第1話 未来へ
今回は、宇宙物を書いてみました。主題はハーレム、開拓、戦争のとなります。もしよろしければお読みいただければありがたいです。
地球人類は恒星間移動を可能とする技術を開発した。その技術を使って、多くの宇宙船が作られ、それと同時に人類は宇宙に拡散していった。
宇宙進出暦96年サルガッソー星域にて
「やったぞ!ついに発見した」私、九頭一史は地上に降り立ちながら歓喜の声を上げた。この未探査星域にて人の住める星系を発見した。この星系の惑星は大気を有し、しかも人類の生産活動が可能な大気構成だ。特に私が今いる第三惑星は陸と海があり、動植物が生存しておりテラフォーミングが必要なく、そのまま入植可能である。こんな星はめったに見つかるものじゃない。
この星を惑星開発公社に報告すれば莫大な報奨金が出る。いや、いっそのこと移住して、新しく開拓しようか。俺のじいちゃん達がしたようにこの星の第一世代として、開発に一生を費やすのもいいな。とりあえず、基地に戻ろう。私の心は希望に満ち溢れていた。
その直後、戦争が始まり、私も従軍することとなった。
宇宙進出暦98年 ヤマト独立軍輸送船2236号船内
九頭一史大尉は輸送船のベッドで一人物思いにふけっていった。
私は航宙士学校を卒業後、開発公社に就職し、資源探査や未開地の探検や開発に従事した。
危険ではあるが、やりがいのある仕事で収入も多く、充実した日々を送っていた。
あれは、新しい星を発見して基地に戻った時だ。意気揚々と大発見を伝えようと会社に戻ったところ、とんでもないニュースが流れていた。ヤマトが地球からの独立戦争をはじめたのだ。開発公社のヤマト支社にいた航宙士はみな航宙兵として兵役に就くこととなった。
ヤマトは長らく地球共和国の植民地の地位に置かれ、自治すら認められていなかった。我々ヤマト民族にとって独立は悲願であり、それは私自身も共有している思いである。ただ、それまでの充実した仕事を離れなければならなかったのは、とても残念であった。
そうして従軍した戦争は国力の差もあり、徐々に敗色が濃厚になっていった。
特に致命的なのはサイパン宙域の戦で、わが軍の戦闘艦のほとんどが沈められたことで、我がヤマト独立軍は戦闘力をほぼ喪失してしまった。
自分自身もこの宙戦に参加し、辛くも生き残ったが、仲間のほとんどを失ってしまった。
軍の上層部はこの危機的状況を打開するため、最後の手段として特攻作戦を決定した。
敵の前線基地で補給拠点であるヴィシー星域にある宇宙要塞への核兵器を搭載したミサイル兵器に人間を乗せて特攻攻撃を実施するのだ。
無人誘導で対応すればよいではないかという意見もあったが、ヴィシー要塞までかなり長距離であるため、自動操縦の場合ヤマトがもつ技術ではうまくヴィシー要塞までたどり着けるかどうかあやしいこと、そしてたどり着けたとしても兵器の命中精度に問題が生じること、さらに、地球共和国には自爆ドローンの自動操縦をハッキングし自爆させる技術があるため、絶対の成功を期するため有人で行うこととなった。
そして、人間が搭乗して要塞まで行き特攻する兵器を開発製造した。名前は「桜花」11式と名付けられた。
多くの特攻兵が招集され、訓練についた。
「九頭大尉」突然声がかかった。「なんだ、斎藤軍曹か。どうした」
齋藤軍曹もサイパン宙戦の生き残りで、今回の神風特別攻撃隊はサイパン宙戦の生き残りが多く参加していた。
「何か深刻な顔をされているので、思わず声をかけてしまいました。どうされましたか?」
「大丈夫。どうということもないよ」「それならばよいのですが、こんな暗くて狭いところにいると気がめいってしまいますよ。甲板にいきませんか?」
「甲板か、しかしあそこには俺たちの棺桶が置いてあるじゃないか」
「棺桶?ああ桜花のことですね。まあ、棺桶には違いないですね。私たちはあれに乗って要塞に突っ込むのですから。でも大尉、あれはヤマト独立の最後の切札です。何としてでも成功させなくてはなりません」
