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バッドエンドは全力でぶち壊す!  作者: 血迷ったトモ
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第4話 脇役

私はモブです。

「という事は、登場人物の誰かに乗り移ったのか?けど、俺と同じ名前の奴なんて、居た記憶無いんだが…。」


翔太の動画を見たばかりなので、記憶は新しい筈だが、思い出せる中に、雄貴という名前は無かった。


「少なくとも、主人公グループじゃないって事か?ようするに、ただのモブ?」


軽い眩暈を覚える雄貴。ただでさえ、他人の身体に入り込んでしまったという事に、結構なショックを受けていたのに、更に追い打ちをかけるかのように、ゲームの世界に入り込んでしまったと判明したのだ。仕方が無いだろう。


「このままモブで過ごしてても、1周目のプレイヤーがハッピーエンドを迎えるのは結構難しかったし、バッドエンドまっしぐらだよな?実際に翔太も、哀れなくらいに綺麗にバッドエンドをむかえてたし。」


『ウラデリ』でバッドエンドを迎えるという事は、NHSと対立する、六通学園で育成される生徒達、すなわちヒロイン達最高戦力が、使い物にならなくなる(・・・・・・・・・・)事を意味する。

即ちそれは、NHSによるテロ活動がしやすくなる、という事である。


NHSのテロ活動が盛んになれば、モブである雄貴の命など、軽く消し飛ぶ事件が、大量に発生してしまう。それだけは、何としてでも避けねばならなかった。


「俺がいつ戻れるのかは分からんが、その前に死んだら、この身体の雄貴にも悪いし、何より陽子さんにも申し訳が立たないよな。」


10年前に、夫と死別したらしく、その後は1人で雄貴を育ててきた陽子さん。そんな彼女の、たった1人の大切な存在を、乗っ取った分際で奪う訳にはいかなかった。


「さ〜てと。何がなんでも生き残るって事で、方針は決定だな。その為にはまず、情報収集と、身体を鍛えるところからだな。」


じっと画面を見つめていた顔を、パッと上げて呟く。


「さてその前に、課題をさっさと終わらせないとな。」


そして、課題をやろうとしてふと気が付く。


「あれ?どれをやれば良いんだ?」


これでは先が思いやられてしまうが、何にせよこの世界での目的が、しっかりと定まったのだった。

<hr>

ー頑張って生きよう。そう決意したのが約1週間前だけど、何だこのクソったれな状況は!?ー


時間は少し遡る。


8月10日の朝、陽子さんと雄貴は郵便局に居た。何か両親に(この場合、雄貴にとっては祖父母)送りたい物があるらしく、訪れたのだ。


窓口で手続きをしている陽子さんを眺めながら、雄貴はぼんやりと辺りを見回していた。


ー内装はあんまり変わらないな。ポスターとかが少なくなって、代わりにデジタルの掲示板があるくらいか。ー


近未来という事で、何か自分の知らない、あっと驚くような、そんな何かがある事を期待してたので、少し残念と思ってしまう。


だが、そんな呑気な気分など、一瞬で吹き飛ばされてしまう出来事が、大きな破裂音と共に起こってしまう。


『ズガァン!!!!!』


「きゃあ!」


誰かが悲鳴をあげる。


「!」


その激しい音に、雄貴はびっくりして動きを止めてしまう。


その直後、図太い声が、郵便局内に響き渡った。


「全員、その場から動くな!!動いた途端、それが最後だと思え!!」


大声により、硬直から解けた雄貴は、恐る恐る声の主の方に、目だけ動かす。


ー…マジか。こんないかにもな強盗犯、絶滅危惧種だって、ネットの情報ではあったのに!ー


雄貴の視線の先には、入口の近くに立ち、ショットガンみたない銃を天井に向けている、覆面の男が1人立っていた。

その姿は、どこからどう見ても、強盗犯以外の何者でも無かった。


次に、雄貴は陽子さんの方に視線を向ける。すると彼女は、恐怖に怯えた様子で、こちらを見ていた。


ー取り敢えずは、まだ誰も傷付けられてないか。だが、ここからが問題だ。アイツが、一体どんな要求をしてくるのか。そして、人質である俺たちの扱いは、どんな風になるのか。ー


考えても無駄だというのに、雄貴はありとあらゆる事態を想定してしまう。それだけ、彼自身も恐怖と緊張で、正常には考えられなくなってるという事である。


「一人一人、俺の指示に従って黙って動け!まずはそこのお前!あとそこのお前!あっちの机の方に行け!」


指差して指示する。どうやら、郵便局に居る人達を、一纏めにしておきたいらしい。営業が始まってすぐで、そこまで混んでおらず、今は受付で対応してもらってる利用者が多かったので、その近くに置いてあった机付近に集めて、監視するつもりらしい。


「次は、そこのガキ!大人しくあっちに行くんだ!」


「…。」


動かす人数を、少人数にするつもりらしく、次は雄貴の番であった。


ここで犯人に抵抗するという、現実味の無い選択肢は持ち合わせて無いので、雄貴は大人しく従う。


足が震えそうだったが、犯人に、怯えてるとでも思われても癪なので、努めてしっかりとした足取りを意識して、指示された場所、即ち不安そうに雄貴を見ている、陽子さんの元へと向かう。


「次は…おい、そこのお前だ!」


「ひぃっ!」


雄貴がまだ歩いてる最中だが、子供だからと甘く見たのだろう。

次に移動させる者を選んだが、今までとは違い、小さな悲鳴が聞こえた。


「…。」


ーいや、黙って指示に従えって、言われたじゃんか!ー


雄貴は驚いて、歩く速度を少し落として、悲鳴の主を見る。


ー外国人の女の子か…ん?どっかで見たような…。ー


金髪碧眼の同い年くらいの女の子で、ただ可愛いだけでなく、どことなく気品を感じる子だ。


―そう。良く目立つので、何かのパッケージの、メインに据えられてても、違和感を覚えるどころか、当然と思えるような女の子だ。


ーあぁぁぁぁ!あの子、『ウラデリ』のメインヒロインの1人の、シンシア・リトルトン!何で彼女がこんな所に!ー


パッケージよりも、幼い (本編開始4年前だから当然である)が、雄貴はシンシアであると認識した。正直、外国人の顔を、正確に判別出来るかと言われれば、自身は無いが、この時ばかりは直感で理解したのだ。

メインヒロインの1人が登場です。

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