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side:ゼロ
泡に包まれた少年を連れたまま戦場から一人離れるゼロ。ゼロの向かう先には淡く光る場所があった。
「さて、あなたはどうするのかしら?」
「………。」
ゼロが光に語りかけるが返答は無い。
「私がいるからといって、何もしないのはお門違いですわよ。私は用事があったから少し手助けしているだけですわ。あなたの世界なのだからあなたが守る必要がある。あなたも何か行動なさい。」
「………。」
何も答えず沈黙を貫いている光に対してゼロはため息をつく。
「…一つ、導きを与えてあげる。今、あの戦場にあちらの存在でありながらこちらの世界を正しく認識している子がいる。彼女こそがこの世界の常識を超える、または変える事の出来る、『常越者』よ。あなたが導いてあげなさいな。そうすればこの世界は良い方向に傾きますわ。」
「…ありがとう…ございます。」
「感謝は受け取っておきますわ。…さて、私も戻らなくてはね。あの子達に何かあったら大変ですもの。頼みましたわよ。」
ゼロは光に背を向けて戦場の方向へと歩いて行った。残された光はその場に残ったまま淡く輝いていた。
光と別れて少し経ち、戦場へと戻る道中、泡に包まれた少年がゼロに話しかけてきた。
「随分と大きなヒントだったな。あれでどうすれば分からないなんて馬鹿はそう居ねぇだろ。」
「あれだけ言わないと動かないのよ。あの子は。」
「子供の界有者とは難儀なもんだな。」
「この世界は元々一つだったのよ。かなり珍しい例だけれど。界有者が子供を産んでいたのだから。」
「へぇ~なるほどね。それで二人の子供が喧嘩って事か?」
「一方通行だけれどね。」
世界を持ち管理する者の事を『界有者』と言う。界有者は基本的に世界を外側から観測するものであり、人と接することは無い。それこそ世界に危険が迫らない限り。
「元の界有者は子供を作ってそのまま面倒を見る事も無く居なくなってしまった。残った子供は二人とも界有者としての力を持ち合わせそれぞれの世界を作った。兄は科学を原点とした世界を。妹は魔法を原点とした世界を。」
「妹の方が優れてたから嫉妬か、やれやれだな。親の影響なのかね。」
「どうかしらね。」
二人はしばらく話しながら歩いて行く。
「なぁ、そろそろ降ろしてくれてもいいんじゃね?」
「どうしましょうね。」
「あとまた別の世界に送ってくれよ。この世界レベル低いしつまんねぇんだよな。」
「まったく…貸しですわよ。今すぐでいいかしら?」
「おう。よろしく。」
ゼロが本を開くと目の前の地面に人一人分の穴が出来る。
「どこに飛ぶかは分かりませんわよ。」
「いつものこった。」
少年が泡に入ったまま穴に向かって行く。
「なぁ、これこのまま?」
「えぇ、このまま。」
「……………。」
少年に向かって「何か?」と聞こえてきそうな表情で首を傾げる。
「出せー!!せめてこれから出せー!!」
「どうせ移動が終わる頃には消えますわよ。…多分。」
「多分っつったろ今!!畜生!!さっきの事まだ根にもってやがるな!!」
「行ってらっしゃーい。」
「コンチクショー!!」
騒がしくも少年は穴に吸い込まれて行った。
「さて、急ごうかしら。」
ゼロは再び戦場へと歩きだして行った。




