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<残虐王>(ガウザマークーニッヒ ) the save story

  <残虐王>(ガウザマークーニッヒ)the save story

    第1章 残虐王の心変わり

 俺は、自ら望んで残虐な魔王になった。

 不安はなかった。むしろ世界を壊す力が手に入ると知り、気分が高揚していた。

 そして、世界を蹂躙した。心のままに。

 だが、ある日俺の中の何かが蘇った。

 それは俺に何かを語りかけてくる。

 はっきりとは聞こえなかったが、なんとなく理解でき、俺はしてはいけない禁忌の領域に入っていたことを知る。そして、まだ戻れる、ということも。

 俺は蘇った「それ」に従い、世界を元に戻し、残虐王の存在を消し、俺の力と残虐王としての記憶を封印した。自分でもこんなことはせず、死ねるのであれば死にたかった。だが、力によりほぼ不死な体はそうはさせてくれなかった。力を封印しようとすれば力を行使していた頃の記憶が消されるということも知っていたので、どうしようもなかった。

 そうして平和な世界が戻った。だがそれも仮初(かりそめ)の平和に過ぎなかった。

「うわァァァァァァ!?」

 俺は飛び起きた。なにか良くない夢を見ていたはずなのだが思い出せない。俺そっくりな人がいたというのは覚えているが、、、、

 そう考えながら、俺、守野(もりの) 夜狂(やぐる)は背を伸ばした。

「どうしたにぃに!?大丈夫!?」

 そう言いながらポニーテールで赤髪な俺の妹、守野(もりの) 一夜(いちよ)が駆け寄ってきた。    

 「ねぇほんとに大丈夫!?にぃにさっき大声で叫んでたけど体どこか悪くないよね!?」

「悪い夢っぽいのを見ただけだから大丈夫だって!安心しろ!」

 そう俺が言うと、

「良かったよぉ、、、、にぃに元々体調悪いんだから気を付けてよぉ、、、、」 

 と注意してくれる。まったく可愛い妹だ。

 そう考えていると今の時刻が目に入る。

「って今七時ィ!?やっべ遅刻する!」

「にぃに急いでねー!朝食はもう作ってあるから食べといてね!それじゃあいってきまーす!」

「おう!行ってらっしゃい!」

 そう言いながら妹を見送る。

「さぁて、とっとと飯食って学校行くか。」

 今月は四月。学校が始まる月。

 一夜と俺は同じ飛来高校(ひらいこうこう)という高校で俺は三年生、妹は一年生として通っている。そしてお互いともそこそこ学校生活を楽しめている。

「ああ、やっぱあいつの飯はうめぇや、、」

 そう言いながら飯を堪能し、食べ終えると食器を流し台に入れ、仏間に行った。

「親父、おふくろ、行ってきます。」

 そう告げると仏間からでて、玄関へ直行する。両親は三年前に交通事故で死んだ。死んでもおかしくない状況で何故か俺らは生きていた。両親が庇ってくれたからだ。だから両親には感謝している。貯めていた貯金も全て自分たちに送られるようになっていた。普通に暮らせば一生生きれるほどの大金だった。

 今はそのお金を使って生きている。そう考えたら、感謝してもしきれない。

 そう思いながら、俺は学校へ歩いていった。

 学校へ着くと、何やら教室がざわめいていた。耳をすまして聞くと、どうやら転校生が来るらしい。

「よっ!夜狂!」

 誰かが俺に声をかけてきた。

「おお、零士(れいし)か!おはよう!」

 声をかけてきたのは俺の親友、坂蔵 零士

 (さかくら れいし)だった。

「それで聞いたか!?今日転校生が来るらしいんだが、外国のめっちゃ美人の人らしいぞ!?」

「へぇ?お前がそこまで言うなら確かに興味は湧くな、、、」

 零士は重度のオタクでほぼ二次元のキャラしか愛さないのだが、その彼がそこまで言うのなら、確かに興味は湧く。

「ホームルーム始めるぞー!全員着席しろよー!」

 そう言いながら教師が入ってきたので、慌てて席に座る。と、

「えー今日は皆さんにお知らせがあります!なんと、転校生が来ました!もう教室前で待ってます!それでは来ていただきましょう!はい、入ってください!」

 ガラガラと扉が音を鳴らしながらひらき、入ってきたのは、、、、、

「本日より、この学校に入学させて頂くことになりました。アレン ウェルトです。名前を呼ぶ際は気軽にアレンとでもお呼びください。よろしくお願いします 。」

 クラスの全員が息を呑んだ。

 美しすぎる。

 目は大地のような美しい茶色、短めの髪は黄金とも言えるような金色だった。

「えーでは皆さん、仲良くしてあげてくださいね!それでは席なのですが、、、あ、ちょうど夜狂くんの隣空いてますね!そこでお願いします!」

「なっ!?」

 クラス全員が同じタイミングで声に出して驚いていた。そうだろう、なぜなら俺も零士と同じくオタク扱いされているため(実際はそこまでゲームなどに詳しい訳では無い)意外だったのだろう。

