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「頭以外は動かす事出来ないから心配しなくていいよ。」


かゆの言う通り騎士はいまだ頭以外が動かないようで精一杯騒いでいる。


「やめろ!やめてくれ!俺はもっとこの世界を楽しみたいのに!」

「そう命乞いしてきた人が数多くいたと思うが、お前は一度でも聞いたか?」

「あ、あぁ!聞いた事ある!何回か子供を逃がした事が…」

「あら。拘束を解いて逃げ出した所を弓の的にして遊ぶ、なんて所業を逃がした事にカウントしますのね。」

「なんっ!?」


騎士は失言したとばかりにすぐ口を閉じたが、その反応だけで十分であった。


「本当にこんなのが同郷の者だと思うと、私自身悲しくなってくるな。」

「くっ、そうやってまた善人気取りか!俺達を切っておいて悲しくなるだと?笑わせる!幻想の味方して俺達を害してる方がよっぽど悪人だろうが!」

「幻想か。お前達にはずっとそう見えているのだったな。…私は初めから、この世界は本物であると予感していたよ。初めてこの地に降り立ったあの時、私は感動した。見える風景が、音が、私が思っていた物以上の物だった。元の世界ではもう忘れられていた景色なのだと実感した。」


ダイヤはそっと剣を構える。


「この美しい世界を守る。お前達を切る理由としては十分すぎるくらいだ。」

「やめろぉぉぉぉぉ!!」


ダイヤは剣を振り、二人の騎士を切り捨てた。切られた騎士は光になって消えていく。


「団長さん。大丈夫?」

「大丈夫です。迷う理由は無くなりましたから。」

「無理はしないようにね。」


かゆに励まされながらダイヤは残りの賊達も切っていく。そこで一つ気付く。


「あの、皆さん。先程までいた黒い服の男性を見ませんでしたか?」

「あの襲い掛かって来た人?」

「はい。」


辺りにいないのはもちろん、遠くを見ても見当たらない。


「そうですわねぇ。界有者程度が逃げられるような領域ではないはずだけれど、解除しましょうか。…これ以上馬鹿じゃ無ければよいのですけれど。」


ゼロが本を持ち出し、本をゆっくりと開くと、隔離領域が消滅し、本に何かが吸い込まれていった。すると突然高笑いが響いた。


「はーはっはっはー!馬鹿め!わざわざ付き合ってやった遊びの勝敗なんて気にする訳が無いだろう!」


いつの間にか空の上にスーツの男性が浮かんでいる。


「この世界は私の物になるのだ!集え!勇者たちよ!この世界のすべてを蹂躙するのだ!」


村の遠くの方から光が降り注ぎ、村を囲むようにして様々な恰好をした人達が現れる。まずはこの村を押しつぶさんとする様に流れてくる。


「うわぁ。流石にあの量から守り切るのは…。」

「あんな量いくら何でも防げないッスよ!」

「あ、あぁ…。」

「クソッ!ここまでやって来たのに!」


かゆは苦く笑い、ギルは慌てふためき、れいとダイヤの顔は絶望に染まっている。そんな中一人ゼロだけは呆れたように大きなため息をついた。


「はぁぁぁぁ~。まさかここまでの馬鹿だったとは。ちょっと高く見積もり過ぎましたわね。」

「ぜ、ゼロ?」

「あなた達、村人を全員この円に集めなさい。私が対処してあげますわ。」

「でも、いくらゼロさんでもあの量は厳しいんじゃ…」


心配そうに見るかゆに対してゼロは余裕の笑みを返す。


「あらかゆ。あなたなら私の強さは十分理解していると思っていたけれど、とにかく急ぎなさいな。私の強さ、あなた達全員に見せてあげる。光栄に思いなさいな。」


ゼロに言われた通り、村人達含め、皆で円の中に集まる。始めは入りきらなかったがいつの間にか全員入れる様に拡大されていた。


「全員集まりましたわね。あなた、ちょっとこちらへ。」

「…私?」


ゼロに指定されたのはこちらの世界の界有者、白いオーラの少女である。


「あなたの力を分けて下さる?少しで問題ありませんわ。」

「…わ、わかりました。」

「ありがとうですわ。円に戻っていいですわよ。」


少女は円に戻っていく。それを見届けたゼロは深く深呼吸をする。


「さて、いきましょうか。」


ゼロは両手を前に出す。その手の上に開かれた本が出現する。それは不自然なくらいに真っ赤で金色の模様が描かれていた。後ろにいるかゆ達には一部が見えただけでその本が明らかに普通ではない事が察する事が出来た。


「私は赤、手にある物も赤、私の周りには赤が似合う、私に歯向かう者は全て綺麗な赤へと塗り替えましょう。ここは私の庭、不届き者は皆赤へと染まれ!今ここに権限せよ。『赤に満ちた女王の章』『赤緋紅(スカーレット)の庭(・ガーデン)』。」


ゼロが本を閉じると、ゼロを中心に赤い液体が地面に広がっていく。円の内側には流れ込まず避けて流れていく。液体は広く広がり、村全体に流れ出して行った。

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