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「えーっと、どちら様ッス?」
突如現れたゼロに驚きながらもれいの知り合い、ましてや同じ顔である事もあり、警戒はしないようにしていたギルが聞いた。
「私はゼロ。この子に作られた人造人間であり、世間ではよく賢者とも言われますわね。」
「え!?」
ゼロが話し始めてから顔を前に戻したれいがゼロの自己紹介に再度振り返ると肩に置かれていたゼロの手の指が見事にれいの頬に刺さった。
「なにひゅるの。」
「なんか振り返るような気がしたからついね?言ってなかったかしら?」
「聞いてない!」
すぐに頬ぷにから抜けたれいがゼロにポカポカしているのを見ていたギルが再度確認する。
「えっとよく分からないッスけどとりあえず仲間って事でいいんスか?」
「ええ。その認識で問題無いですわ。ごめんなさいね?あなたの英雄様を横取りするような真似をして。」
「あんたのせいッスか!!」
二人の会話を聞いていたれいがゼロに疑問を問いかける。
「ねぇゼロ。英雄様って?命の恩人とかじゃなくて?」
「そりゃ命の恩人ッスけど…。」
ギルは少し照れながら頭をかいている。
「あら?話してなかったかしら?あの子元の世界では世界を救った英雄と言われていますのよ。」
「聞いてなーい!!」
三人がごちゃごちゃしているのをずっと見ていたダイヤが恐る恐る話かける。
「あのー、すまない。我々を忘れないで頂きたいのだが。」
「あら、ごめんなさいね。こうしていればすぐにあの子が合流すると思っていたのだけど。…少し遅すぎるわね。」
最後にゼロが呟いた瞬間、森の方面から大きな爆発が起こった。
「姉御!!」
ギルが森に向かって飛び出す様に駆け出す。
「ギルさん!?」
「何かあったのかしらね。れい!あなたもついて来なさい!そこのあなたはここでこの連中を見張っておきなさい!すぐにでも事態は好転しますから安心なさいな!」
「あ、あぁ。分かった。」
ダイヤをその場に残し、三人はかゆが居るはずの森に向かう。向かう途中でも爆発音が響き続ける。
「姉御…どうか無事で!」
「かゆ…!」
(この世界であの子に対等に挑める相手はいないはずですけれど…)
段々と賊のアジトの入り口に戻って来た三人の目に映ったのは真っ黒に焦げた木や岩肌とかゆともう一人の間に飛び交う魔法と小道具だった。
「いいぜ!いいぜ!お前本当に強いな!もっと殺り合おうや!」
「くっ!」
相手の少年から無数のフォークと黒い魔弾が飛び、かゆはそれを避けたり色んな属性の魔法で相殺している。
「姉御が押されてる!?」
「大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないッス加勢しないと!」
「その必要はありませんわよ。」
ギルが戦場に飛び込む前にゼロが静止する。
「ゼロ?」
「えぇ、必要ありませんとも。…本当に。」
そう言うゼロは顔を俯かせ、体は大きく震えている。
「だ、大丈夫?」
「大丈夫よれい。ちょっと…ブチ切れそうなだけですわ。」
顔を上げたゼロの顔は怒りに満ちており、右手で杖を地面に刺し、左手で開かれた本を浮かせる。
「詠唱強化!『雷を愛し、愛された男の章』!」
ゼロの詠唱後、夕焼けの空から突如太い雷が戦っている二人の間に落下し、地面に大きな穴を開けた。
「うわぁ!」
「ちぃ!」
二人は共に反対方向に避け、術者を確認する。
「ったくどいつだ邪魔をする奴は…ってげぇ!」
「ぜ、ゼロさん。」
二人が見つめる先にいるゼロからは赤黒いオーラが立ち昇っており、その後ろにいる二人も大分引いている。
「私の愛し子に随分とまぁやってくれましたわねぇ。えぇ?」
ゼロが喋りながらもゆっくりと少年の方に歩いて行く。
「おおお落ち着こうぜ賢者様!こいつがあんたの知り合いだなんて知らなかったんだよ!な!別に殺す気も無かったしよ!な!ふ、不可抗力ってやつで…」
「もし死んでいたらどうするつもりだったのかしら?」
「だから別に殺すつもりは無かったって…」
「私にその程度の嘘が通じるとでも?」
「は、ははは。ばれてら。」
少年の前に着いたゼロはにっこりと微笑む。少年の方もまた顔を引きつらせながら微笑む。次の瞬間少年が地面に倒れていた。頭に大きなこぶ付きで。
「え?」
「何が起こったッスか?」
「ひえぇ、速い…」
れいとギルには何も見えず、かゆにはゼロが少年を物凄い速度で杖で殴り、少年も物凄い速度で地面に叩きつけられるのが見えていた。
(痛そう…)
杖だけでなく地面に顔面から叩きつけられている為、とても痛そうである。ゼロにはあんまり反抗しないでおこうと思うかゆであった。




