第29章 冷嬢と女帝の憂慮
マキシカ家でのお茶会から帰ってきてから、コーリィは少しだけ元気がない、ネッツはそう感じ取った。ネッツはラゥル・コソックをどう追い詰めるのか、彼女に尋ねたくてたまらなかったが、コーリィは何処か上の空だ。
それから数日が経った。コーリィは部屋に篭ることも多く、ネッツと食事を共にしない。だから、ずっと彼女と話す機会がなかった。
数日ぶりに顔を合わせた夕食の場でコーリィは言った。
「明日、私はメッセに行くわ。ネッツも行きたい?」
「めっせ?ってなに?」
ネッツには聞いたこともない言葉だが、なにかまたパーティのような類のものだろうか。
「ネッツ坊ちゃん、メッセとは、新しい商品や機械などを皆で集まって紹介し合う会のようなものです。新しい商品の作り手が売ってくれる店を探したり、共に仕事をする仲間を見つけたりするために行われます」
ナガレの説明に、ネッツはメッセとは、何か規則のあるパーティのようなものを想像した。
新しい商品を人々が集まって紹介し合う。人々の中には、その商品を見て欲しがる人間がいるということは理解できた。しかし、それならば普通の店でものを売るのではダメなのだろうかという疑問が出てきた。
「わざわざ集まらなくても、店で売ればいいんじゃないか?」
ナガレは目を細めて笑った。ネッツが考え込んだ様子を見て、満足げである。投げ出さずに考えることも勉強だとナガレは言いたげだ。
「メッセは店で売る前に、その商品が売れるのか、どんな人が欲しがるのか、どんな売り方をしたらいいのかを見極めるために開催するの。店に並べて待つより、商売が得意な人が集まったほうが、効率がいいでしょう?」
ネッツは考えたこともない範疇の話に、想像がつかない。
「んー?そうなのか?」
ネッツはそのまとまりのない赤毛をふわふわと揺らしながら、考え込む。
「坊ちゃんはメッセに行ったことがないでしょうから、想像がつかないかもしれませんね」
「行けばわかるわ。今年はウミナトの新しいお菓子も味見できるみたいよ」
「行く!」
スナバラしか知らないネッツにとって、ウミナトという異国のような隣町は魅力的だった。
「お嬢様がメッセに参加されるのは、お菓子の味見のためだけではないのでしょう?」
ナガレはコーリィが些細な目的のためにメッセに出かけるわけがないことをわかっていた。
「ええ、リオードたちマキシカ管理局が出展するから、見にいくわ。マキシカ家が所有する展示用のマキシカで、安全性を訴えるためだそうよ」
それを聞いてネッツは期待が少し外れて残念だった。コーリィがラゥル・コソックを追い詰めるために何か考えていると思っていたのだが、市民のマキシカの信用を確かめにいく意味合いが強いようだ。
「マキシカの暴走事故の増加を受けて、マキシカを過度に恐れる方もいると聞きます。マキシカ管理局は信頼回復のためなら、メッセはきっと良い宣伝の場になりますな」
マキシカの暴走事故を目の当たりにしたネッツでなくても、マキシカの暴走事故のニュースを新聞で見た人の中には、マキシカを怖がる人もいるだろう。信頼回復を急ぐのであれば、機会があるのはよいことだ。
「もしかしたら、メッセにラゥル・コソックが来るかもしれない」
コーリィの言葉に、ネッツは目の色を変えた。
「わかった!俺が奴を見つけたら,コーリィに教える!」
「ありがとう、ネッツ。でも彼が来ないことも考えられる。もし、彼がメッセに来ても何も起きない可能性もあるから、見かけたら教えて。1人で絶対追いかけたりしないで」
コーリィはネッツにやや高圧的な態度ではあったが、ネッツには前科がある。
「・・・わかった」
ネッツは自身に言い聞かせる。ネッツの行動がコソックを捕まえる際の障害となってはならない。
「彼は新聞記者としてメッセに来るかもしれない。メッセで展示用マキシカを暴走させる可能性もあるのではないかと私は思っているの」
