第13話 救助
すっかりあきらめていたのですが、最後に星とブックマークをいただくことができました。なので約束通り再開します。お読みいただければ幸いです。
開発を進めて何か月か経った頃、救難信号を受け取った。
本来、サルガッソーではすべての通信が不通となり、他と連絡はとれないのだが、私たちは警戒のため、サルガッソーの小惑星帯にリレー通信可能な警戒装置を多数流していた。
これは、通信を傍受すると、警戒装置同士が情報をリレーして、トンネルに設置している警報装置に伝えることで我々に通信内容を伝えるようになっている装置である。
通信の内容からクリス連邦の船らしい。
とりあえず、ユウの戦闘艇を借りて現地に向かった。当然のようにユウもついてきた。
場所はリレー警報装置の記録とサルガッソーの小惑星帯の流れを勘案し特定した。
行ってみると、クリス共和国の戦闘艦が漂っていた。
「こちらミズホ軍、九頭大尉である。所属、目的をのべよ」
ちなみに階級はヤマト独立軍の時の階級をそのまま使っている。大将と名乗ったら、とみんなに言われたが6人しかいない軍隊で大将は恥ずかしいので断った。
「私は練習艦ヨーデル艦長エリー少尉です。練習航海の最中流星雨に巻き込まれ、サルガッソーに入り込んでしまいました。救助を求めます」
「救助をする際条件があります。武装を凍結してください。また、只今より1名乗船いたしますので、受け入れと操艦許可をお願いいたします」
「了解しました。直ちに武装を凍結、発着艦ハッチを開けますので、乗船してください」
「ねえ、着艦するの?」ユウが聞いてきた。
「ああ、とりあえず乗り込んでみる。やばかったら連絡するから私を置いて発艦し、みんなのところに戻ってくれ」
「パパを置いていくの?そんなの無理!」
「これは命令だよ。大丈夫。パパは運がいいから」
ユウは少し悩んだ後、笑顔で「わかった。無事に帰ってきてね」といった。
体に自爆装置を装着し、緊急用の酸素パックを持って外に出た。遭難した宇宙船で何が一番求められるかと言ったら酸素である。遭難した宇宙船で一番最初に尽きるのは燃料である。燃料は切れても船自体は航行不能になるだけだが、そうすると酸素発生装置が動かなくなる。酸素が切れると船は悲惨の一言に尽きる。この緊急用酸素パックは携帯可能なパックに100人分の酸素が3日分入った救助用パックで、これがあればしばらくの生存が可能である。
船内に入るとすぐに数人が待っていた。
11・12歳ぐらいの女の子ばかりの中で、唯一20歳前後と思われる女性が声をかけてきた。「初めまして。私は当艦の艦長をしておりますエリー少尉です」
「私はミズホ国軍、九頭大尉です。これは酸素パックです」
「ありがとうございます。助かります」
「すぐに艦橋に案内をお願いします」
「分かりました。こちらです」
エリー少尉を先頭に歩き始めた。艦橋につくとすぐにすぐに船を進め始めた。だいたいの場所はわかっているので、ある程度まで進んでからユウの船を発艦させてから、この船の航行をユウの船に同調させ、こちらの操縦機能は停止した。サルガッソーの抜け方を教えるわけにはいかないからな。
トンネルにたどり着き、そのまま本拠地を置いている星系に進んだ。第三惑星に着いて、武装を凍結したまま船をオートモードで惑星軌道上を周回するよう設定し、船員たちを地上に降ろした。
驚いたことに船長のクリス少尉以外みな11・12歳の少女ばかりである。それも100名もいる。
少女たちを仮設の居住スペースに入れ、食事とシャワーを提供してから、部屋に案内して休むよう伝えた。みな淡々と食事をとり、シャワーを浴びて部屋に入っていった。
「この度はありがとうございました。サルガッソーの中に国があるのですね。びっくりしました」エリーは言った。金髪で青い目の典型的なクリス人だった。
「どういたしまして。ところでいくつか聞きたいことがあるのですが」
「はい、なんでしょう」
「皆さんはクリス軍の方ですよね。どうして少女しかいないのですか」
エリーはやや口ごもりながら言った。「それは戦時動員のためです。現在クリスはイム帝国と戦争状態にあります。人員の消耗激しく、人工子宮で製造された兵士は15歳で軍に配属のはずが、徐々に繰り上げ入隊になり、とうとう12歳で軍に配属されることとなりました。今回の訓練航海はその一環で、この航海訓練が終われば入隊することとなっていました」
