サーカスがやって来た!
Episode #12
町の大きなグラウンドにサーカスが来ました。
赤と白のストライプの大きなテントが立っているのを見つけた司は、早速テントに近づきその隙間から中を覗き込んでいると、後ろから
「中みたいか?」と男の子の声がします。
振り返えると、5年生くらいの男の子が立っています。
「うん。見せてくれんの?」
「中に入っておいで」と言って、テントの裾をめくり上げてくれました。
「あんた、ここの子?」
「そうや」
「ふ〜ん... あんた学校行きよんの?」
「うん。」
「何処の学校よ?」
「行く町の学校や」と言いながらテントの真ん中に歩いて行きます。
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テントは広々としていて、一組の男女が空中ブランコの練習をしている空間の下には網が張られています。
練習していた女性が網の上に落ちて来て、二回ほど気持ちよさそうにバウンスしました。
彼女は、その網から地上に降りて来て、司と一緒に立っている男の子と喋リ始めました。
白いタイツとショーツ姿で、バレーシューズの様な靴を履いている姿は司にはとても刺激的で、
『あんな格好して空中ブランコしたいなぁ』と思っていました。
その女性が去っていくと、男の子は上を向いて、男性に手を振っています。
「あんたのお父ちゃん?」
「そうや」
「さっきの女の人は、あんたのお母ちゃん?」
「そうやで」
「あんた、サーカスの中で生まれたん?」
「そうや。僕だけと違うで。他にも友達がおるしなぁ」
「あんたもサーカスに入るのん?」
「たぶんな」
「ふ〜ん... あんたの名前は何よ?」
「マサトシ。君は?」
「私、司」
「動物が見たいか?」
「ゾウが見たいで!」
「そうか。今から見せたるから、後ろのテントに行こか?」
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大きなテントを出て、動物のケージが入っているテントに行くと、数人の飼育係の男性が馬の世話をしています。
その一人が手を振って
「オーッ! マサちゃん、そこのブラシを持って来てくれるか?」と言っています。
マサトシが馬に近づき、顔を撫でながら司を呼んでいるので、司は恐る恐る馬に近づきました。今まで馬を見た事の無い司には、触るだけで十分で、好き嫌いと言う評価をするまでは行きません。
ゾウは思ったよりも小さく、動物園で見たゾウとそっくりでした。
『このゾウもピーナッツが好きやろか?』と、動物園のゾウに、父が買ってくれたピーナッツを投げた事を思い出していました。
▪ ▪ ▪ ▪ ▪
「あんた、何処に住んどんの?」と聞くと
「あっちや!」とグラウンドの北側にあるテントを指差し、司を連れて中に入って行きました。
そのテントは、大きなテントの直ぐ横にあり、住居兼、化粧室兼、衣装室で、サーカスのメンバーが忙しく動き回っています。
化粧をしている男性を見たのは初めてなので、ジッと見ていると、向こうも変な顔をして司を見ているのです。
みんな筋肉がモリモリとしていて、
『町のおっちゃんらとは大違いやなぁ』と思いました。
「マサトシちゃん、又明日も来てええか?」
「ええで。明日は友達に会いたいか?」
「うん。会いたいで」
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次の日に三人の男の子に出会った司は、その子達の親切さと、明るい笑顔におったまげてしまうのです。
そして、町の子に無い純粋さを目の前にして
『サーカスは魔法の世界やろか?』と思い、彼らが居なくなってしまうと
『淋しいなぁ』と悲しくさえなるのでした。
つづく




