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美女たちとの無人島スローライフ ~何をしても「神」評価の男、規格外のサバイバル技術でのんびり楽しむ~  作者: 絢乃


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032 文化的な生活

 俺たちが拠点に戻った頃には、すっかり夕方になっていた。

 肌に心地良い涼しさが混じり、汗ばんだ体を優しく冷やしてくれる。


 拠点の柵が見えてくると、妙に落ち着くのが分かる。

 わずか四日目だというのに、ここが自分の“家”のような気がしてならない。


「ただいまっすー!」


 晴菜が柵の門を押し開ける。すると――。


「おお……なんだこれ!」


 思わず声が漏れた。

 柵の内側にある広場の一角に、竹製のテーブルとイスが並んでいるのだ。


 といっても簡易的なものではない。

 まるで市販品のように整ったハイクオリティな代物だった。


「これ、本当に作ったのか……?」


 呟く俺に、亜希が駆け寄ってきた。

 ワインレッドのミニスカと白のニーハイが織りなす絶対領域を凝視する俺に、彼女は笑顔で答えた。


「おかえりなさい、悠希くん。これらの家具は、私と玲奈さんで完成させました」


「時代は女性ですわ!」


 亜希の隣で、ドヤ顔の玲奈が胸を張る。

 二人が並ぶと、胸のサイズ差が目に付いた。

 その視線に気づいた亜希が、「むっ」と頬を膨らませる。

 俺は慌てて家具の話をした。


「す、すごいじゃん! これってネジや釘も使ったんだよな!?」


 これまでならツタや紐で結んで固定している。

 しかし、二人の作った家具にはそうした形跡が見られなかった。


「はい、悠希くんが買った物をお借りしました」


「付け加えますと、ネジ釘だけでなく亜希さんが作った樹脂製の接着剤も使っていますわ!」


「家具の製作を提案したり、作り方を考えたりしたのは玲奈さんなんですよ」


 二人が楽しそうに笑い合っている。


「そういえば、どうしてテーブルとイスを作ったんだ? いや、もちろん嬉しいけど」


 俺が尋ねると、亜希と玲奈は「ぷっ」と吹き出した。


「亜希さんの仰る通りでしたわね」


「え? 何がだ?」


「悠希さんなら、きっと作った理由を訊ねてくると仰っていたのです」


「それが普通じゃないか……?」


「いえ、普通というのは――」


 玲奈が背後のイスやテーブルに手を向ける。

 いつの間にやら晴菜が大喜びでイスに座っていた。


「――あちらのような反応をされるものですわ」


「これで地べたに座らなくて済むっすー! やったーっす! 亜希、玲奈、ナイスっすよ!」


「なるほど」


 俺は苦笑した。

 たしかに普通の人であれば、イスに座って食べたいものだ。

 焚き火を囲むことにサバイバルっぽさを感じる俺には盲点だった。


「ちなみに、きっかけは玲奈さんの要望なんです。“もっと文化的な生活を”とのことで」


「これは食事の雰囲気がガラッと変わりそうだなぁ」


 俺もイスやテーブルに触れてみた。

 丁寧にヤスリがかけられており、不快感のない仕上がりになっている。

 高さは申し分なく、座り心地も抜群だ。


「悠希さん、何か問題があれば教えてくださいまし。改良する余地があれば、どんどんアップデートしますわ」


 玲奈が腰に手を当てながら、誇らしげに言う。


「いや、問題どころか完璧だよ。二人ともありがとう!」


「次は私も混ぜてくださいっす! ゆーきんの付き添いはぜーんぜんポイントが稼げなかったっすから!」


「ですが、その分、悠希くんを独り占めできたのではありませんか?」


「まぁー、そうっすね! 二人で汗だくになるくらいには独り占めしちゃったっすよ!」


「なっ……!」


