第14話 少年と少女
毎日18時に投稿します。お読みいただければ幸いです。
あれから1月、最初はあまり感情を見せなかった少女たちも日々の作業や生活の中で少しずつ感情を出すようになった。笑ったり、泣いたり、喜んだりと人間としての感情が戻ってきたようだ。
それはいいのだが、最近少女たちが怪しい目で私を見るようになってきた。妻たちも警戒し、私が昼に仕事をするとき必ず一人ついてくるようになった。
エリーも注意してくれているようだが、なかなか難しいらしい。
夜は夜で完全ガード状態の上、交代で妻たちに搾り取られていた。
ちなみに順番は妻たちが話し合って決めたらしい。らしいというのは私には何の相談もなかったからだ。少し悲しい。
でも、少女たちの中に夫婦の行為を覗きに来る子がいるとのこと。
なんとかしなくちゃまずいと思っていたところに、再び救助信号を確認した。前回と同様に現場に行ってみると、小型艇が漂っており、中には一人の少年が乗っていた。
気絶して意識はなく、返ってそれが命を救ったようだ。
宇宙空間で一番重要なのは酸素である。
普通遭難すると人はいろいろ足掻いて無駄に酸素を使ってしまい、返って死期を早めてしまうことが多い。
この子は気絶していたおかげで生き延びたわけだ。
居住区に戻り、少年を治療したところ、息を吹き返した。
「ここはどこですか?みんなを助けなくちゃ。すぐにシンキョウトに連絡して下さい」少年は目を覚ますとすぐに身を起して、私たちに行った。
「ここはミズホ王国、サルガッソーの中にある独立国だ。君は誰だい?何があったんだい?」
「はい?冗談はやめてください。そんな国聞いたこともない。あなたヤマト人でしょ。とにかくすぐにシンキョウトに連絡をとらなきゃ。僕は桜井守。桜井家にすぐに連絡をしてください」
「シンキョウトに連絡は無理だ。なぜならこの国はヤマトからの脱走兵の国だからだ」
「脱走兵?」
「そうだよ~ここにいるのはヤマトとクリスの脱走兵だよ~」アイは言った。
「そんな。嘘でしょ」
「とりあえず回復したらヤマト連邦の領域まで送っていくが。当然ここでのことは秘密にしてもらうけどね」
「それじゃ間に合わない!なんてことだ!」
「何があったんだい。理由を聞かせてくれるかい?」
桜井守はやや考えた後、口を開いた。
「僕たちは宙族につかまって、奴隷として売られるところだったんです」
「奴隷?」
「僕らは基礎学校の同級生10人でシンキョウトから逃げてきたんです。どこか別の国に行こうとして、この辺境星域まで来たのですが、グンカンコロニーで宙族どもに騙されて、監禁されていたんです。それで助けを呼ぶため、なんとか僕だけ逃げたしたのですが、追われているうちにサルガッソーに入り込んでしまいました」
「グンカンコロニーって?」
「サルガッソーのすぐ外側の海域をサルガッソー辺境海域というのだけど、そこにあるコロニーよ。昔、鉱山星からの鉱物を精錬、加工するために作られたのだけど、もう20年ぐらい前に鉱山星の資源が枯渇したため、かなりさびれていると聞いたことがあるわ」ミィが言った。
「ということはヤマト連邦の領土内というわけか」
流石にヤマト領内で武力行使すれば、ヤマト本国が黙ってはいないだろ。
「私は助けるべきだと思いますわ」エリーはいった。
「しかし、ヤマト連邦内で武力行為を行えば、我々のことが知られてしまうし、敵対行動としてとらえられ、ヤマトと戦争になりかねないぞ」
「大丈夫です。ヤマト連邦にその度胸はありません。実戦経験自体200年近くない国です。実際に我々クリスがイムとこの宙域で戦闘していても警備艇も出てきません」エリーは笑いながら言った。
「我が国も外の国との交易が必要不可欠です。今後のことを考えたらサルガッソー辺境海域はわがミズホの領土とすべきでしょう」
「それに、桜井さん?逃げてきたとおっしゃっていましたよね」
「はい、そうです。」
「それじゃもし解放されたらこの国に住むのも大丈夫ですよね?」
「ええと、僕らが住んで大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよね。ねえ、あなた」
「基本来るものは拒まずだが、なぜだい?」
「あの子たちに相手を見つけてあげないとね。あなたたちそうよね」
ドアや窓からばたばたという音が聞こえた。
「俺も助けるべきだと思う。これ以上旦那の奥さんが増えるのは困るからな」マイが言った。
確かにこれ以上妻が増えたら死んでしまう。それにあの子たちの相手も見つけてあげなくてはならないからな。「仕方ないか、それじゃ助けに行きますか」
「助けてくれるのですか?」桜井守は言った。
「ああ、その代わりこの国の一員になってもらうけどね。いったと思うがこの国は脱走兵の国だ。君たちも兵士としての訓練を受けて、この国の防衛に働いてもらうことになるがいいかい。」
「はい、ええと…あなた様のお名前は…」
「九頭一史、階級は大尉だ。」
「九頭一史大尉?独立戦争の裏切り者の?でも200年前の人ですよ?」
「200年前から現代に来た亡霊だよ。死にぞこないの脱走兵さ」
我々は戦艦ヨーデルに乗船、ユウとユアは戦闘艇をヨーデルにドッキングさせた。みずほは足が遅いので、アイとミィに操艦させ、後から来るよう指示した。
「九頭大尉、なんでこの船少女ばかりなんですか?」
「彼女たちは元クリス共和国軍の兵士たちだよ。言っただろ我々はヤマトとクリスの脱走兵だと」
「クリスではこんな子たちを戦争に出しているのですか?」
「そうだよ。歴史では習わなかったかい?ヤマトでも独立戦争時、9歳の兵士もいたんだよ」
「少年特攻隊ですか」
「サイパン戦役の結果、兵士の不足は苛烈を極めていてね。桜花搭乗員として促成訓練を受けていたのを特攻基地でみたよ。仲良くなって、お菓子をあげるとすごく喜んでね」
「でもあなたが裏切ったたため、彼らは戦場に行った」怒りの目でを向けながら、桜井は九頭に言った。
「私は裏切ってなどいない。あの当時、ヤマトは敗色濃厚だった。まともに艦艇もなく、最終手段として、特攻兵器が作られた。特攻自体は命令だったが、私たちは国のため、親兄弟のためにその命令を受け入れたんだ」私は心の中を桜井に訴えた。
「私が裏切り者じゃないという証拠はどこにもない。私も調べてみたんだ。地球連邦の記録を見ると、スパイが誰かからか情報を得て、本国に流したことが記録されているが、誰かという記録はなかったし、私にそんなことができる時間はなかったはずだ。サイパン海戦を経て、私たちは、収容施設に入れられた。あまりにひどい敗戦だったので、国民に知られるのが怖かったのだろう。そのまま、特攻隊へ編入され、出撃だ。どこにスパイと接触する機会がある?」
桜井は黙ってしまった。
「きつい言い方をしてすまなかった。でも本当に裏切っていないんだ」私は謝罪して、真実だと訴えながら言った。
「分かりました。九頭大尉殿、私は信じます」
「ありがとう」そう言って、手を伸ばすと、桜井君は笑顔で手を握って握手をしてくれた。
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