感度3000倍媚薬を友達のお母さんに使ってみた
いつもの様に友人の松永の家でまったりしていると、奴がニヤニヤと嬉しそうに寄ってきた。後ろに何かを隠している辺り、どうやら良さ気なブツがある様だ。
これでカナチョロとかセミの抜け殻を見せてきたら、コイツを素手で分解してやろう。
「良いものがあるんだ」
「エロ本か?」
「チッチッ。目先のエロに目を奪われる様なもんじゃない。もっと良いものだ」
「スッゲーエロ本か?」
「……。これだ」
奴は手を前に出すと、目薬を一つ置いた。
「おいおいおいおい。もったいぶって目薬一つ──いや、さてはお前コレ……」
「そうだ。かn──」
「睦田がいつも使っている目薬だろ! 睦田が居ない隙に取ったのか!? メル◯リで売るのか!? 売れんのかそれ!?」
「落ち着け。な?」
「お、おう……」
すっごい冷めた目で見られたので、仕方なしに黙ることに。
「コレは感度3000倍媚薬だ」
「明日は晴れかなー?」
「聞けって」
立ち上がり帰ろうとしたが、腕を引かれ引き止められた。仕方なしに座り直し話を聞くことに。
「文字通り感度3000倍になる薬だ」
「……」
「俺の兄貴の先輩がな、裏ルートでマフィアから仕入れたらしい。それを半分兄貴が貰ったんだ」
もう既に出所が胡散臭い。どうやら奴は俺より欲望に忠実で見境が無い様だ。
「なんだその顔は。ははぁん、さてはお前信じてないな?」
「信じろって言う方が無茶だろよ。毒入ってねーか、それ」
「大丈夫だ。ペットの亀に試したがまだ生きてる」
「亀も感度3000倍になったのか?」
「いや……亀だからよく分からなかった」
「だろな」
「てな訳でお前の出番だ」
「おま」
どうやらこの欲望マンは、俺をお試しにして甘い汁を一気飲みしようとしているらしい。その手には乗らんし食わんし掛からんぞい。
「なら博子に使おう」
「俺のかーちゃんに使うな!!」
「俺の母親は今年で56だ。一方博子は43。猿でも分かる算数だ」
「で、でもよ!」
「56のアザラシ体系のオバハンが感度3000倍になる姿が見たいのか? 一方博子はいい感じにスレンダーでパパ受けは抜群だ。猿でも分かる保健体育だ」
「……ぐぬぬ」
「よし、決まりだ」
部屋のドアをそっと開け、キッチンへ向かう。買って知ったる他人の家なので、何も気にせず普通に歩いてゆく。
「あら、智宏くん。どうしたの?」
「博子さん、何も言わずこの目薬をしてもらえせんか?」
「あらあら、さてはこの目薬に何かあるわねぇ? オバサン勘だけは鋭いんだぞ〜?」
「……」
なんて微笑みながらも、博子さんは感度3000倍媚薬入りの目薬のふたを開けると、上を向いた。
「あ、ズレちゃったわ」
顔を戻すと額のど真ん中から目薬が垂れ始めた。目茶苦茶外したなぁ、おい。
「……あらやだ、どうしちゃったのかしら」
と、博子さんの様子が急に変わり始めた。何処かソワソワして落ち着かない様だ。これはまさかのまさか──。
「なんだか頭が凄い冴えたわ」
「?」
博子さんはスマホを取り出すと、SNSを開いて検索を始めた。
「見つけたわ。旦那の裏アカ……ははぁん、やっぱりあの女とデキてたのね。何故か知らないけど今私の勘はすっごい冴えてるのよ」
そして何やら知らんウチにただならぬ闇オーラを纏い始めたので、俺は部屋へと撤収を決め込んだ。
「どうだった!?」
松永が食い気味に聞いてきた。
「お前、今日は俺の家に泊まれ」
「えっ!? やっぱりこの感度3000倍媚薬は本物だったか! ウホッ! ウホホッ!」
「急にゴリラ化すな」
「よし、そうと決まれば明日、クラスの八倉さんに使おうぜ!」
「なにぃ!? あの学校一可愛くて乳が異常なまでに発達してて誰にでも優しいくせに何処か近寄り難い雰囲気で『俺だけは彼女の事を分かってるぜ』とか勘違いさせる男子を続出させる小悪魔系の八倉さんにかぁぁぁぁ!?」
「お、おう説明ありがとよ」
「ただいまー」
「あ、オヤジが帰ってきた」
「いかん! 今すぐに逃げるぞ!」
松永の父親が帰ってくるなり!すぐに夫婦喧嘩が始まった。
「ち、違うんだって──!」
「女の勘舐めんなよ! 何か知らんけど今は3000倍くらいあるんだからな!!」
