境界線
「人を呪った事ある?」
そう。私は人非人だ。
何の脈絡もなく、相手の気持ちを読み取る事もせずー。
想った事を思った儘に口にする。
「呪った事?あるよ。」
倉木はミルクティーを飲みながらー。
小難しい本を読んでいる。
「あるの?」
私は間の抜けた言葉を出した。
「あるの?って何だい?何で不思議そうな顔をしてるの?聞いてきたのは君でしょ?それは誰だってあるよ。」
彼は涼し気な顔で語る。
「誰だってある?そんな事をしてたら、あっという間に人間は滅亡するだろ?俺は人を呪った事なんて無いな。」
「呪った事が無い?君は人でなしだろ?何を根拠に、呪った事なんて無いって言い切れるんだ?僕は不思議で仕方ないよ…。」
彼は溜息混じりに、そう言った。
「だって…。呪いにかけられたら人は死ぬんだよ。」
そう言った私に対して彼は呆れ顔を浮かべている。
ちょっと待て…。彼はそう云って少しの間を空けてから。
「君の中では、【呪い】イコール【死】って事?」
と続けて、また溜息を吐いた。
「えっ?そりゃそうだろ?【呪い】だよ。【呪い】」
倉木はノートを取り出しペンで書き込む。
【呪い】
【呪い】
と2つ言葉を並べた。
「さて。上は何?」
上の【呪い】をペンで指す。
「言ってる意味が分からないんだが…。」
だろうね。と微笑みながら言った。
「どっちがどっちでもいいんだけどね…。」
そう言ってペンを走らせる。
【のろい】【まじない】と書き込んだ。