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「さて、かゆも回収した事ですし、戻りますわよ。」
「その子はどうするの?」
かゆが指すのは先程まで対峙していた少年。変わらずたんこぶ付きで地面に埋まっている。
「放置するわけにもいかないから連行しますわ。まったくなんでこんな所をほっつき歩いてるんだか。」
「ゼロ。知り合いなの?」
「一応そうですわね。あなた達は不用意に近づかない様にしなさい。危ないから。」
ゼロが本を使用すると少年の体が泡で包まれ宙に浮いた。
「ゼロさんって本当になんでもありだよね。」
「かゆ、それはあなたも同じだと思いますわよ?」
「そうかなぁ。」
「それは激しく同意ッス。」
「かゆってそんなにいろいろできるの?」
「そんなでも無いと思うけどなぁ。」
「大抵何でもできるッスからね姉御は。」
皆で話しながら村に向かうと村が全体が大きなドームに囲まれていた。
「何あれ!?」
「もう始まっているようですわね。」
全員でドームに近づき、ゼロがドームに向かって手を向けるとドームに人が通れるだけの穴が開き、ゼロは何も気にする事も無くドームに入って行く。
「早く入りなさい。時間が経てば閉まりますわよ。」
ゼロの一言で、全員ドーム内に移動する。
「ねぇ、ゼロ。何が起こってるの?」
無言で先頭を歩き続けるゼロにれいが聞く。他の二人も気になっているらしくゼロに視線を向ける。
「うーん。説明も面倒ですわね。…簡単に述べますわ。戦争よ。」
「戦争!?」
「国と国の大きな規模の戦争ではありませんわ。ちょっと世界の存続を賭けた小さな戦争ですもの。」
「小さくない!!」
ゼロの簡単な説明にれいはツッコむ。
「えーっと、ゼロさん。もう少し詳しく知りたいです。」
かゆが手を挙げてゼロに説明を求める。
「そうですわね~。もう少し詳しく…。うーん。」
ゼロは腕を組み少し考えた後、思い付いたような仕草をしてから語るようにして説明を行う。
「ある時空に場所が近い二つの世界が存在していました。世界は本来混ざる事は無いのだけれど、片方の世界が他の世界に干渉する方法を見つけました。」
「それって…」
「干渉方法を見つけた世界はもう一つの世界の技術、常識、理論を欲しがりました。簡単に言えば魔法ですわね。だからその世界の侵略を始めました。」
「どういう事っス?」
「現実世界の人達がこの世界に来ている理由は、この世界の技術を盗んで、あわよくばこの世界を乗っ取ろうとしている。そういう事ですよね。」
「かゆはよく分かってますわね。その通りですわ。」
かゆ以外の二人も何となく理解できたようで難しい顔をする。
「勝敗の決め方はお互いの手札が何も使えなくなるまで。どちらかの降参が条件ですわ。」
「手札って…人って事ですか?」
「そうですわ。そしてその手札には私達も含まれますわ。」
れいとギルは驚き、かゆはすでに分かっていたようで質問を続ける。
「私達は仮想現実側って事で問題無いですよね。」
「当然よ。私が頼まれていますもの。」
ドームに入ってから話しながら歩いていたかゆ達は村の入り口に到着。そして村の広場の状況が確認できた。
広場の一角に子供や女性、老人を背後に戦う村の男達とその間に座り込む一人の黒髪の女性。
「ん?あれって団長さん?」
「え?」
かゆの発言にれいが驚く。ダイヤは赤髪だったはずであるが…
「どうしてそう思うの?」
「ん-、勘?そんな雰囲気あるから。」
れいは女性の元に走り出す。
「行っちゃった。まぁ、あっち側はれいちゃんに任せようか。」
「あなたはどうするのかしら?」
「ギルと一緒に前線を助けに行きます。ゼロさんは?」
「私は依頼主に挨拶でもしてこようかしら。私が直接対応する必要もありませんしね。まぁ、一仕事はしていくけれどね。」
ゼロが本を持つと本のページがパラパラとめくれ、次第に本から空に向かって光が浮かんでいき、その光は降り注ぐ様にゆっくりと落ちてくる。
「ゼロさん。これは?」
「『普通を求め続けた者の章』。魔法名『オーディナリマインド』。この領域にいる者の精神状態を普通に動作させる魔法よ。そしてこれは感覚も共に普通に戻しますわ。…本来こういう使い方では無いのだけどね。」
「そう言えばなんかいつもよりしんどいかも。」
「大丈夫ッスか?姉御?」
「うん。戦う分には問題無いよ。ありがとう。」
少しふらついたかゆをギルが支えた。その姿を見ながらゼロは微笑んだ。
「さて、後は任せましたわよ。これだけお膳立てしたんですもの。少し調子が悪いぐらいで負けないでしょう?」
「任せてよ!痛みを感じる相手の扱いは得意だよ!」
「結構怖い事言ってるッスからね!?」
三人は笑い合った後、かゆとギルは前線に、ゼロは別の方向へとそれぞれ向かって行った。
かゆは常日頃身体強化、五感(五官)強化がふよされています。