 亜希が固まる。


「今のは自爆でしたわね、亜希さん」


 玲奈と晴菜が笑っている。

 よく分からなかったが、俺も笑っておいた。


 ◇


 ほどなくして境野が帰還し、俺たちは晩ご飯の準備に取りかかった。


「聞こえなかったと思うけど、拡声器で呼びまくっていたんだよね。で、結果は見ての通りただの叫び損ってわけだ……トホホ」


「いや、めちゃくちゃ聞こえていたぞ、お前の声」


「マジか! なら明日も叫びまくるか! 朋絵ちゃん、待っていてくれよ!」


 そう言う境野だが、その顔には落胆の色が浮かんでいた。

 傷が回復しきっておらず、歩き回ったことによる疲労もありそうだ。


「まだ4日目だし、焦りすぎるなよ。絶対に見つかるって」


「おうよ!」


 そんな境野に気遣ったかどうかは分からないが、玲奈が手を挙げた。


「せっかく家具を作ったのですから、食事もアップデートしませんか? いつも串焼きだけではつまらないですわ!」


 これに亜希と晴菜が賛成する。

 境野も「いいね!」と賛同的だが――。


「でも、実際のところどうすりゃいいんだ?」


 俺は苦笑いで両手を開いた。


「俺は料理に詳しくないし、この環境だと食材も限られているよ。今あるのだと、クマガラスの赤身肉、三つ首ライオンの燻製肉、あとはキノコと野草くらいか」


「バナナとラズベリーとブルーベリーもあるっすよ!」


 そう言って、晴菜が果物各種を持ってきた。


「問題は調味料ですよね。カレー粉しかありませんから」


「とはいえ、ずっと串焼きではもったいないですわ。ビジネスの世界でも、変革がなければ顧客は離れていきます」


 そこで言葉を区切ると、玲奈はこう続けた。


「ここは一つ、わたくしが腕を振るってさしあげますわ!」


 自信満々に胸を張る玲奈。

 ロングドレスの深いスリットから右脚をチラリと出す。

 もう少しで太もものさらに先まで見えそうだ。


「「おほほ」」


 思わず鼻の下を伸ばしたのは俺と境野。


「おい、境野! お前には朋絵ちゃんがいるだろ!」


「しまった……! 俺としたことが……!」


「いや、どっちもどっちっすからね?」


 晴菜が呆れたように笑い、亜希はため息をついた。


「皆様方、異議はございませんわね?」


 俺たちはコクリと頷いた。


「では、悠希さん、アシスタントをお願いしますわ」


「了解。何をすればいい?」


「そうですわね、平らな皿を用意していただきたいですわ」


「オーケー。角材を加工して作るよ」


「ゆーきん、角材を薄くスライスしてもお皿にはならなくないっすか?」


「そこは宮大工の釘を使わずに嵌め込む技術で対応するさ」


「さらりと言ってのけるのがさすがですね」と亜希が微笑む。


 こうして、俺は急ピッチで皿の用意を始めた。


 ◇


 その後も玲奈の指示に従って作業を進めた。

 食材を切り分けたり、焚き火の火力を調整したり。


 もちろん、他のメンバーも見ているだけではない。

 亜希は食材を洗い、境野は肉類の下ごしらえをし、晴菜は材料や食器の運搬を担当していた。


「ぶっちゃけ俺よりも玲奈のほうがリーダーに向いているよな」


 玲奈は人の動かし方が非常に上手だ。

 皆の作業に目を配り、状況に応じて指示を出していた。

 そのうえで、自分が誰よりも働いているのだから感心する。


「何を仰いますやら。悠希さんが快適な環境を構築してくださっているからこそ、私がこうして好き勝手にできるのですわ!」


 そんなこんなで、俺たちの作業が終了した。


「皆様、ご協力ありがとうございました! 完成ですわ!」


 作りたてのテーブルに、五人分の料理が並んだ。


「すっげぇな……」


「この場の材料だけで作ったとは思えないっすよ!」


「ええ、本当にそう思います」


「上月さんやべー!」


 皆の視線が皿へ集中する。