「わかっている。この作戦が重要で、あれが救国の兵器だと」
現在、われわれは桜花が積まれている輸送船の中にいる。要塞に届く距離にある出撃予定ポイントまで運ばれることになっているが、護衛の戦闘艇がないため、敵におびえながら、主要航路を外れた脇道をおそるおそる航行している。
私は惑星探査の仕事に生きがいを持っていた。しかし、愛する祖国のために戦うことは自分では納得している。できれば、仲間のように敵艦と戦って戦死したかった。
生きるか死ぬかではなく、いつ死ぬかしかない戦場に長くいたためか、別に死ぬのは何とも思わないが、せめて戦艦一隻、空母一隻と刺し違えたいと強く思っていた。
ところが、護衛もなく武装もろくにないおんぼろ輸送船に乗せられて敵にびくびくしながら運ばれて、無事に出撃できたとしてもありあわせの中古部品を使ってでっち上げた特攻兵器で、まともなナビシステムの搭載もなく、星図と計器だけでどこにいるか判断し、船に直接進行方向と進行距離をプログラムしなければならない、乗組員の経験と能力頼りで進む船に乗せられ、一つ間違えればどこへ行ってしまうかもわからない。
さらに、酸素と食料を節約するために設置されている冷凍睡眠装置は年代物の中古品で本当に目覚めることができるかもわからない、もし目覚めても予定の場所で目覚められなければ今いる場所すらわからずそのうち酸素切れで死ぬ船だ。そんな船で警戒厳重な要塞に近づいて突入するという無謀な作戦に従軍させられるなんて、死んでも死にきれない。
「しかしもうすぐ狭い桜花に閉じ込められるのですよ。最後に広いところでのびのびしたいではないですか」齋藤は促すように言った。
「そうだな。わかった」九頭はしぶしぶ起き上がった。
九頭大尉と齋藤軍曹は甲板へ上がった。甲板には桜花が何台も並べられていた。
「やっぱり広々していますね」齋藤はいった。
九頭は甲板に並べられている桜花をみて、ふと思い出すようにいった。
「そういえば、牟田大佐はどうした?」
「あいつですか。さあ。きっとみんなに半殺しにされるのが怖くて船室にこもりきりなのではないですか」
牟田元中将はサイパン宙戦の総司令官で、功名心にかられ無茶な作戦を実行したことで、軍を壊滅に導いたことにより大佐に降格、このヴィシー要塞特攻作戦のために編成された神風特別攻撃隊隊長として輸送艦にいる。当然桜花搭乗員として、桜花に乗りヴィシー要塞に突入することになる。なお、副隊長は私だ。
「ちゃんと出撃できるのかね」「我々搭乗員や甲板員が無理やり桜花に放り込んで、強制的に出撃させますよ。それに一度桜花に乗って出撃してしまえば、もう逃げる方法はありませんから。要塞に突っ込むか自爆するか酸素切れで苦しんで死ぬか」
「どう足掻いても助からないか」「そうですよ」
ふと、特攻基地でのことを思い出した。
今回の作戦を実行する前、サイパン海戦生き残りの我々は、特攻基地にて桜花の操縦訓練を受けていた。そこではまだ幼い子供たちが集められ、桜花への搭乗訓練をしていた。
話しかけてみると、みな11、12歳ぐらいの子供たちだった。一番幼い子では9歳で、父は戦死し、兄と一緒に入隊したのだと言っていた。あの子たちが戦場へ行く前にこの戦いを終わらすことができれば、我々の死も無駄ではないのだがと思った。
その時突然激しく警報が鳴った。
「敵襲、敵襲、桜花搭乗員は至急桜花に搭乗、出撃されたし」
「敵に見つかったのか。なんでこんな正規ルートから外れたところに敵さんたちがいるんだ!」齋藤は叫んだ。
輸送船は航路を外れ、ほとんど使われていない脇航路を航行しており、発見される可能性はかなり低いはずであった。
「齋藤、惚けていないで早く搭乗しろ」「私の桜花はもっとはずれのほうですが」
桜花は全長20メートル近くあり、それが縦に10本ずつ並んでいるため、甲板を移動するのは大変である。
