第28話 ストレス発散
人の心は、中々操れませんね。
4月20日土曜日。朝から悲痛な面持ちの雄貴は、ベッドの上で頭を抱えていた。
「あぁ〜、何でさ!」
どこぞの正義の味方志望の少年の口癖を叫ぶ。
この世界にそのゲームは無いので、聞かれた所で誰にも分からないであろうが。
その原因は言わずもがな、ヒロインズ達の動きが、全く制御出来ない事にある。
まずシンシアについてだが、彼女は悠人に対して、他の人と全く同じ接した方をしており、欠片も興味があるように見えない。
今は亡き、命懸けで救ってくれた少年への想いはどこやったんだと、小一時間問い詰めたい。
次に由橘乃だが、模擬戦のお陰か悠人に対する鬱憤が晴らせたようで、あれ以来、絡んでる様子を見ない。雄貴に対しては、転んだ際のあれこれを思い出すのか、少し恥ずかしそうに接して来ている。
因みに、悠人へのヘイトは、雄貴が緩衝材となって打ち消した為、他のクラスメイトから嫌われてるという状態は無くなっている。
そして夏帆はあれから、ただでさえ高かった好感度が上昇したのか、雄貴にベッタリとなってしまい、悠人に対しては、普通のクラスメイトと同様の態度で接しており、気になってる風な様子は無い。
夏帆とは、中等部からの付き合いであり、クラスも一緒だったりしたので、本来なら居ないはずの、彼女の精神的支えの一部を担ってしまっていた。その為、元々望み薄であった。
ー夏帆に関しては、そもそも友達として、少し支えちまったのが不味かったよな。恋人として、悠人に支えてもらわなければいけなかったのに。ー
痛む頭を押さえながら、ため息をつく。今更後悔しても遅いのは分かってるが、悔やまずにはいられなかった。
「あ〜あ。今日はもう、何もかも忘れて、少し遊びに出かけるとすっか…。」
のっそりとベッドから起き上がって、軽く身支度を整える。今日はラフに、白の長袖のシャツにジーパンだ。
ストレス発散に、酒でも飲めれば良かったのだが、生憎と身体は未成年である。精神年齢は22歳なのに、お預けをくらった形となっており、それを自覚した時は、少し落ち込んだものである。
まぁ飲めない物は仕方ないので、雄貴は別の事でストレス発散をする事にしていた。
黒のボディバッグをしょって、外出するのだった。
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午前11時、途中のコンビニで、適当におにぎりやらチキンやらを買い込み、食べ歩きしながら目的地へと向かう。
ーお、丁度開店したばっかりか。ここの街の人、あんまり来ないんだよなぁ。面白いのに。ー
駅前の目的地へと到着した雄貴は、手元に残っていたおにぎりを食べきってから、嬉しそうに建物中に入っていく。
中に入ると、耳を劈くような大音量の音楽が、あちこちから流れてくる。
ーう〜ん。やっぱこの世界でも向こうでも、ここは変わらんな〜。ー
今日、雄貴がストレス発散の為に、朝から来たのは、普通のゲームセンターであった。
現在では、あまり見かける事の無くなってしまったゲームセンターだが、ここ、唐科市では、駅前にのみではあるが、数件存在した。
雄貴は元の世界でも、ゲームセンターに行くのが好きだったので、大助かりであった。
主に音ゲーアーケードを中心的に遊び、間にクレーンゲームを楽しむといった形だ。
ー今日は、この間やった洗濯機じゃなくて、空間を切り裂くとか何とかがキャッチコピーの、あれをやるとするかー
具体的な名前を出すと、何故だか怒られそうな気がしたので、それぞれのキャッチコピーで誤魔化す。実は名前が結構な改悪をされてるので、考えると1人で笑ってしまいそうなので、正解だっただろう。
『ウラデリ』のライターがゲームセンター好きなのか、かなり細かい部分まで、元の世界と同じように、ゲームの中でも表現がされていたので、実際にこの世界でも、元を知っている雄貴が、十分に楽しめるような娯楽となっていた。
ーあ〜、やっぱり空いてるよな。俺としては嬉しいけど、何とも言えん気持ちになるな。ゲーセン潰れたら、俺の楽しみが減っちまうしな…。ー
折角、楽しみに来たというのに、気分が落ち込んでしまう。
ーいや、今日は暗い考えは捨てて、頭悪く楽しもう!鬼畜な譜面をやるか!ー
こうして雄貴は、面倒事は忘れて精一杯楽しむべく、|手袋をはめながら(本気モード)、筐体に向かうのだった。
「…な、なんでアイツがここに居るのよ。」
そんな雄貴を物陰から、こっそりと覗う青みがかった髪の少女が居た。その少女は、帽子を目深に被り、パッと見では誰だか分からない。
「にしても、結構上手いわね…。ひょっとすると、やり込んでるのかしら。」
雄貴の様子を見ながら、警戒を解いて、その距離を段々と詰めていく。
「… (そっ)。」
そして、そっと後ろから覗き込む。雄貴の手元は、一般人が見ればドン引きするような動きをしており、ノーツのタップ音はまるで弾丸のように鳴り響いていた。
ーす、凄い。人間を辞めた手の動きだわ。ー
少女は、思わず魅入ってしまう。彼女自身もまた、それなりにやり込んでおり、プレイヤーの中でも普通に上手い腕前なので、雄貴のレベルが頭おかしい事を、瞬時に理解して、驚愕する。
雄貴は気付いてるのか、それともスルーしているのか、彼女に見れたまま、1曲目を終了するのだった。
実は私、結構音ゲーをしてるので、今回登場させました。音ゲーの為に、iPadを買ったくらいです。





