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ツカサの退屈しのぎ  作者: J. E. Moyer
16/19

のさ弁

Episode #16

佳子ちゃんが 【のさ弁】の事を教えてくれました。


のさ弁は、各言葉の中に"のさ"を入れながら喋るのだそうです。


例えば、「元気ですか」は 「げのさんきでのさすか」と発音します。



司は早速のさ弁の練習を始め、毎日自転車を走らせて町の隅から隅まで行く時に、独り言の様に、のさ弁を喋るようになりました。


二週間もすると、のさ弁がペラペラになり、凄いスピードで喋れるようになっていました。



ある日学校の講堂で集会があった後で、各組が順番に退場して行く途中に、前のクラスが渋滞した為、司のクラス(5組)の退場が立ち往生してしまった時、6組の女子達が5組対して文句を言ったのです。


「順番待たんとしゃあないで」と言う司に、一人の女の子が、のさ弁で司に食ってかかるように文句を言い始めました。


周りの男女は、その女の子が何を言っているのか分からないので、びっくりした様にその子を見て、そして司を見て


『さあ、どうなるのか?』と言った表情をしています。


司は、初めてのさ弁を喋る機会に出会えて嬉しかったので、のさ弁で返事をしたばかりか、その子よりペラペラと喋れるのです。それを見たクラスメイト達が喜んでしまい、そして司の周りに集まり、その女の子の前に立ちはだかったのです。


その女の子は完全に負けている事が明らかになったので、彼女のクラスメイト達は横を向いています。


男の子達は、女の子の喧嘩には口出ししたくないので、知らん振りしています。



その女の子の名前はエリちゃんだと後で知りましたが、その日以来、司がエリちゃんの敵になってしまったのです。


ローカですれ違うと、司に対しての嫌味を彼女の友達に、大声で言っています。


大声で鬱憤を晴らすタイプの人間に初めて出会った司は,


『ほんまに嫌な人間やで。 自分から挑戦しとって... 負けたないんやったら何で挑戦するんよ』と思っていました。


『こんないけずな子はケンバン筋に住んでへんかって良かったで』とも思っていました。



自分の知恵を使って人を蔑む事に使うエリちゃんみたいな子もおんねんなぁ、と知ったのです。


司がのさ弁を知らなかったら、エリちゃんがのさ弁でどんな事を言い回して笑っていたか分からない、と思うだけでゾッとするのでした。



佳子ちゃんにもこの喧嘩の事が耳に入ったようで、「よかったなぁ」と言って、自分が勝ったみたいに誇らしげに司を見ているのです。




つづく

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