「メッセには多くの人が参加しますから、マキシカの暴走の恐ろしさを目の当たりにする場としては、適していると考えるかもしれませんな」
ナガレの言う通り、マキシカの恐ろしさ、信頼を落とすにも都合の良い場所かもしれない。
「今年は新しいマキシカはないから、楽しみは半減だけれど」
「新しいマキシカ?」
マキシカはもう増えないとネッツは習っていたはずだ。なぜなら、メグリエ機関の数が増えることがないからだ。
「テイラーマキシカが作り変えられる可能性が高いわ。早くて来年の見本市には新しいマキシカとしてお披露目されるでしょう」
都市のマキシカの数は353機のメグリエ機関の数によって制限されている。よってマキシカの数はそれ以上になることはない。
長く使える機械としてのマキシカと、他の機械とは区別されており、マキシカの持ち主になった者は、そのマキシカの役目が必要なくなるまで使い続けることになる。マキシカが必要なくなった場合は、違う用途に改造したり、新たに組み直すために、マキシカはマキシカ社に戻ってくる。テイラーマキシカは、エヌールの家からマキシカ社に戻ってくることになっていた。彼らがマキシカを手放すからである。新しいマキシカを欲しがる者がすぐ現れるだろう。どんなマキシカにするか、新しい持ち主に委ねられ、作り替えられたり、ほとんど一から作られることもある。
新しいマキシカが年に一度の見本市でお披露目されるのは、今では数年に一度のことだ。
「そうなのか。あのマキシカが違うマキシカになるのは、ちょっと寂しいな」
ネッツはマキシカに不思議な感情を持っていた。テイラーマキシカはネッツを殺そうとした大型機械のはずなのに、我を忘れていただけで、本当は優しい機械なのだと感じられた。それが作り替えられてしまったら、もう生まれ変わった別人のような気がしてしまうのだ。
「ネッツ坊ちゃんは、テイラーマキシカのことを赦すみたいな言い方ですな」
「だって、メグリエ機関はコーリィのひいじいちゃんが作ったんだから、コーリィとメグリエ機関は親戚みたいなものだろ?」
コーリィははたと気がついたかのように動きを止めた。小さな笑い声をあげたのはナガレだった。
「ネッツ坊ちゃんの言う通りかもしれません。メグリエ機関がオリーナル様の息子達だとしたら、お嬢様にとってメグリエ機関は大伯父様になりますねぇ」
「それに、ラゥル・コソックのせいで暴走したんだろ?マキシカは悪くない!」
「ネッツみたいな人間ばかりだといいのに」
コーリィは呟いた。
翌日のメッセを控え、コーリィは一人、スナバラの南側を管轄とする警察署に来ていた。都市の南側の建物らしく、窓が小さく昼間でさえ照明に頼る警察署だ。ここの警察署だけに、マキシカの事故を担当する部署がある。ここに来たのはコーリィはディージ警部に会いに行くためであった。
マキシカ事故の担当であるディージ警部は、窓口の担当に言えばすぐに呼ばれてやってくる。それは、コーリィがメグリエ機関を発明したメグリエ家の人間だからでもあり、マキシカの暴走事故でメグリエ家の人間が警察に報告したり、連携しあったりすることが今までもあったからだ。
ディージ警部は、スナバラ自衛軍が沙漠での過酷な訓練でもした後のように疲れた顔をしてコーリィの前に現れた。彼の後ろには、夕日色の髪に気怠げな表情のランクス・シダバー巡査を引き連れていた。彼にも疲労が見えた。
この数ヶ月、マキシカ事故が多発し、ディージだけでは人手が足りないと、マキシカ暴走事故の専任担当者として若手のシダバー巡査が配属されたが、仕事がそれ以上に増え、人手不足の解消にはなっていないらしい。マキシカ暴走事故の事故処理の手続きに追われているのだろう。
「ご機嫌よう、お巡りさん」
「ここはお巡りさんばっかりなのだが。それで、今日はどうした?」
ディージ警部は顔見知りの令嬢に不躾に尋ねる。ただでさえ子どもが泣くような強面だと言うのに、疲れた顔と目の下の隈が余計に警察とは対極の悪人のような顔になっていた。
