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戦争の開始宣言から時間が経ち、かゆ達は押されていた。
「いやぁ、ほんとアンデットよりたちが悪いね。」
「倒してもケガを負わせても関係無くかかって来るッスね。」
ゼロの魔法はすでに切れているらしく、最初は痛みに怯えていた賊達も今では狂ったように突撃してくる。始めに一度押し返していたが、今は到着時と同じぐらいの状態である。
「どうするッスか姉御!?」
「どうするって言っても耐久するしかないと思うよ!」
「マジっすか~!?」
「少なくともこの世界の英雄は、私じゃ無いと思うよ~!」
「ひえぇぇぇ~!」
話しながらギルは近接の対処を、かゆは空の魔法や矢を打ち落としている。攻撃が少し弱まり二人して息を付く。
「数が増えないのは救いかな~。」
「これ以上増えたら捌けないッスよ!」
「いい特訓にはなるんじゃない?」
「流石に勘弁ッス~!」
「あはは。さて、また来るよ!」
「了解ッス!」
「「ここは絶対に通さない!」ッス!」
二人が戦闘を続けるその後方では、れいと少し気を取り直したダイヤが居た。
「騎士として…守るべき物を守る為に…か…。私は…。」
ダイヤは少し前、村人の治療をしていたギルに言われた事を考えていた。
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少し前…
「あれ?れいさん…と、ん-?どちら様ッス?」
「ギルさん。この人、見た目は違うけどダイヤさんです。」
「うぇ!?も、申し訳無いッス!随分と変わったッスね。」
「あちらの勢力の親玉…なのか分からないけど、とりあえずそいつの攻撃を受けたらこうなってたんです。これじゃあ戦う事も出来ないし、騎士になんてとてもなれませんね。」
ダイヤはずっと俯いたまま、心が折れたように喋っている。れいはどうする事も出来ない自分に悔しさを感じながらダイヤの背をさすっている。
「んーっと、俺には良く分からないッスけど、心折れたらその時点で守れる物も守れなくなるッスよ。」
「え?」
「まぁ、簡単な話、諦めちゃダメって事ッス。どんな事にも言えるッスけど諦めたら全部終わるッス。何もかも失うッスよ。」
「……………。」
全てを失う。それがどこまでを示すかダイヤには分からなかったが、ギルが発したその言葉には確かな重みがあった。
「俺も昔そうなりかけた事があるッス。命の恩人を守り切れず失う所だったッス。」
「その時は、どうなったんですか?」
れいの質問に対して、ギルはその時の事を懐かしみながら言う。
「助けてもらったんスよ。姉御に。」
「かゆに?」
「そうッス!俺には見えなかったッスけど敵の足を射抜いたらしいッス。」
ギルは嬉しそうに話し続ける。
「そして色々終わった後、姉御にお礼を言いに行ったんスけど姉御は俺に対して、
「諦めずにあれだけ耐えていたから準備が間に合った。ただそれだけだよ。」
って!本当にかっこよかったッス!」
「い、勢い凄いですね。」
「それはもう!姉御は俺の恩人で目標ッスから!治療終わり!」
最後のケガ人の治療を終えたギルは立ち上がり、前線の方を向いた。
「姉御、結構苦戦してるッスね。やっぱり殺さずにあの人数は厳しいッスよ。」
「あれで殺してないの!?」
「きっと手加減してるハズッス。俺も助太刀しに行くッス!騎士として、守るべき物を守る為に!」
ギルはそう言い残して前線へと走り去って行った。
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「私が…守りたい物は…。」
自分に問いかけたダイヤの答えはすでに決まっていた。
かゆはゼロの魔法があるうちは余裕があり手加減していましたが、魔法が切れてからは手加減はしていません。英雄も長く動けば疲れます。




