人を呪うと云う事
「と云う事は【呪い】で幸福にも不幸にもなれるって事になるよな?自分の幸福を願うのは分かるんだが、自分の不幸を願うって云うのはどういう事なんだ?」
とー。
私は問う。
「そう考えるのは、君の主観で考えているからだよ。君は人でなしなんだから、その考えには至らないだろうけど…。そうだなぁ…。例えるのなら…。愛する人の為に自分の命を捧げる。そんな【自己犠牲の愛】だってあるだろ?自分は不幸になっても良い。相手が幸福になれるなら…。みたいな。」
そう彼は返した。
そしてー。
「だけど。相手の不幸を願う事も出来るんだよ。」
と言った。
「なるほど。相手の不幸は自らの幸福になるのか。」
私は気侭に言葉を放つ。
すると彼はー。
「【呪い】にも様々な種類があるんだよ。」
と言い。
「1。お互いが幸福になる。」
「2。お互いが不幸になる。」
「3。自分が幸福になり、相手が不幸になる。」
「4。自分が不幸になり、相手が幸福になる。」
とー。
言葉を紡いだ。
「なるほど。俺が考えていた【呪い】は相手が不幸になる事で自分が幸福になる。って事か…。」
「そうそう。それでね…。不幸への傾きが振り切れば【死】に繋がる事もある。特に人間の持つ【負の感情】は、思っているよりも深いからね…。」
彼の瞳が少し艶を失っているかの様に見えた。
「そこまで云うって事は…。人を呪い殺せる【呪い】を、君は知っているんだよな?」
私はー。
人でなしだ。思った事を思った儘に言葉にする。
「知っているけど教えないよ。どうせ禄でも無い事を考えているんだろ?いいか。世界には知らない方が幸せな事もあるんだよ。特に君の様な人間にはね…。」
彼は煙草に火を点ける。
煙を吸い込み、吐息と共に煙を吐いた。
その煙はユラユラと部屋を漂った。




