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強制的な搾取


「例えばだよ。【生への渇望】を極限までに引き出したのなら…。それは強力な呪物に成り得る…。」


強制的にって事?と私は訊いた。


「そうだね。【生への渇望】を強制的に引き出す。」

と彼は言う。そしてー。

「日本には【犬神】と云われる【呪い】があるんだよ。」

と続けた。


「あぁ。さっき【蠱毒】の犬蠱の話の時に言ってたヤツか。」


「そうそう。【犬神】は1匹の犬を用意すれば良い…。」

彼の瞳は暗く深い。


「なんだ。それなら俺でも集められるな。」

私は思った事を思った儘に言葉にした。


「そうだね。1匹だけで良い。だけどね…。」


「だけど?」


「【犬神】を創るとするのなら、人の心を棄てなければならないんだよ。いや。既に人の心が無いから、其れが実行出来るんだろうけど…。」

彼は指を顎に添え、何かを考えているかに見えた。

そしてー。

また言葉を並べる。

「生きる事は喰らう事と、さっき言ったよね?【犬神】を創る為には、その喰らうと云う行為を奪うんだ。」


「奪う?つまり、それって…。」


「強制的に飢餓状態にするって事だよ。そうするとね。【生への渇望】が極限迄に引き出される。」


私は【犬神】の創造方式を想像をする。想像をしてはみたのだが…。答えらしいモノは浮かんではこなかった。


そんな私を見て彼は言葉を紡ぐ。


「1匹の犬を首だけが地上に出る様に、それ以外を地中に埋める。または支柱に繋ぐ。そうする事で行動を【制限】するんだよ。そしてー。食料をギリギリ届かない位置に置く。飢餓状態が続くと、犬は(よだれ)を垂れ流し、血眼となり、必死に(もが)き、死に物狂いで喰らいつこうとするんだ。其れを何日も続ける。犬は水も食料も与えられずに、飢えて衰弱していく。極限迄に飢餓状態となり、今、まさに死ぬであろう瞬間に、其の犬の(くび)()ねるんだ。すると、その犬の頭部は食料へ喰らいつく。そして…その頭部が【犬神】へと変貌するんだ。」


部屋の隅にある埃を被った壺の内側からー。

ガサゴソと音が響いていた。

幻聴なのだろうか?それにしても、その音が余りにもリアルに聴こえるのだった。その想いを払拭するかの様に私は問う。


「違和感があるんだ。変貌と云ったよな?つまりは(かたち)が変わるとでも云うのか?」


気付いたかい?と彼は冷めた笑みを浮かべた。そんな彼の表情を見せつけられた私は…。脊髄に冷えた金属を流し込まれたかの様な感覚に支配されたのだった。



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