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偽物の愛の何が悪い

作者: 堕多雫

スランプ気味ですが、ふと思いついたので書きました。

「ギルバート殿下、ウィスタリア嬢との婚約は破棄されるべきです」


そろそろ除草剤を撒くべきかな。

目の前には将来自分の側近になる予定だった者たちと彼らに守られるように立つ少女がいた。


「彼女は由緒正しき公爵家の令嬢であり、陛下が信頼する臣下の娘でもある。それに加え厳正な審査にも通った優秀な女性だ。だからこそ私の婚約者に選ばれた。故に聞こう、なぜ婚約を破棄すべきだと?」


「そ、それは彼女が殿下の婚約者たる行動に相応しくないことをし始めたからです」


「殿下!わ、私ウィスタリアさんに虐められていて…怖くて!」


うるうるとした目で見つめられる。この男爵令嬢が学園に来てもうすぐ一年。どうやら礼儀作法は身につかなかったらしい。

こめかみに手をあてて友人であった者達を呆れた眼差しで見る。


(まったく恋は病とはよく言ったものだ。身体的なものより遥かに治しにくい)


どいつもこいつも愛おしそうに儚げに見える彼女を見ている。確か婚約者と同じく、側近を選ぶ際も吟味したはずだが甘かったかもしくは。


「リゼスが君をねぇ…それは本当かい?」


「ええ!ミリーの制服が汚されていたり、茶会に招待されていません。更に暴言まで言われていました!」


「暴言、それはどんな?」


「み、みだりに婚約者のいる方々と触れ合ったりするものではないと…私はただみんなと仲良くしたいだけなのに」


「なんだ、問題ないじゃないか」


「えっ」


リゼスが虐めたと聞いて彼女がわかりやすいことをするのかと思ったが、やはり違ったようだ。

賢い彼女はそんなことはしないし、やるとしてもそんなものではすまさない。


「殿下!問題ないなど、あの女はミリーを侮辱したのですよ!?」


「口を慎めオスカー。お前こそリゼスを侮辱することは許さない。私が問題ないと言ったのは彼女が常識的なことしかしていないからだ」


「ロゼット嬢、君は私と彼らの会話に割って入ったようにあまり礼儀作法が身についていないようだ。そんな君を令嬢たちの茶会に招くわけにはいかないだろう。暴言については言わずもがなだ」


「で、でも制服を汚されて…母の形見も盗まれたんです」


「それがリゼスの仕業だという証拠は?」


「そ、それは」


証拠もなしに糾弾か。自分の側近候補がこんなお花畑の頭になってしまったとは。

彼らは目をしばらく泳がせていたが、やがて決意したように訴えだした。


「で、ですがギルバート殿下、やはりウィスタリア嬢とは婚約を破棄すべきです!我々はミリーと出会って気づいたのです。政略結婚ではない真実の愛を!殿下はウィスタリア嬢を愛しているのではないのでしょう!?」


「ふむ、確かに私は異性としてリゼスを愛しているわけではない」


「それなら…!」


「だが、それの何が悪い?」


もう潮時だ。

鈴を鳴らすと、直ぐに騎士たちがなだれ込んでくる。彼らは直ぐに拘束され、私の視界から消えた。




「まぁ、そのようなことがありましたの」


さして驚いた様子もなく、静かに紅茶を飲む婚約者。やはり既に知っていたか、彼女の情報網は侮れない。


「それで、彼女たちはどうなりましたの?」


「もう知っているだろう?ロゼット嬢は学園を退学。オスカーたちは私の側近から外れ、彼らの親たちから鍛え直しだ」


「妥当でしょうね」


軽いように思えるだろうが、これでロゼット男爵家は貴族界から追放されたといっても過言ではない。学園の卒業は全ての貴族の義務。退学になったということは貴族位を剥奪されるようなものだ。

新たな側近候補は彼らが男爵令嬢に夢中という噂が出た時点で探し始めていた。もともと身分に拘らず優秀な者を採用したいとは思っていた。今回のことで反対派は捻りつぶせる。


「それにしても、真実の愛ですか。確かに愛し合うのが真実の愛ならば私たちの関係は偽物の愛といえるのでしょうね」


「まったく真実の愛が正義だとでも思っているのか」


真実の愛が有効な場合はある。ロマンスが感じられて国民の支持が得やすいという点だ。しかしそれだけでは家、国は繁栄しない。

あの男爵令嬢の行動は相手と程度を考えれば、黙認されていたものだ。いわゆる自分より格上の愛人程度であれば許された。


自分は国を愛している。そのせいか恋愛感情というものがよく分からなかった。

初めて婚約者であるリゼスを見た時も、美しいんだろうなという感情しかわかなかった。

それは彼女の方も同じ。


「ところで殿下、知っておりますか?隣国であるロマンス小説が流行っていることを」


「嫌な予感がするね」


「そのロマンス小説と全く同じようなことが隣国で起きたようですわ。そうしたらあら不思議、結果は我が国とは違い小説と同じようになったみたいですの」


ころころとまるで鈴を転がすように笑うリゼス。時折探るような視線を向けるのは彼女の悪い癖だ。

自分の婚約者がどうするのか試すように観察する視線。そしてそれに基づき、あるいは基づかなくても国のために彼女は行動する。

リゼスに釣られたように、こちらも笑う。

これだから彼女は手放せない。


「さてさて、まずは情報収集かな」


真実の愛でなくとも、何も問題はない。

偽物の愛の何が悪い。



一応続きがあるような感じで書きましたが、書けるか分かりません…。

すみません…。

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― 新着の感想 ―
[一言] 長さ的に短めなのもあって,中途半端感は確かに強いかなと。 それにしても,(元)側近候補は目上に対して恋愛の押し売りですか(^^;
[良い点] すらすらと、楽しませていただきました♪ ありがとうございます(* >ω<)
[一言] ミリーに妃としての教育を受けさせたら一日も持たなかったでしょうね。 本当に偽物の愛のどこが悪いのでしょうか。恋愛結婚だからといって、必ず添い遂げられるとも限らないし。 ミリーの場合はその立場…
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