2話 目覚め
目が覚めると、俺は物置の真ん中で寝そべっていた。これはいつも通りで、特に何を思うわけでもなく上体を起こす。
体の節々が痛む。昨日はいつもより修練に身が入っていたせいだろう。自然といつも通りの日課をしようと体が動く。当然修練である。
俺の1日は基本この物置で始まり、物置で終わる。それはここで毎日朝から晩まで修練をしているからであり、兄弟姉妹の実験という名の暴力に呼び出される以外、俺はここから出ることはない。
『スペリオルスキル、逆境ヲ喰ラウ者により、自己理解のためのシステムを導入。負荷を認識し、成長の糧へと集約できるようになりました。このシステムを、自知促進システムと名づけました。それに伴い、これまでマスターにかけられた負荷を肉体と魂の成長へと変換します』
いつものように修練を始めようとしたところ、頭に抑揚の無い透き通った声が鳴り響いた。驚きつつも、俺はこの声が聞こえてきた原因に気づいていた。
昨晩の夢、心象風景の変化、それらが何らかの影響を与えているのだろう。
『警告:肉体と魂の成長に伴い、体に一時的な痛みが走ります。意識を失う恐れがありますが、肉体と魂の成長の中断は不可です』
ぼんやりと頭に響く声に耳を傾けていると、突如、体に雷が走ったような激痛が駆け巡る。
「うぐ……」
それは、今まで兄弟姉妹から受けたものとは別種の痛みだった。自分の体が内側から作り変えられ、己の根底が変わってしまうような痛みである。
細胞ごと作り変えられる工程の中で、自分の体の作り、動かし方、成長の可能性に対する膨大な知識が頭に流れ込んでくる。
それに伴い、自分に必要な栄養素や修行法、強みや弱点なども見えてくる。
体が壊されるような痛みと共に湧き上がってくる力の本流に思わず体が驚いて震えるが、自分の可能性がようやく開けたことを思うと自然と笑みが溢れる。
この、溢れんばかりの力は、言わば下地でしかなく、これから成長することを考えると、周囲の見下してきた人間への暗い感情が沸々と湧いてくる。
結局、その痛みは一日中続いた。眠ることもできず、朝方まで起きていると、突如痛みが止まる。
『魂と肉体の成長を確認。データに反映。ステータスと念じることで、自己の強度や能力を数値として視認できます。その特徴を表す強さを上位三項目で表示します。特殊能力は原則全て表示されます』
俺は心の中でステータスと念じる。すると、目の前にボードが浮かび上がる。
存在強度(ステータス平均値)『B』
可能性 ランク 『∞』
攻撃力 『脚力C』『腕力C』
守備力 『皮膚強度A』『筋肉抗力A』『骨密度A』
俊敏さ 『腕速C』『脚速C』『その他総合D』
思考力 『自己理解EX』
精神力 『根性S』『殺意A』『冷静さC』
特殊能力
【心装】
禍災(刀)
【超越者権限】
『逆境ヲ喰ラウモノEX』
・ありとあらゆる全ての負荷が成長へ集約される。
『可能性ノ超越EX』
・成長限界の上限値開放。
『憤怒のオーラEX』
・呪毒の影響で自然と身に着けていた憤怒のオーラ(F)が、逆境ヲ喰ラウ者によりランクがアップしました。
【加護】
『邪神の祝福S』
・邪神ゼメラルギアスが、呪毒を打ち破ったあなたに興味を抱き、加護を授けます。
権限I『邪眼A』on/off
『魔神の祝福S』
・魔神シャードベルが、呪毒を打ち破ったあなたに対して、期待を込めて加護を授けました。
・権限I『魔神のオーラC』
【称号】
『運命を覆す者』ユニーク
・本人が望むありとあらゆる可能性を引き寄せることができる。