ここ数日はマキシカが暴走していないことで、彼らの業務は少しだけ落ち着いたはずだった。
ディージ警部はコーリィを受付の横の談話スペースに招いた。市民の話を聞くための部屋である。小さなテーブルと、古い布張りの椅子が四つ。ディージ警部に勧められてコーリィが座った椅子は古く軋んだ音を立てた。ディージ警部とシダバー巡査はテーブルを挟んでコーリィの向かいに座った。
「折り入ったご相談がありまして」
彼と話すときはまだ緊張感があるが、コーリィは二人を前にしても動じることはない。
「わかった、聴こう」
コーリィが初めて警察に関わることになったのは、父親と叔父の失踪が原因だった。
数ヶ月もの間、家族の姿を見ていないにも関わらず、コーリィが警察に届け出なかったことを不審に思われたのが始まりだった。かつて、マキシカの暴走事故が起きた際には、コーリィの父フレイザがマキシカの停止を行なっていた。事故処理でやってきたディージ警部とフレイザは顔見知りであったこともあり、失踪を警察が不審がったのだ。
コーリィは、フレイザとミッゲルはクールショット弾の材料の調達に旅に出かけた、と言い張るしかなかった。都市議会との密約のことは警察は知らないし、真実を伝えるわけにもいかない。警察はまだ少し疑っているが、コーリィの平然とした様子とメグリエ家へこれ以上の干渉はすべきではないと、それで一応は納得したらしい。メグリエの関係者に二人もの失踪者がいることに、ディージ警部の疑念は完全には晴れてはいないようではあるが。
「孤児の少年の遺体の件か?おかしいことばかりだ。だから、この件では疑ってはないからな」
念押しするディージ警部は、コーリィの味方になってくれるだろう。いや、なってもらわないと困る。だから今日、コーリィは彼らの元にやってきた。
「分かっています」
「大変だとは思うが、その件は俺の担当ではないから、なんとかしてはやれない。共同墓地にネッツという少年の最近の埋葬記録がないことは判明している」
シダバー巡査は表情を変えずにディージ警部の話にうなずくだけだ。
「消えた遺体なんて、どこの推理小説かしら」
「遺体がなければ、全て辻褄が合う。スナバラ・タイムズも情報に踊らされて話を大きくしたのだろうな」
コーリィは俯いた。ディージ警部もコーリィの疑いを晴らしたいのは山々なのだろう。しかし、コーリィはネッツがなぜ死んだことにされたか、警察の情報を聞きに来ただけではなかった。
「ここだけの話だが――」
ディージ警部の声が小さくなる。
「孤児院の院長の失踪、ヴァルナリ警視正が捜査をしているって話だ」
コーリィはその意味がすぐには理解できなかった。
「ヴァルナリ警視正ってあの傷の?」
シダバー巡査は驚いているようだった。若い警官である彼でも知っているほど、署内でも有名な人物のようだ。もともとディージ警部とは違った種類の強面で、顔に傷のある老年の男であり、警察の中でも厳しいと噂の人物であるらしい。
「つまり、警察の中でもかなり階級が上の人間が一人の失踪の捜査に関わることは異例だ。これはスナバラの歴史に残る大事件かもしれなくなってきたぞ」
ディージ警部の話が大袈裟に思えたシダバー巡査は笑いを堪えることができなかった。ディージ警部がシダバー巡査の膝を軽く叩いた。
「コーリィ、話せるのはここまでだが・・・」
「情報提供、ありがとうございます」
ミセス・トッドマリー失踪と、マキシカ暴走事故、メグリエ機関盗難事件が1つながりの大事件だと警察も気づいたということだろうか。
「それで、マキシカの暴走事故の相談なのですが」
コーリィは慎重に、二人に話しても良いことだけを正確に話さなければならない。
「マキシカを故意に暴走させる人物がいたとしたら、警察は逮捕できるのでしょうか?」
