクスが温かいお茶をルッツの前に置いた

老ゾンビが迫害を受けず、人間と一緒に安心して暮らせる世界

それを諦めることは、老ゾンビを諦める事と同義だろう

「…いや、諦めない

けど、王になるって方向は変えないと無理かも」

珍しく真剣な顔でお茶を見つめる彼に

ジクスは優しく声をかけた

「もしさ、ルッツが1人ではどうしようもなく行き詰まっちゃったら

俺に話してみてよ、手伝える事があるかも知れないからさ」

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