「ちょっ! 痛い! 出刃包丁は止めて!」「貴様の罪を肝臓で償え!!」
「あ゜ーーーーっ!!!!」
俺達は何も見なかった事にして、俺の家へエスケープを決め込んだ。
「……な、何か知らんがコイツは本物らしい」
「ウホ、ウホホ!」
ゴリラ化した松永は、期待と性欲に満ちた目で窓の外を眺めている。そりゃあ目の前で親父の肝臓が摘出されそうになったんだ、仕方ないさ。
「ウホホホホ! ウッホホホ!」
「ちゃんと喋れ」
「アレを見ろ」
指をさされ、窓の外へ目をやった。丁度妹の桃香が帰ってきたところだった。
「お、お前まさか──!!」
「ウホホーイ! ウホホホーイ!」
この性欲ゴリラは俺の妹に感度3000倍媚薬を使おうと企んでいる。どうやら俺はこの場でコイツを処分しなくてはならないようだ。
「貸せ!」
「ウホッ!?」
松永から目薬を奪い取り、奴の鼻の中へ突っ込んだ。
「ウボッ!?」
目薬を鼻に入れられた松永は鼻を押さえ狼狽えた。
俺の予想が正しければ、これでコイツを無力化出来る筈だ。
「な、なにするだ……ヘックション!!」
「どうやら俺の推理は当たった様だな」
「なっ!? ──ックション!! クション!!」
クシャミが止まらなくなった松永を家の外へと転がし、俺は目薬を机の中へと大事にしまい込んだ。
「へへ、悪いなゴリラ松永。コイツは俺がちゃんと正しい使い方をしてやるぜ」
翌日、松永は休みだった。
きっと耳鼻科に行って「う〜ん、よくわかりませんねぇ」とか言われている頃だろう。
「睦田さん」
「なんだよ田島、今日も湿気た顔してんな〜」
松永には悪いが、俺は巨乳でお淑やかなお嬢様系よりも、いつも俺に絡んできては悪態をついてくる憎き睦田をどうこうする方が3000倍楽しいぜ。
コイツ俺より1cmデカいからって、ある事無いこと吹きまくりで小馬鹿にして、パシリにして、無乳のクセにヘッドロックで押し付けてくるからウゼーから今から地獄を見せてやるぜ……!!
「これ、落ちてた。睦田の?」
「お、わりぃわりぃ。お前みたいにチビじゃねぇから落ちてるの見えなかったわ」
俺から手荒に目薬をひったくり、早速蓋を開ける睦田。どうせ最後の悪態だ。これくらい許してやろう。
ヒヒヒ、早くボーイッシュ様が感度3000倍になってビクンビクンする所を拝みたいぜ、ヒヒ。
「なんか生暖かいな、お前ずっとポケットに入れてたのか?」
「き、気のせいだって……」
睦田は荒々しく目薬をさした。目から外れた薬が顔から首へ、そして襟の中へと入っていくのが見えた。
女らしさほぼ皆無の睦田でも、流石に3000倍ともなればそれくらいは気がつくのか。流石は感度3000倍媚薬だ。
まあ、それでもようやく女の勘は人並みだろうけどな。これでようやく本来の正しい感度3000倍が拝める。
「……なんか身体がポカポカしてきたな。なんか変なの入ってねぇか? これ」
「入れてない入れてない」
入ってるけどね。松永の鼻水とか。
「お前もやれ」
「──え?」
な、なん……だと……!?
お、俺も……!?
「ほら」
「いや、別に目とか痒くないしいいよ」
「ほーら!!」
顔を抑えられ、無理矢理目薬を押し付けられた。
押し出された目薬が顔やら首にかかってゆく。
ヤバい……ヤバいぞおい!!
「──寒っ!!」
「?」
「な、なんか急に寒くなった!」
「目薬しただけだろ」
な、なんだ……!?
やたら寒いと言うか、寒気がするというか……悪寒!? 悪寒かこれ!!
悪寒3000倍か!? けど漢字が違わねーか!?
「な、なんだよ急にブルブル震えやがって……なんかかわいいな」
「──!?」
「ちょっと保健室行こうぜ。温めてやるよ」
睦田は舌なめずりをしてまるで獲物を見つけたハイエナの様な目になった。
「めっちゃ寒いっ!!」
合ってる! 悪寒で合ってる……!!
「いつもお前には感謝してるんだよ」
「なにを!?」
「オレみたいに粗暴で乱暴で横暴な女でも普通に接してくれててよ」
「自覚あるなら直せよ! あー寒っ!!」
「おら、来いよ!」
「あっ! 止めてっ! 乱暴しないで!! 誰か男の人呼んで!! おかーさーーーーん!!!!」