 そこには、赤身のクマガラス肉をメインに据えた豪華な一皿があった。

 三つ首ライオンの燻製肉を刻んだ塊を彩りに添え、ベリー類を散りばめてソースのように仕上げてある。

 シトラール系の薬草が香りづけされており、ほのかに柑橘の匂いがした。


「その名も“クマガラスのソテー トロピカル風~三つ首ライオンの燻製肉とベリーのハーモニーを添えて~”ですわ!」


「ながっ!」


 思わずツッコミを入れる。

 ただ、出来映えのほうは非の打ち所がなかった。


「さっそく食べましょう!」


 玲奈に言われて、俺たちは席に着いた。


「皆、ナイフとフォークは持ったな?」


 俺が確認する。

 それらは玲奈に指示されて角材から作ったものだ。

 同じように箸置きやお箸も作ってある。


「それでは――いただきます!」


 俺はクマガラスの肉をナイフで切ると、箸に持ち替えた。

 ナイフとフォークは性に合わないので、特製の木箸で肉を頬張る。


「これは……旨い!」


 俺だけでなく、他の三人も同じように感動していた。

 この料理を作った玲奈本人も満足気に頷いている。


 クマガラスの肉は、ほとんど赤身なのに柔らかかった。

 微かに獣の臭みがあるものの、下処理が良かったようで気にならない。

 むしろ僅かにまぶしたカレー粉の風味と上手くマッチしていた。


 燻製肉やベリーのほうも完璧だ。

 特に二種類のベリーが甘酸っぱくてちょうどいい。


「皆様に喜んでいただけてなによりですわ!」


 嬉しそうに微笑む玲奈。

 そんな彼女を見て、俺はあることに気づいた。


「玲奈、いつの間にかTOP100に入っているじゃん」


 この発言で他のメンバーも気づく。


「うわ! 本当っす! 抜かれそうっす!」


「私は知らない間に抜かれていました……」


「俺だけぶっちぎりで順位が低いままだぜ!」


「このまま1位になるかもしれませんわね」


 ふふ、と笑う玲奈。

 冗談のつもりみたいだが、仮に1位になっても驚きはしない。


 彼女の順位が急上昇しているのは、それだけ頑張っているからだ。

 強い好奇心で俺や亜希から知識を吸収し、率先して活動している。

 それが順位に表れているのだから、1位だって十分にあり得るだろう。


「ごちそうさまでした!」


 こうして、俺たちは〈クマガラスのソテー トロピカル風〉を満喫した。


「やっぱり家具があると全然違うっすね!」


「料理も豪華だったので尚更ですね」


「今後は調味料を増やして、他の料理にもチャレンジしたいですわね! 悠希さんには調理環境の改善もお願いしたいところですわ」


 女性陣が楽しそうに話している。


「お喋りの最中に悪いが……」


 俺は話をぶった切った。


「皆、〈例のアレ〉を飲もう」


「あ! そういえば忘れていたっす!」


 晴菜の言葉に、亜希や玲奈、境野が「自分も忘れていた」と続く。


「忘れるなんてとんでもない……と言いたいが、俺も忘れていたんだよね」


 俺は〈例のアレ〉を取り出した。

 それは個包装された1錠のサプリメントだ。

 マルチビタミン&ミネラルの総合サプリで、必要な栄養素が全て揃っている。


「サプリメントって効果あるんすかね?」


「最先端技術によって生み出された代物だし、きっと効果がある……はず!」


 このサプリは1日1錠で、価格は10ゴールド。

 割高で効果も不明だが、これが栄養の偏りに対する俺の答えだった。

 栄養バランスを気にして食材を買うよりは安くつく。


「これから玲奈のご馳走もサバイバル生活の楽しみっすね!」


「ああ、そうだな!」


 皆の満足そうな顔を見ていると、俺まで嬉しくなってくる。

 この調子で5日目以降も頑張るぜ!

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