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5

かゆ達がポータルを潜ったその後、ひどく揺れる家のリビングで一人かおりが座っていた。


「やっと終わりになるのね。とても…とても長い時間だった。でも、れいちゃんが助かったなら、ずっと生きてきたかいがあったかな。」


かおりが一人呟く中、揺れは激しさを増していく。


「やっと、皆の所に行けるね。」


かおりは中指の指輪に手をつけようとした瞬間。突如本を閉じる音と共に揺れが止まった。揺れが止まると辺りは音が何もしなくなった。そんな音が何もない中、コツ…コツ…と足音が聞こえてくる。


「まだ、誰か居るの?」


かおりが振り向くと、そこには白いローブを着たゼロが本を二冊持ちながら立っていた。


「直接会うのは、初めて…ですわね。」

「あなた…もしかして…。」

「先輩の想像通りですわ。私の名はしのうた ゼロ。あの子に作られた人造人間ですわ。」

「人造人間ね。何も違いが分からないけれど。」

「まぁ、ほとんど同じですわ。違う所を述べるなら、寿命が無い事ぐらいですわ。」


ゼロは体全体で呆れて見せる。


「それで、やっぱり心変わりなどは、してくれないのかしら。」

「…残念だけど、私はここで終わりにするよ。」

「…そう。」


かおりの回答を聞いたゼロの声は心なしか少し沈んでいる様に聞こえた。


「なら、ここで全て聞いていく事にしますわ。」

「えっ?」


かおりが疑問を持った表情をしているのを横目にゼロはかおりの後ろにあるテーブルの向かい側に移動し、椅子に座る。


「今のこの状況なら時間もたっぷりある事ですし、沢山お話したいですわ。」

「この状況って、もしかしてあなたがこうしてるの?」

「えぇ、私も色々ありまして、それに応じて色々できますの。存在力の弱まった世界と元の世界を繋げながら時間の流れを変える、なんて芸当もできたりするのですわ。」

「もしかしてあのかゆって子を送り込んできたのはなにか理由があるの?そんな力があるならあなたが助けに来れたんじゃ…」

「私が助けに来たところでれいは元の世界には帰らなかったでしょう。所詮は自分の作った物なのだから。だからこそ、第三者が必要だった。それもれいを納得させることのできる程の意志を持つ者が。」


ゼロは深くため息をつきながら続ける。


「長い事かかりましたわ。条件の揃った者を見つけ出すのは。」

「ふふっ、そっちも大変だったのね。」

「まったくですわ。でも、これでようやく進むことができますわ。」

「進むって?」

「れいの人生が、ですわ。」


ゼロはテーブルに方肘を付きながら頬杖をついている。その表情はとても嬉しそうだ。


「友達に、なれるといいね。」

「なれますわよ。私が長い時間をかけて見つけた子ですもの。」

「そっか。」


かおりは安心したように息を吐く。部屋の中は相変わらず二人の呼吸音が小さく聞こえる位だった。


「さて、先輩の話も聞かせてもらおうかしら。」

「え?私?」

「えぇ、もとよりその為に来たのですもの。」


ゼロはにっこり笑いながら話を促す。


「私ね人の人生を見聞きしてそれを本にする事を趣味にしていますの。そうした本はたまに魔力を帯びる事もありますけれど。」

「この止まっているのもそういった本の力なの?」

「まぁ、そうなりますわ。かなり多くいますのよ。時間を止めたがる輩は。」

「時間を止める事は確かに憧れるよね。」

「実際にやろうとすれば大きな代償を払う事になるというのに。」


ゼロは頬杖を突いたまま呆れている。そんなゼロを微笑ましく見ながらかおりは話を戻す。


「それで私の話も聞きたいってことね。」

「えぇ、魔導書はほんのついで。実際はあなたがこの世界にちゃんと生きていたのだと、証拠を残す為ですわ。たとえ誰が知らなくとも、私だけは知っている為に。」

「そっか…。長くなるけど大丈夫?」

「問題ありませんわ。十年でも百年でもそれ以上でも、私は長く見てきましたもの。」

「そっか。じゃあまずはこの世界に来てからかな。まずはね…」


そしてかおりは長い長い自分の人生の話を話し始め、ゼロはそれを聞きながら本にペンを走らせ始めた。それは普通であれば気が遠くなる程の長い長ーいお話。

世界名:「時間」でのお話が終了になります。

れいは救われ、先輩も心残り無く天に行くことができる。ゼロもこれで心配事が減りました。

次回からは再び狭間世界でのお話に戻ります。

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