凛とした声で令嬢は挑戦的な言葉を口にする。ディージ警部は怪訝な目をし、シダバー巡査は言葉の意味をすぐに理解せず、ディージ警部の顔色を伺っている。
「マキシカを人為的に暴走させることができる前提で、明らかにそれをやったと証明できる場合は、できるだろうな」
警部は半信半疑のようで、小声になった。市民がマキシカを故意に暴走させることが出来るとは思ってもみない話だろう。コーリィは黙って頷いた。
「そんな奴がいたとして、そいつのせいで俺はここまで多忙になり、シダバーがここに配属されることになったのか?」
コーリィの戯言だと思っているだろうか、ディージ警部は険しい顔をした。
「逮捕できるんですね?」
ディージ警部はコーリィの表情を見て、冗談に思えなくなってきたらしい。シダバーはディージの顔色を見て、真実味を感じていた。
「まさか、マキシカを暴走させる人間がいるのか?」
シダバー巡査は確認するように言い、コーリィはそれに頷いた。
ディージ警部はそんな人間がいることに驚き、嫌悪感を隠さずに表情に示す。
「証拠があれば逮捕だが、疑いがあるだけだとよくて任意同行だろう」
コーリィは不機嫌な顔をする。
「気持ちはわかるが、誰が被疑者がわかってて、現行犯で捕まえないと難しいだろう」
ディージ警部はその立派な鼻を指でかいた。モノニシアが心配していたように、任意同行は難しく、現行犯逮捕でなければならない。しかし、運良く現行犯で捕まえられるかだ。紅夜石とマキシカの暴走の関係をディージ警部に明かすことも慎重になるべきだとコーリィは考えていた。都市議会との密約にマキシカやメグリエ機関についての情報を外に漏らしてはならないという項目があるため、都市外に出られる人物に迂闊に話すことはできない。
「マキシカの暴走を故意に起こす事件に関係している人物を突き止めました」
コーリィの話にディージ警部は引き込まれていた。シダバー巡査はまだ信じられないような顔をしていた。
「誰なんだ、そんな傍迷惑なことをしている奴は?」
「その人物の名前はラゥル・コソック。スナバラ・タイムズの記者です」
「記者?あぁ嘘つきはそのスナバラ・タイムズだが」
ディージ警部は半信半疑だった。警察署内でその名前を聞いたことはない。孤児の少年の遺体を隠していると報道した唯一の新聞社の記者という点だけが気になる点だ。
「彼が明日のメッセにきて、マキシカを暴走させることを危惧しています」
コーリィは言い切った。見本市はスナバラでも人が集まる大きな行事であった。今までにマキシカの暴走を目撃した人はそう多くはなかったが、よりマキシカへの恐怖心を植え付けるという目的でカーンが動くとしたら、最適な場である。一方で、人が多い中で目撃されずにマキシカを暴走させられるだろうか。
「それで、我々がメッセで張り込みをして、現行犯逮捕か。お巡りさんはそんなに暇じゃないのだが、明日はメッセの警備を命じられている。シダバーもだ」
ディージ警部は頭をかいた。マキシカ事故の担当である二人が見本市の警備に割り振られていた。それは、モノニシアの仕業だとコーリィは考えた。彼女はマキシカ社の社長として慎重さを持ち、事業の拡大よりも安定を選ぶほうだ。彼女なら、メッセでマキシカを暴走させる可能性を考え、警察に事前に相談するし、警察も女帝の要求を飲むだろう。
「しかし、そのコソックって奴の動機はなんだ?マキシカを暴走させて、人々の恐怖を煽ったって、今のスナバラにマキシカがなければ我々は水も飲めないんだぞ?愉快犯か?」
「それは逮捕して本人に聞いてください。でも、マキシカに恨みはあると思う」
ディージ警部もシダバー巡査も、怨恨は犯罪の動機として成り立つことはわかっているような顔だ。しかし、情報が少なすぎて、まだ納得はいかないようだった。
「故意に暴走させるってその手口はわかっているのか?」
やはりディージ警部はその質問をしてきた。コーリィは慎重になる。残念ながら詳しくは伝えられないのが都市議会との密約だ。
