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side:かゆ&ギル
前線へ向かったかゆとギル。急いで向かう先では騎士と賊の現実世界組とこの村に住んでいる仮想現実世界の人達が戦っていた。しかしどう見ても戦力差は明らかで村人達の方が押されていた。中には重症を負い、膝をついている者やケガをしながらも前線で戦い続ける者、すでに事切れて命を失っている者もいた。
「ひどいッス。同じ人間にする所業じゃないッスよ。」
「でもそういう人間は必ずいる。自分以外をおもちゃの様に扱い楽しむ輩が。…あの人達のようにね。行くよギル。ケガ人の治療をお願い。これ以上犠牲を増やさない為に。」
「姉御一人で大丈夫ッスか?」
「大丈夫。昔見たあのドラゴンと比べれば、恐れる必要も無いよ。」
「…了解ッス。無理はしないで下さいッスよ。」
「…任せて!私の強さは知ってるでしょ!ほら行くよ!」
前線にたどり着いた二人は大きく声を上げる。
「村人のみなさーん!一度引いてくださーい!」
「ケガ人をこちらに!治療するッス!」
「おぉ!あんた達は!」
「弓の女神様に緑の騎士様まで!」
「ありがとう!恩に着る!」
村人達が下がって来るのを見届けて、かゆは一人、敵の前に立ちはだかる。
「さて、私がいる以上、ここから先は通さないよ。」
かゆはオーラを放ちながら言う。ゼロの魔法により普通に戻っている賊達はその圧に恐れおののいた。
「ひぃっ!化け物っ!」
「お、怯えるな!所詮相手は一人で弓使いだ!全員でかかれば押し切れる!」
「「「「「おぉ!」」」」」
仁王立ちしているかゆに向かって賊達は数と勢いに任せて押し切ろうと突っ込んでくる。
「あてにもならない情報で助かるよ。」
そう一言呟くと、口元に笑みを浮かべたかゆの姿が一瞬輝き、輝きが消えた時にはかゆの姿は大きく変わっていた。
手には大剣、服装は白に金色の装飾の施された軽そうな鎧、頭に被っている兜も同じ様な装飾に天使を思わせる羽が付き、その見た目はさながら『戦女神』と呼べるものであった。
かゆが体を低くし、大剣を一振りすると正面からかかって来た敵ほとんどの膝から下を切り飛ばした。これでは歩行する事は困難だろう。
「ぎゃあぁぁぁ!!足が!?痛い!痛いぃぃぃ!!」
「何故…何故剣が扱えるんだ!」
「ひぎゃあぁぁぁ!!何で痛みがっ!あああぁぁぁ!!」
切られた者達は地面に転がり、皆叫び散らかしている。かゆはその姿を悲しそうに見ていた。
「偽りの戦いに喜びを見出して理由も無く他者を傷つける…か。現実が見えていないとこうなるんだね。私も重々気を付けないと。」
そう感慨に耽っているかゆの元に複数の魔弾が降り注いでくる。それを確認したかゆの姿が再び輝き、その姿が変化する。その姿は黒のローブにとんがり帽子、まごう事無き魔法使いであった。かゆは地面に杖を付くとかゆの周りに障壁が張られ、降り注ぐ魔弾を防いだ。
「後ろだ!後ろの村人どもを狙え!」
次に放たれた魔弾はかゆの遥か上を通り過ぎる弾道で飛んでいく。
「ふん!」
かゆは障壁を解除してから杖を上空に向かって振り、そしてその勢いのまま体を回し、横にも振るった。上空には賊の魔弾と同じ属性、同じ数の魔弾が飛んでいきぶつかり合って消滅。一方正面には敵の数と同数の炎弾が飛んでいき、賊の体を焼いた。
「ぎゃあぁぁぁ!!」
「熱い!熱い!熱いぃぃぃ!!」
かゆは再び地面に杖を付き、賊の方を見る。先程よりも強いオーラを放ちながら。
「ちゃんと言ったはずだよ。ここから先は通さないって。」
side:れい
かゆ達から離れたれいはダイヤらしき人物に近づく。
「ダイヤさん!」
「れい殿か。すまない。私は…」
「その姿は?」
遠目で見た時は黒髪ぐらいしか気にしなかったが、近くで見てみれば服は騎士の鎧では無くスーツになっており、その顔は目の下にくまができ、とても疲れている顔をしていた。
「…これが、私の本当の姿。誰かを守る事も、誰かの助けになる事も出来ない。何の力も持たない、嫌いな私なんだ…!」
ダイヤは俯いたまま悲痛な声で言った。その顔からは大粒の涙がこぼれていた。
「ダイヤさん…。」
れいはどう声を掛ければいいのか分からず涙を流し続けるダイヤのそばに近づき、慰めるように寄り添った。
始めて戦闘シーンのような書き方をしましたがこの短さでも結構大変です。
ちなみにかゆちーと相手の戦力差は「レベル50一人」VS「レベル1複数」と考えて頂けると分かりやすいと思います。