 そうして彼女、アレンが歩いてきて俺の隣の席に座り、

「よろしく。」

 と声をかけてきたので

「こちらもよろしく。」

 と返した。

 そして、時間がたち、昼休みになった。

 そして案の定アレンは質問攻めにされていた。

 俺はそれを教室の外から覗いていると、

 いきなり、けたたましくサイレンがなった。

 その直後、とてつもない衝撃が学校を襲った。ガラスは割れ、コンクリートにもヒビが入る程の衝撃だった。俺は窓ガラスを貫通し外まで吹き飛ばされた。背中に強烈な痛みが走る。俺はその場で丸まっていた。

「ぐぁ、、、、、」

 何が起こったのかを痛みをこらえて起き上がり、確認してみる。

 校舎の窓ガラスは全て割れ、コンクリート部分にもヒビが入っているのは同じだったが、一つだけおかしい穴があった。

 衝撃で割れたようには見えず、丸ごとくり抜かれたかのような穴があった。その教室の番号がちらりと見えた。1ーAと書かれたその表記で、全身から血の気が引くのを感じた。

「一夜!!」

 そう叫んで俺は一夜を探しに走る。すると近くで泣き声が聞こえた。

「一夜か!?」

 そう信じてその方向に走った。そして一夜を見つけたのだが、、、、、

 色々おかしかった。

 一夜の周りだけ植物が枯れ、服は黒い何かになっていた。光の帯のような物を纏ったその服は幻想的、だが恐怖さえ覚えさせるような威圧感があった。

「うっ、、、、ぐすっ、、、、、、にぃに、、、、、」

「一夜!?大丈夫か!?」

「にぃ、、、、に、、、?」

「ああそうだ俺だ!来たから安心しろ!」

 そう言って一夜のもとへ行って頭を撫でて安心させようとすすると

「にぃに!来ちゃダメ!!」

「え?」

 一夜の頭を撫でようとした左手の先が消えている。

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあ!!」

 俺は痛みに耐えられず絶叫した。だが妹を落ち着かせなければという思いによりなんとか声を落ち着かせて、

「大丈夫だ、、、、左手の先一本なんざぁ失っても大丈夫だから、一旦落ち着け。な?」

 そう言ってなんとか妹が落ち着いた。

 そしてさすがに傷を放置しっぱなしにする訳にもいかないので服を破り、腕に巻き付け止血した。

「それで一夜、一体何があったんだ?教えてくれ。」

「よくわかんないの、、、、体がいきなり光り始めて眩しくてめを閉じて開いたらこうなってたの、、、、」

「そうか、、、、、」

 ただ頷くことしか出来なかった。人智からかけ離れているこの現象は、俺にはどうしようもない。そう思っていたからだ。

「よし一夜、とりま近くの避難所まで逃げるぞ。ここはおそらく危険だ。さっきから訳わかんない爆発音がしてるからな、、、」

 一夜はこっくりと頷いた。

「その前にその服どうにかした方がいいな、、、、どうにかできないか?」

「やってみる、、、、」

 そう一夜が言うと、何かをイメージしているのだろうか、、、目を閉じ、集中している様子だった。と、考えていると一夜が着ていた服が光り始め、自分たちの高校の制服に変わった。ついでに不可思議なあの現象も止まっている様子だった。

「よし、これで避難所まで行けるな。一夜、疲れたんなら担ごうか?」

「いやいやにぃにの方がやばいじゃん!?私がにぃにを担ぐから乗って!」

「ああ、わりぃそうさせてもらうわ、、、」

 そう言って一夜の背中に乗ると強烈な眠気に襲われた。

「わりぃ一夜、俺一旦ね、、、、」

 俺の意識が、プツンと途切れた。

「にぃに?」

 その言葉が、意識が切れる前にうっすらと聞こえた。

 