「時間がない。どれでもいいから乗れ」
九頭と齋藤はとりあえず手近かな桜花に乗り込んだ。
「艦番は01。これは牟田大佐の艦か」九頭はつぶやいた。
「オペレーター、桜花01発艦します」「了解、桜花01発艦」カタパルトに乗った桜花は宇宙空間に射出された。
発艦と同時に索敵スコープのスイッチをいれ、動力装置を始動するスイッチを入れた。
索敵スコープで確認すると、桜花を運んできた輸送船は敵に囲まれ攻撃を受けており、満身創痍の状態であった。
桜花には攻撃兵器は積んでおらず、唯一の攻撃方法は敵戦闘艇に突っ込むしかない。ところが、いくらスイッチを入れなおしても動力装置が稼働せず、まったく身動きが取れない。「えい、くそ、どうして動かないんだ」
そのうち輸送船が爆散、そのあおりを受けて九頭の桜花は吹き飛ばされ、九頭は気絶してしまった。
「あれ、ここはどこだ」気が付いた私は周りを確認した。何もない空間である。敵も味方の輸送船の残骸もない。どうも遠くに流されてしまったらしい。あいかわらず動力装置も動かない。
ただ流されるままに漂っているようだ。
私たちは作戦中に行動不能になった場合、自爆するよう命令されていた。敵に万が一でも情報を与えないためということだ。
私はため息をつくと自爆装置のスイッチを入れようと手をのばした。
その拍子に、ばたりと手帳が落ち、中から家族の写真が飛び出した。父、母、兄の三人ととった最後の家族写真だ。
私はその写真を手に取って見つめた。そして、冷凍睡眠に入るスイッチに注目した。
桜花は出撃後、しばらく航行したのち、酸素や食料等を節約するため要塞の警戒区域の手前まで自動操縦で進むことになっており、その間は冷凍睡眠装置で搭乗員は眠りにつくことになっている。ただ、装置自体は突入まで持てばいいので大昔の移民船についていた装置をそのまま転用しており、かなり古いものでたいした性能は期待できない。
一瞬生きようか迷いが生じたが、私が生き残って、もし敵の捕虜になったら、この作戦自体失敗してしまう。家族も周りから非国民として見られてしまう。頭を振ると思いきるように「ヤマト独立万歳!」と叫んで自爆装置のスイッチを入れた。
牟田練雄大佐の苦悩
「死にたくない、何としてでも生き残る」それが私の頭の中をいっぱいにしていた。
私は軍のエリートだ。今回の独立戦争で、更に地位を上げて歴史に名を遺す英雄になるはずだった。ところが、間抜けな部下なせいでこんなことになってしまった。
とりあえず、私の桜花はこっそり改造を施した。冷凍睡眠装置は中古だが、大型移民船に積まれていた高性能のもので300年は持つ代物だ。また、自爆装置と冷凍睡眠装置のスイッチを入れ替えておいた。これで自爆しようとしたが、誤って冷凍睡眠装置が作動したと言い訳できる。
改装に慌てていたため、一部別なところを壊してしまったようだが、さしたる問題はないだろう。
とにかく、死ぬのは間抜けな部下たちだけでいい。私をこんな目に合わせた罪滅ぼしに、私の功績になるのだ。特攻作戦が成功すれば、その指揮官として私は英雄だ。そうすれば、元の地位に戻るだけでなく、昇進も十分ありうる。首都のシンキョウトに銅像が立つかもな。そう思いに暗い部屋の中で一人やにやしていたら、突然閃光がしたと思ったら、意識が途切れた。
お読みいただきありがとうございました。もし少しでも気になりましたら星かブックマークをいただければ大変ありがたいです。
星一ついただければ大変感謝です。ブックマークをいただけたら大大感謝です。ぜひとも評価お願いいたします。
とりあえず、初めての宇宙物です。内容的には従前の物とあまり変わらないと思いますが、何話か投稿してみて、様子を見てみようと思います。あまりに人気がなければ途中で打ち切りも考えています。ぜひともお読みいただければ本当にありがたいです。
どうぞよろしくお願いいたします。