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「賊だー!賊が出たぞー!」
外から男性の叫ぶ声が聞こえてくる。
「何!?」
ダイヤがすぐに立ち上がり、外に向かう。出る前に振り返り、
「れい殿はここで待っていてくれ!」
「私も行きます!」
「しかし…。」
「自衛くらいならできます。かゆが心配なんです。」
「…わかった。私もできる限りあなたを守ると誓おう。」
ふたりは共に声のあった方に向かう。そして到着した時には賊の全員が横に倒れていた。しかし賊は皆敵意を失わず一人の少女を睨みつけている。
「痛みは無いが損傷による弊害はある…か。」
「てめえ、何者だ!」
「ただの通りすがりの冒険者だよ。」
弓を持った少女、かゆは賊の言葉に冷静に答えている。
「くそ!NPCなんかに遅れをとるとは!」
「NPC…ね。」
「かゆ!」
賊の一人と話していたかゆにれいが話しかける。声を掛けられたかゆは振り向き、れいとダイヤがいる事を確認して笑顔を浮かべた。
「あ、れいちゃんに団長さん!お疲れー!」
「これは、あなたが?」
「うん。いや~困っちゃうよね~。聞き込みしてたらいきなり入り込んできて襲い掛かって来るんだもん。つい応戦しちゃったよ~」
「えーっと、それは…弓で?」
「そうだよ?」
何か?というような顔をするかゆにれいとダイヤはポカーンとしていた。
「別に動きが速い訳でも無いし、近づかれても殴るなり蹴るなりすればいいからね。それにこの人達思ったよりも弱かったから安心したよ。」
「俺たちが弱いだと!ふざけんじゃねぇぞ!」
賊が騒ぎ出し、周りの人達が怯える。
「NPC風情が調子乗りやがって!今すぐにでもこの村全員皆殺しにしてやろうか!」
「へぇ、出来るとでも?」
かゆが再び賊に向き直る。その体からオーラを感じた村人達は賊よりもかゆから少し後ずさった。れいも例外ではなくオーラの圧に押された。
「どうした?れい殿?」
「いえ、私もかゆのあんな感じ、まだ見た事無かったので。」
「?」
ダイヤには特に効いていないようで、それは賊達も同じ様だった。
「なんだよ!やんのか!」
「圧も感じない…と。面倒だなぁこういう相手は。ゴーレムでも相手してるみたい。」
「ゴーレムだと!?俺達をどこまでもコケにしやがって!覚えてろよ!絶対にぶっ殺してやる!」
賊はそう言うと懐から何かの結晶を取り出した。
「あばよ!」
そう言うと賊の姿が光の粒子となり消えて行った。
「転移石か!面倒な物を!」
他の賊も同じ様に消えていく。
「くそ!逃がしたか!」
「あんな物までちゃんとあるんだ。面白いね~」
「いいの?かゆ。逃がしちゃって。情報を聞き出すチャンスだったんじゃ。」
「いいのいいの。相手にわざわざ情報を与える必要は無いよ。それよりも団長さん。ちょっとお話したい事があるんだけど、いいかな。」
「あ、あぁ。わかった。一度テントに戻ろう。」
村人達が安心して元の生活に戻って行く中、かゆとれい、そしてダイヤはテントに戻って来た。
「それで、話というのは?」
「聞き込みをして分かった事と確認をね。あ、これから話す事は他言無用でね。騎士団の人達もだよ。」
「…分かった。しかし何故騎士団まで?人数は多い方がいいのでは?」
「ちょっと団長さんには悪いんだけどね、この騎士団…正直騎士団じゃ無いよ。誰も信用出来ないぐらいにはね。」
「なっ!?」
「かゆ!?」
かゆの言葉にれいは咄嗟に言葉を返す。
「ねぇかゆ!いくらなんでも失礼だよ!」
「いや、れい殿。私は問題無い。聞かせてくれかゆ殿。何故騎士団では無いと?」
れいはダイヤになだめられ大人しくなり、それを見てかゆは話を続ける。
「まず確認から。団長さん。騎士団の人達って皆団長さんと出自が同じですか。」
「それはつまり…」
「あちらの世界の人達なのかって事だよね。」
「あれ?もしかして話しちゃった?」
「うん。ダイヤさんなら大丈夫だと思って。」
「うーん。まぁ一人ぐらいならいっか。」
かゆが少し困り顔になっているが話は続く。
「それで、どうかな団長さん。」
「うむ。騎士団の中では一部この世界の人達もいるが、今回この村に来たのは全員同じ出自だ。」
「なるほどね。じゃあ何も間違いは無さそうだね。」
「それでは聞き込みの方では何が分かったのですか?」
「元々ギル君について聞いて回ってたんだけど騎士団についても話されてね。恐喝、脅しは数知れず、中には強盗、無銭飲食もされた事があるって。そんな人達って盗賊と何が違うんだろうね。」
「彼らはそんな事を!?」
「団長さんの耳には入らない様に脅されてたらしいよ。」
「どこまでも卑劣な…」
「しかも近々何か起きるって話を聞いた人もいるらしいね。」
「何か?それは一体…」
「何だろうね~?まぁ話はこんな所かな。じゃあ私は村の周りを見てこようかな~」
かゆは立ち上がりテントから出て行った。れいも立ち上がりかゆを追おうとするとかゆが戻って来た。
「あ、れいちゃんは団長さんと一緒に待ってて。私だけで大丈夫だから。」
「え、でも…」
「私の事は気にしないでれいちゃんが出来る事をして。じゃ!団長さんよろしく~!」
そう言うとかゆは再びテントを飛び出して行った。