 目覚めると、何も無い場所にいた。辺り一面白色、それ以外はなんとも言えなかった。

「どこだここ?まさかこんななんも無いとこが天国じゃねぇよな、、、、」

 そう言っていると、前方に人影が見えた。

「あのーすいません!ここどこか知らないです、、、、か?」

 一瞬、自分の目がおかしくなったのかと思った。だってそこには、俺がいたから。

「お前は過去、償いきれない罪を背負った。お前は、その罪を受け止めきれるか?」

 と、言ってきた。意味がわからない。

「いきなりなんなんだよお前!?なんで俺そっくりなんだよ!?ってかここどこだよ!?」

「ここはお前の消した記憶の空間だ。そして俺はその消した記憶の俺だ。そして、お前はこの質問に答えれば、答え次第によってここから出そう。」

「だから消した記憶ってなん「早くしないとタイムオーバーで戻れなくなるぞ。」

「は!?理不尽だなおい!?で!?さっきの質問に答えろだって!?じゃあ言わせてもらおう!俺は守りたいもののためなら、喜んで受け止めに行くね!」

「フッ、、、上出来だ。俺とは大違いで良かったよ。封印の一部を外そう。お前がこの後で起こることの中でしっかり生きて罪を背負ってもらうためにな。」

 そう俺のそっくりが言うとそいつの右手に漆黒の剣が現れた。大剣のように刀身が長いが、刀のようにすらっとしたフォルムを持つその武器は俺の目の前まで移動してきた。

 まるで「握れ」と言わんばかりに。

 そして、俺はその剣を握った。

「ああ、一つ言い忘れてた。その剣の名は

 <残虐>(クルデッタ)だ。覚えておけ。」

 その声が聞こえたあと、何かに引き上げられるようにして、俺は目覚めた。

「う、、、、ん?」

「にぃに!!」

「おう一夜、すまん俺どんだけ俺寝てた?」

「十分ぐらいだけど寝ないでよ!死んじゃったんじゃないかって心配になるから、、、、このバカにぃに、、、、、」

「すまん、、、、、」

「それでここだけど、家の近くだよ。ちょうど空いてる倉庫っぽいところがあったからそこにいる。」

「わかった。ありがとな、ここまで運んでくれて。」

 そこで左手を伸ばそうとして、気づいた。消えたはずの先の方が綺麗に元通りなっていた。

「え?」

 二人同時に声を出す。

「にぃにどうしたのその手!?元に戻ってるじゃん!良かったぁ、、、、、」

「いやまじでなんでだ?」

 と言って喜んでいたいた矢先、屋根が爆発した。

「なになに!?」

 爆発した天井を見ると、人が空に浮いていた。

「こちらバーミリオン、魔王、<悪食王>(アバドン)と民間人を発見、<悪食王>は弱体化している様子、すぐに始末します。民間人は保護します。」

「なっ!?」

 そこに居たのは、今日転校してきたアレンだった。そして何故か鉄でできていそうな重そうな鎧をつけているのに、空を飛んでいて、困惑した。それよりも、始末、という言葉に嫌な予感を感じてとっさに一夜に覆いかぶさって守ろうとした。

 直後、一夜に覆いかぶさって守ろうとしたはずだが何故か倉庫の入口にいて、一夜の姿が見え、一夜に剣らしきものを向けているアレンの姿も見えた。そして

「この世に害をなす魔王が、死ね。」

 と言い放ち、剣を振り下ろそうとする。

 助けに行かねばと体を動かそうとするも全身に鉄の塊を乗せられたかのように体が重く、動かない。

「あなたはそこでじっとしていてください。下手に動かれると迷惑なので。この魔王はあなたにとっての大切な人であることは理解出来ていますが殺させていただきます。恨むなら恨んでどうぞ。」

 と言いながら一夜に剣を振り下ろしていく。

 どんどん一夜の服に傷がつき、血が滲み始めていた。

「やめろ、、、、やめてくれ、、、、やるなら俺にしてくれ、、、、」

 そう言ったがアレンは気にもしない。

 ああ、自分の無力さが呪わしい。

 力があれば、助けられるのに、、、、

「力が欲しいんならこう言え、<残虐>(クルデッタ)と。」

 どこからか聞こえた声で俺は、あいつの記憶空間にいた時を思い出し、

「それで一夜を助けられるんだな!?」

と叫んだ。すると「ああ。」という返事が帰ってきた。助けられるなら、やろう。そう思いながら、「一夜のことは俺が護る!!」そう決意し、その残虐なる剣の名を呼んだ。

「<残虐>クルデッタ)!!」

 瞬間、体を縛り付けている何かに感覚がなくなり、それと同時にあいつの記憶の空間で見た大剣が目の前に現れる。俺はそれを強く握った。すると、目の前が光に包まれ、眩しくて目を閉じたが、視界がはっきりした後に自分の体を見ると、まるで一夜の服のような光の帯付きの服を纏っていた。不思議と重さは感じない。とアレンの方を見ると顔が驚愕に染まっている。

「なっ!?未確認の魔王!?流石に魔王クラス二体とは戦いたくないですね、、、逃げましょう、、、、、」

「おうおうアレンさんよぉ!?よくも俺の妹を傷だらけにしてくれたなぁ!?俺をキレさせたことを後悔させてやるわ!!ブッ飛ばす!」

 そう叫ぶと俺は<残虐>を構える。そしてアレンに向かって思いっきり振り下ろした。すると凄まじい衝撃波が発生し、その衝撃波がアレンにあたり、叩き落とされた。

「かはっ、、、、」

 アレンがそのように血反吐を吐いたような声を出して呻いている。

「さぁて、もう二度と一夜にこんなことすんな。次はないと思え。」

 そう言ってアレンを置いて一夜とその場を去った。

そして家の前まで来た時、

「ふぅむ、それが君の使役魔王か、すっごかったねぇ!でもまだ不完全だね。もっと鎖を外さなきゃあ守りたいものもいつか守れなくなるよ。」

 急に後ろから声がして振り返ると、、、、

 誰もいなかった。

「一体今のは、、、、」

 そう考えていると手から<残虐>が消え、服も元どうりになっていた。一夜も同じくそうなっていた。

「一旦家戻るか、、、、」

「うん、、、、、」

 そうして俺達の戦いの火蓋が切られた、、、、、

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