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自己紹介後、先生に教えられた座る席はかゆの隣であった。席に座ってみてもかゆは一切動く事無く眠り続けている。


(やっぱり姉御ッスね。)


そんなマイペースな姿を見てギルは少し安堵した。


HRが終わり、かゆに声をかけようと思った瞬間、周りをクラスメイトにとり囲まれた。


「ねぇあなたはどこから来たの?」

「趣味は?」

「好きなお店とかあったりする?」

「え、えっとぉ…」


一気に迫りくる質問に反応できずどうすればいいのか迷っていると隣の席から声が聞こえた。


「うるっさいなぁ。」


不機嫌そうな声に顔を向けると、いつの間にか起きていたかゆがこちらを睨みつけていた。


「まったく、うるさくするのはよそにしてよね。」


そう言ってかゆは立ち上がり教室を出て行った。


「あの子態度悪いよね~。」

「ほんとほんと。」

「話にも全然乗って来ないしね~。」

「それよりさぁ~。」


ギルは再び質問攻めにされながらもかゆが出て行った扉を見つめていた。その後も休憩時間に話しかけようとしたが、その度に邪魔が入り話す事は出来なかった。


時は過ぎ4時限目。科目は体育だ。


「では皆さんで二人組を作って下さい。」

(初日なのに!?)

「今日転入したばかりのギルリアさんは隣の席の遊燐花さんと組んで下さい。」

「え。」


急な指名に露骨に嫌そうな顔をするかゆ。


「わざわざ指名しないでください。準備運動ぐらい自分一人でできますからお構いなく。」

「あなたも仲のいい友人ぐらい作りなさい。」

「ふんっ。必要ありません。」


かゆはそう言ってその場から離れていく。


「ちょっと!遊燐花さん!ごめんなさいね。あの子いつもあんなで…。」

「いえいえ、気にしてませんから。」

(何だろう。心なしか昔の姉御に近いような。)


先生が困り果てているとそこに一人の生徒がかけてくる。


「先生。僕がペアになりますよ。」

雨花(あめばな)さん。ありがとう。お願いね。」


雨花の提案に喜んだ先生はまた別の生徒の元に移動していった。雨花はギルに向き直り、自己紹介を行う。


「僕は雨花(あめばな) (さち)。よろしくね。じゃあ早速準備運動をしよう。」


準備運動が終わって数人ずつで100m走を行っている。ギルの番が来て並ぶと隣に居たのはかゆだった。かゆはギルを一睨みしてから前に向き直る。審判の合図と共に皆走り出す。その中でもかゆの速度は尋常ではなかった。他を置き去りにしてゴールする。ギルも他の生徒より早い方ではあったがかゆとの差は明らかだった。


「つまんないの。」


かゆはそう言って一切疲れた様子も見せず歩いて行く。ギルは息を整えながらかゆを見続ける。


(姉御、少し寂しそうッスね。)


ギルは学園に入る前、女装姿の訓練中にゼロからされた話を思い出す。


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女装姿で街中を散歩させられているギルは周りの視線を気にしてビクビクしながら歩いており、たまにシャキッとするようゼロに背中を叩かれていた。


「いいこと?あの子達に会ったからといって、知り合いの様に接してはいけませんわ。」

「どうしてッス痛ぁ!」


頭をはたかれいい音が響く。ギルは頭を抱えて蹲る。


「口調に気をつけなさいな。」

「うぅ…どうしてですか。」

「私の予想だけれど、他の皆は全員あの学園に在籍していますわ。…強制的にね。」

「強制…?」

「私達はこの世界に連れてこられた形になりますわ。それもバラバラになって。」

「バラバラだと何か問題が?」

「時間のズレが起きるのよ。別にあの世界に居た私達であれば一切歳を取る事は無いけれど、どうしても過ごす時間にズレが生じてしまう。あの子達はこの世界に来てから既に数か月は過ごしているはずですわ。」

「でも、どうしてそれが知り合いとして接してはならない理由に?」


ギルの質問にゼロは少し考えた後、一つの喩えをだした。


「手に持っているコップに半分の水が入っているとするわ。」

「?」

「そのコップにさらに水を足すなら、どうするかしら。」

「それは普通に新しい水を入れるだけでは?」

「…難しいかしら。じゃあ今の現状について話しますわ。私達はこの世界に落とされた。正確には強制的に連れてこられたのよ。一体誰がそんな事をしたのかしら?」


考え込むギルは既に人の目線は気にならず背筋を伸ばしたまましばらく悩む。そして一つの答えをだした。


「この世界の人、ですか?」

「その通りよ。正確にはこの世界の界有者ですわね。その人物は今現在進行形でコップに新たな水を注ごうとしている。」

「注ごうと?…まさか!」

「やっと分かった様ですわね。そう、あの子達はこの世界に取り込まれかけている状態にあるの。そして、私達が来る前に数か月の猶予があった。」

「何か対策されている可能性が高い。ということですか。」

「その通り。私の考えでは彼女達は一部の記憶を封印されていますわ。都合がよくなるように。」

「一体どうすれば…。」

「そこまでは分かりませんわ。でもあの子達の近くに居ればヒントを得られる可能性が高い。幸いこちらにも時間の猶予が多くありますわ。ゆっくりと仲良くなって、後は上手くやりなさい。」

「何で最後だけ投げやりなんスっ!…かぁぁぁ!」

「口調。」


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(ゼロさんの言っていた通りッスね。焦らずに、ゆっくりと。)


立ち去っていくかゆの後ろ姿を見ながらギルは心の中で、救うための決意を再度行った。

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