「手口はわかっています。でもメグリエ家とマキシカ家しか知らない秘密に関わることなので、お話しすることはできません」
「うーむ」
ディージ警部は唸った。反対にシダバー巡査は首をかしげるだけだった。
「そのラゥル・コソックという人物は両家の人間でもないのだろう?何故、そのマキシカを故意に暴走させる方法を知っているんだ?簡単に思いつく方法なのか?」
「わかりません。簡単に思いつく方法とは思えません」
コーリィだって、父親の書斎で見つけたメモから知ったことだ。一般にはブラックボックスとされるメグリエ機関の構造、中身を知っているコーリィでさえ、その方法にたどり着くことはできなかった。
「それは、コソックに秘密を漏らした両家の人間の誰かが共犯って可能性もあるな」
マキシカ家かメグリエ家の誰かが怪しいと考えるのが自然だろう。だからディージ警部の読みは至極真っ当だ。
「だいたいそういう家の中の争いは、後継ぎになれない人間の仕業じゃないか?」
シダバー巡査の意見も一理ある。そう疑う人間がいてもおかしくはない。
「シダバー。言葉は選べ」
シダバー巡査は目を泳がせながら黙った。
「確かに、関係者に聞かなければその方法にたどり着けないでしょう。今はマキシカ家とも協力して調べています。そして、私は議員の誰かが関わっている可能性も考えています。彼について調べていることを評議員の前で話した翌日に、あの新聞記事が掲載されたから」
メグリエ家が孤児の少年の遺体を隠していると報じた青天の霹靂のようなニュースだった。スナバラ・タイムズだけが記事にし、他の新聞には掲載されていない。
「まさか議員が?そんなお偉いさんがなぜマキシカの暴走なんてやろうとするんだか」
「きっと、メグリエ家やマキシカ家が気に入らない人ですよ!」
シダバーが口を挟む。やっと話が見えてきたようだった。
「でも議員は四十人もいるんだぞ」
「そのうちの、マキシカ評議会の方です」
「評議員には誰がいる?」
「カレズ議長、ウーチス議員、リック議員、クラム議員、テジュネ議員、テーネ議員、パルナー議員です」
「マキシカ家とメグリエ家の他にその七人が容疑者か」
議員の名を手帳に書き込んだディージ警部は考え込んだ。議員相手になると警察も確固たる証拠がなければ動きづらいのは明白だ。
「私はマキシカ反対派のリック議員の関与を疑っています」
「確かに、彼はマキシカを嫌ってる議員だが、他にもマキシカ嫌いはいるだろう?」
「リック議員は、コソックの依頼で新聞にマキシカ反対派の記事を連載しています」
ディージ警部は考え込んだ。
「それだけだとなんとも言えないが、その記者と接点があるなら、まぁ疑いたくはなるな」
被疑者になるだろうコソックと繋がりのある議員だと言うなら、身辺を調べて白黒はっきりさせるのもいいだろう。
ネッツが喫茶店タビドリに入っていくコソックを見かけたことから、その店の常連と言われるカレズ議長という可能性だってあるが、やはり、コソックと接点があるのはリック議員だ。
ディージ警部が懸念するのは、相手が議員のために、単なる疑いだけでは捜査がしづらい。確実な証拠がなければ、不当な逮捕につながると非難を受けるだけだ。
「しっかし、事件に関係しているのが議員だとは捜査が難航しそうだ」
コーリィは警察もあてにできないのかと、悔しくてたまらなかった。
「そうだな。こちらも努力する。これ以上マキシカの暴走事故が起こると、シダバーと俺だけじゃ仕事が捌き切れないからな。まぁ、明日、メッセにラゥル・コソックがいたら教えてくれ。一応、そいつの特徴もわかるか?」
コーリィはコソックの特徴を話した。写真や似顔絵があるわけではないが、おおよその身長や髪の色、記者であることをディージ警部達と共有しておけば、メッセの会場で少しは役に立つはずだ。
「何もないことを祈るか、何かあったら、俺たちが捕まえられるよう祈ってくれ」




