32(return to world)
ポータルを越えて元の世界に戻って来たかゆ達。
「戻って来た~!ってうん?」
ポータルが閉じられ、戻って来た部室に知らない人物が二人いた。赤髪の男女だ。片目が仮面に隠れた少年は無表情で少女の前に立ち、その手に持った剣をかゆ達に向けている。
「お、おぉ。帰って来たと思ったら知らない二人組がお出迎えして下さっている。」
「これ落ち着いてる場合なの!?ねぇ!?」
「お二人は下がってッス!」
ギルが前に出て盾を構える。
「あんた達、何者ッスか?」
「……………。」
少年は喋らずそのまま剣を構えている。その後ろから少々怯えた様子で話しかけてくる。
「あの、ここの人?ですか?」
「そうだよ~。」
「えっと、白い髪の子に連れて来てもらったんです。何か知りませんか?オメガ君も武器は下げよう?」
「……………。」
少女に言われたオメガという少年はゆっくりと武器を下ろすとその武器を消滅、もといインベントリにしまった。
「白い髪っていうと…やっぱりゼロかな。」
「もう一波乱ってこの事かぁ~。」
お互いどうすればいいのか分からず見合ったままでいると部屋にポータルが開かれた。全員の視線がポータルに向けられる。
「ふぅ~。流石に大変でしたわね~。…っで?どうしたんですのこれは?」
入って来たゼロにその場全員で戸惑いの目を向ける。
「…お互いに対処に困っているって事ですわね。警戒の必要はありませんわ。これから共に過ごす仲間なのですから。」
「…まだ信用していない。」
「あら。それは残念。」
オメガが冷たく言い放ち、ゼロは気にもせず続ける。
「まずはお互いの事を知る所からですわ。とりあえずオメガはかゆとギル、アルフアはれいと過ごしなさい。いい事?あなた達は敵じゃない。とりあえず問題は起こさないで頂戴ね。私はちょっと疲れたからしばらく休む事にしますわ。」
ゼロはあくびをしながら部室の入り口とは別の扉に入って行く。残された皆はどう行動したものか悩む。
「えっと、時間はいっぱいあるから簡単な料理でも作ろうか?」
「お!いいねれいちゃん!」
「そういえば合流してから何も食べてないッスね。」
れいはアルフアという少女に目を向けて、少し緊張しながら問いかける。
「えっと、アルフアさん?は、お料理とかはしますか?」
アルフアは首を横に振る。
「やって…みます?」
アルフアはとても興味があるのか大きく首を縦に振る。それを見てれいも嬉しくなり二人は微笑みながら調理場に移動していった。
「じゃあ私はお菓子でも買ってこようかな!ギルよろしく~!」
「あ、姉御!?ちょっと!」
ギルの声掛けを気にせずかゆは部室から出ていってしまった。
「…えっと、オメガさん…だったッスよね?とりあえず座って待つッスか。」
「……………。」
オメガはギルに勧められた通りに椅子に座る。表情は一切変わらないが視線はずっとアルフアについて行っている。アルフアはれいに料理を教えられているようで包丁を両手に持ってプルプル震えている。れいが持ち方を教えて慎重にきゅうりを切っているようだ。
「えっと、お二人はどこから来たんスか?」
「…知らない。」
「えぇ…。」
会話が続かないオメガとギル。反対にれいとアルフアの方は盛り上がっている様だ。
「アルフアさん手先器用ですね。」
「昔お母さんの手伝いをしていたんです。料理は危ないからってさせてもらえませんでしたけど。」
「確かに慣れない内は危ないですからね。でも出来るようになると楽しいですよ。」
れいの指導で進んでいく料理は問題無く進んでいる様だ。
そんな気まずい空気とほのぼのとした空気が綺麗に分割された部室が存在する一方、かゆは学園のある山を下りた平地の町にお菓子を買いに来ていた。商店街を潜り抜けた先のスーパーへ向かうその道中、道沿いにある公園に目が向いた。二人の子供が一人の子供を責め立て、挙句の果てに暴力を振るい始めたのだ。それはどこからどう見てもいじめの現場であった。
(良くないね。)
かゆはすぐに現場に向かい、いじめている二人の肩に手を置く。
「いじめはだめだぞ~」
「え?お姉さんだれ?」
「通りすがりのお姉さんだ~。友達は大切にしないとね。」
「別に友達じゃねぇし!」
「だったらこれから友達になればいいんだよ。ね?」
「え?あ、うん。」
いじめっ子二人は段々興奮が収まってきたのか大人しくなる。かゆはいじめられていた子に回復魔法をかける。そのままその子の手を引いて起き上がらせる。
「大丈夫?」
「うん。ありがとう。」
「よしよし。じゃあ仲直りだ。」
子供たちは握手して仲直りが出来たようで三人手を繋いで公園から走り去って行った。
「うんうん。仲良き事は素晴らしきかな。さて、買い物買い物~。」
子供たちを見送ったかゆもまたお菓子を買いに再びスーパーに歩き出す。そんな彼女の髪の先端はほんの微かに黒色に染まっていた。




