サモア独立国発
やる気が出ない。
燃え尽きた心に残る何かが欲しい。
シフト、シフト、シフト…明日はカレンダーに赤く表示されたのに、出勤は休日出勤と言わない。残業代ももらわない。
賃貸部屋のベッドに潜る疲れた体が無意識に、スマホのインストールされたショット動画アプリを無限にスワイプしている。赤の他人の華やかな生活を見ただけで、癒されたふりをする。
「今コメント欄に1を入力する方は抽選でサモアまでの飛行機代をプレゼントにする」とライブ配信のライバーからDMがあった。宝くじで300円当選歴もある僕が、飛行機代をくれたら残りはなんとか…と思う人も少なくないはず。ちゃんといつか出張を強いられることも予見しパスポートを用意しているから。この島国から脱出したい。未知の領域を探索したい。そうだ!冒険だ!
どうする?応募する。
あれからどのくらいたったのか、仕事と帰宅に麻痺された僕には脳内時計を使って正しく時間を計る能力でさえ失ってしまっている。のんびりとセール価格で購入した、エコノミークラスの狭いシートに目隠ししてから へなへなと頽れる。耳栓を持ち込むのを忘れたけど、ホワイトノイズが快眠させてくれた。シンガポールとシドニーでの乗り継ぎはマラソン大会のようだったが、なんとか乗り越えていた。
「地球で一番早く日の出を迎える国」
鹿児島の桜島がポツンと太平洋の一角に立ったら、サモアの形となるのだろう。
4時間の時差があるのに、左側通行なんて、なんか違和感がある。
街を散策しようとしたら、僕より頭2つくらい高い日焼けした肌の人が駆け込んできて、僕のカバンを奪おうとしていた。
「ゴ バック ト チャイナ!ゴ バック ト チャイナ!」
スマホをポケットの中にしまえばやかった。