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ツカサの退屈しのぎ  作者: J. E. Moyer
9/19

金魚すくい

Episode #9

「金魚すくいが出来るで」とヒロちゃんに言うと


「どこでよ?」


「駅前の通りに雑貨屋のおっちゃんが出しとるで。網ひとつが5円やて」


おっちゃんはある洋服屋の窓の下に大きな水槽を置いています。


その中には 和金が200匹位泳いでいて、針金で作った輪に和紙を貼った網が、"五円"と書かれたダンボール紙の下の棚に並べてあります。


「おっちゃん、私ら初めてやから練習用に5円で網2つくれるか?」と司は交渉を始めました。


このおっちゃんは色んな商売に手を広げていて、以前にお芋を売っていた事もありました。司はその時お芋をネギった事もあるので、おっちゃんも司の手を見抜いて


「5円でも安いもんやで。10匹釣ったら2匹持って帰らしたるがな」とニヤついているのです。


司もヒロちゃんも直ぐに網を破ってしまったので


「おっちゃん、これは詐欺やで!」と文句を言う司に


「網は斜めに入れて、斜めに出さんとあかんで」とアドバイスをくれました。


『なんで初めから言うてくれへんのんよ!』思いながら,又5円で網を買いました。


今度も1匹を捕まえようとすると網の真ん中に大きな穴が開いて、金魚が逃げてしまったのです。


ヒロちゃんは興味を無くして、もう帰りたいみたいですが、司は1匹でも捕まえる迄は止めたくないのです。


司のお小遣いは一日20円なので、10円で金魚すくいをして、あとの10円でたこ焼きを買うことに決めました。



次の日から毎日金魚すくいに精を出す司は、網を少しずつ濡らして行くと長く持つことがわかりました。


数日で10匹は軽くすくえるようになり、放課後は毎日金魚すくいに行くのが司の新しいスポーツになっていました。


司には、"度が過ぎる" と言うコンセプトが無いので、ブレーキの無い車のようにドンドンと金魚すくいに熱を上げて行きました。


金魚は、すくう角度によって跳ねたり跳ねなかったりする事を知っていった司は、90%の網が破れていてもまだ何匹も釣れる事を知っているのです。


その上、興奮している金魚は避ける事も大切です。


毎日金魚を見ていると、どの金魚が次の獲物に適しているのか分かっていきました。これらが司の奥義なのです。


約1ヶ月経つと5円で57匹釣って、おっちゃんもビックリする程の達人になっていたばかりか、近所の子供達が見に来ていて、司の横で金魚すくい競争が激化し始めていました。


大人達も何事かと覗く様になり、おっちゃんのビジネスも繁盛していました。



男の子を連れた父親が


「こんな網では釣れないだろう」と言うと


「この子見てみいな、5円の網でこんだけ釣ったで」と司を宣伝に使うのです。


それでその男の子も網を買ってもらい、直ぐに破ってしまって泣き始めました。


そうなる事を推測していた司は


「おっちゃん、私を宣伝につこてんから、もう一つこの子に網やって〜な」


と言うと、おっちゃんは その男の子に網を手渡したので


『このケチなおっちゃんが...』と司はびっくりしたのです。


つづく

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