第12話 逃亡と新天地開発
これで一旦は休止します。お読みいただける方がいたら再開します。どうかよろしくお願いいたします。
我々6人は航路を外れて、人目をはばかりながらサルガッソー宙域に向かっていった。
私が永久指名手配犯であることがばれ、更に毒食わば皿までもとばかりに軍の戦闘機をパクったからだ。私たちは追手が来ないところまで逃げることにした。
開発公社時代、あちこち航路外を飛んでいた経験が役に立った。
その間5人にいろいろ船の操縦について教えた。彼女たちは軍で研修を受けていたが、なにせ200年前の船だし、いろいろと操縦方法に違いもあったため、一から教えることにした。
試行錯誤の結果、アイは艦橋オペレーター、マイは砲手、ミィはレーダー手兼情報統制官となった。ユウとユアは戦闘パイロット兼雑用係とした。
私自身は艦長兼雑用係といったところである。
ミィ指揮下のもと、私、ユウ、ユアはみずほに積んでいる物資の確認と数量確認を行った。多様な物資が多量にあり、惑星開発や我々の生活に役立つものを残しておいて、すべて売却することとなった。
物資を近場のコロニーに降ろした後、ネットで販売、かなり高値で売却できた。それをすぐに惑星開発の機器の購入に充て、物資の形で受け取ることができた。
すべてミィが取り仕切り、かなり良い取引ができた。ミィいわく、物資の中には貴重なものもあり、かなり高値で買ってもらえたほか、惑星開発の機器は近年需用が減少して市場に機材がだぶついており、中古品だが質のいいものをものすごく安い値段で買えたとのこと。
お礼にたっぷりかわいがってあげたら、ほかの2人がすごく不満そうだったのとユウとユアがうらやましそうにしていたので、仕事を頑張ったらご褒美上げるからと約束した。
我々はサルガッソー海域に突入した。私以外の五人はすごく緊張していたが、200年前にさんざん来た場所なので、さほどの緊張もなく進んでいった。
ここサルガッソーは広大な空間を小惑星が循環している小惑星帯である。形は楕円形の球状でその流れは一定ではなく、複雑に絡み合って循環している。磁気が乱れ、船の計器やナビゲーターが狂ってしまい、更に異常な音波が出ており、生物の精神に異常をきたし、幻覚を見せたりする。
現在、航宙士の中では一度入り込んでしまったら、二度と生きては戻れないといわれる宙域である。
しかし、200年前は、この宙域についてヤマトにあった惑星開発公社ではその特性について解析が進み、危険な宙域であるが結構普通に出入りできていた。
当時は「サルガッソーに出入りできるようになって一人前」とまで言われていた。
ところが、戦争により開発公社のヤマト人航宙士はヤマト独立軍に動員され、ほぼ全員が戦死した。その結果、サルガッソー宙域を行き来する技術はロストテクノロジーとなった。
「パパ、どうやってサルガッソーに入るの」ユウが聞いてきた。
「サルガッソー宙域全体を見られる航宙図の、小惑星帯の流れをよく見てごらん。一定の場所に流れがないことに気が付かないかい」
「えっ、どこどこ」
「この辺とか見てごらん」
「アッ本当だ」
「ほかにも何か所が同様の場所があるんだよ」
「あーほんとだ」
「そこを通れば、中に入れるのさ。僕らはトンネルといっていたんだ。」
「でもパパ間違って、そこ以外のところに入り込んでしまったらどうしたらいいの。」ユアが聞いた。 「そしたらまず流れに逆らわずに進み、周辺に指向性の電波を一定時間ごとに撒いてみるんだ。続けていくうちに指向性の電波がほかの方向とは違って伸びるところが出てくる。そうしたらそちらの方向に進めば、トンネルにでられるよ。」
「へー、すごいね。そんな方法があったなんて。」
「サルガッソーの小惑星帯の流れは速いから一番遠い場所からでも1週間ほどで近くのトンネルに出れるよ」
「じゃトンネルを使ってサルガッソー宙域を抜けるの。」
「そういうこと。」私は艦を進めていった。
サルガッソーを抜けると広い宇宙があった。開発公社時代もこのサルガッソー内の海域全体は把握されておらず、辺境部分の一部が知られているだけだった。
そこを昔の記憶を頼りに進んでいくと、とある星系に出た。
そこは恒星に5つの惑星が並んだ星系であった。
「ここだ。ここの第3惑星が大気もあり、人が住むにはよい星なんだ」
そこは陸と海が半分づつの惑星だった。陸には植物が生い茂り、海は青く透き通っていた。
「すごいところだね。今まで開発されていないなんて。」ミィはいった。
「私もこれを見つけたとき、本当にびっくりしたよ。これを公社に報告すれば、相当な額の報奨金が期待できるはずだった。家族を喜ばすことができると思ったのだけど、その直後戦争が始まってしまってね。公社自体が解体され、軍に編入されてしまったんだ」
「ごめんね~聞いてもいい~昔の家族ってどういう人たちだったの~」
「父と母がいて、兄と私の4人家族だった。祖父の代に入植して、父も母もヤマトで生まれた初めての世代だった。2人は幼馴染だったそうだ」そう言って、残念そうに言葉を続けた。「いずれ落ち着いたらその後の消息を調べてみようと思っていたのだけど、逃げることになってしまったからね。いずれ調べたいと思っている」
「その時は協力するわね。そういうの得意だから。」ミィが言った。
「すまない。よろしく頼む。」
「了解しました。旦那様」
星について、すぐに開発に取り掛かった。
第三惑星の環境は良好で、ここでは農業を中心とした開発を行った。
第一惑星は灼熱の星だった。なので、ここでは熱エネルギーを生産し、利用可能な形にして他の惑星に供給するための星として開発を行った。
第二惑星は砂とがれきの星だった。しかし調べてみると呼吸可能な大気があり、地下に豊富な鉱物や化石燃料が発見され、それらを活用した鉱工業惑星として利用された。
第四惑星は地表の9割が水で覆われた星で、豊かな生態系を持っていた。こちらも大気があり、中には半分牛で半分魚の牛魚?のような生物もおり、肉や魚の食料源として利用することとした。
第五惑星は氷の星だった。純度の高い水でできており、第二惑星の鉱工業に供給することとした。将来は研究施設や低い温度を必要とする製品用の工業地帯とする予定である。
これら開発予定に基づいて開発機器を設置し、星系の開発を進めていった。
「ねえ、私たちの名前どうするの」ミィが聞いてきた。
「名前?」私が尋ねた。
「もし外から人が来たとき私たちなんて名乗る?」ミィが再び聞いてきた。
「九頭一家?」マイが言った。
「なんか変。九頭ファミリー?」ミィが言った。
「それもいいけど外の人に名乗るのにいまいちだと思う」私は悩みながら言った。
「ここに来た船の名前を取ってミズホとしない?」ユウが言った。
「ミズホいいかも~」アイが言った。
「じゃ私たちのグルーブの名前はミズホね」ミィがまとめるように言った。
「パパが王様のミズホ王国ね」ユアがニコニコしながら言った。
「それじゃ私たちはミズホ王国軍だね」軍と言っても私含めて6人しかいないけどね、と言ってみんなで笑った。
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