戦時とはいえ12歳で戦場とは、クリス共和国もかなり切迫しているようだ。
「そうですか。わかりました。お帰りになるまでここでゆっくり休んでください。とりあえず、クリス本国に連絡を取る必要がありますね」
「実はその件でお願いがあります」エリーは決意を込めた目で言った。
「なんでしょうか。なるべく便宜は図るつもりですが」
「我々をここに置いていただけないでしょうか」
「えっそれはまずくないですか?」
「彼女たちは兵士として人工子宮で生まれてきました。そのため、ここを出たらすぐに戦場です。おそらく5年後の生存率は1パーセントにも満たないでしょう。かくいう私も人工子宮で生まれた者の一人です。5年前、同期で同じ養成所から入隊した兵士300人のうち生き残っているのは数人です。ここからクリスに戻れば確実に死が待っています」
「でもそうすると脱走兵になるのではないですか?」
「クリス本国では私たちのことなど眼中にありません。それにこのサルガッソーの中にある国ならだれも探しに来ないでしょう。お願いです。私たちを受け入れてくれないでしょうか」
アイが私の肩をちょいちょいと叩いた。
「ちょっと待ってください。相談してきますので」私は5人のところに行って、相談した。
「ねえ~おいてあげればいいんじゃない~」
「でもそうすると彼女たち脱走兵になるんだぞ」
「私たちも脱走兵じゃないの~」
「どうせ俺たちも国に追われているのだから。いいじゃないか」マイも賛成した。
「人工子宮で生存された兵士って、なんか身につまされるわね」ミィが言った。
「「パパ~」」ユウとユアも賛成のようだ。
「分かった分かった、それじゃ受け入れるよ」まあ、下手に返せばここに国があることがばれてしまうし、口封じと考えればいいか。
それから受け入れる旨話をし、さらに我々がヤマト連邦からの脱走兵の集まりであることを伝えた。
エリーはびっくりしていたが、それでも受け入れてくれたことに感謝をしていた。
「ところで皆さんは九頭大尉のお嫁さんですか」
「嫁が3人、娘が2人です」
「「娘兼嫁です」」ユウとユアが言った。ちょっと待った、聞いてないぞ。
「「パパ、私たちもお嫁さんにして。いいでしょう?」」二人は私の目を見ながら言った。ユウもユアもここまで付き合ってくれているのだし、私に好意を持っているのであれば、仕方がないかな。「分かった。嫁にするよ。みんなもいいかな?」
「いいよ~」「いいぞ」「いいんじゃない」みんなの了解を得られた。嫁が5人になった。
その光景をニコニコしながら眺めていたエリーは「あらあら、5人もお嫁さんがいるのですね。それで物は相談なのですが」といった。
「なんでしょうか」なんか嫌な予感がするなと思いながら、言葉を促した。
「私もお嫁にもらってほしいのです」
「「「「「それはダメ」」」」」
「私たちは九頭大尉の慈悲でここに置いてもらえることになったのですが、それではいつここから追い出されるか不安です」エリーは悲しそうに続けた。
「それに皆さんもいきなり100人のクリス人兵士が来たらいろいろ不安があるでしょう。私が九頭大尉と婚姻することでお互いの安全が保障されるのです」
「つまり政略結婚ですか」私が言った。
「そう思っていただいて結構です。わたしはただ指導教官としてあの子たちが死地に追いやられることが嫌なのです」
みんなは顔を見合わせた。
「ちょっと話し合いをしたいので、お待ちいただけますか」嫁たちは別室に出て行った。
女5人でどういう話し合いが行われたか私は知らない。結果としてエリーが嫁に来ることを認めることとなった。
なお、エリーの提案でこの星系の名前をバウンティ星系と名付け、我々が居住する第三惑星をピトケアン星とした。クリスに伝わる伝説で脱走兵が作った国の名前だそうだ。
お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら星かブックマークをいただければ大変ありがたいです。
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皆様から星とブックマークをいただき、本当にありがとうございます。おかげで思いがけず日間SFのランクにも乗ることができました。図々しいお願いですが、更に星とブックマークをいただけると作者はめちゃくちゃ喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。