第14話 3大都市ゴルセタ
「以上だ」
食堂の椅子に座り、一息ついた俺は店員に食事を注文する。
内容は俺様に肉とぶどうジュース。
ウルには肉とワインだ。
俺の飲み物がワインじゃないのは、当然未成年だからだ。
まあヴァンパイアに未成年も糞も無いが……
実は以前ヘイルの奢りで酒を口にしたのだが。
どうも体質的に俺はアルコールを受け付けないらしく、おもいっきり蕁麻疹の様な物が出たのでそれ以来飲む気がしないのだ。
「しかしでかい街だな」
「人だらけでうっとしい」
規模に合わせて人も多い。
ウルは人込みが好きではない様だ。
まあ俺もあんまり好きではないが……
「あんたら、此処は初めてかい?」
肉の皿を運んできたウェイターが聞いてくる。
俺達の声が聞こえていた様だ。
「ああ、まあな。しかし速いな」
頼んでからまだ一分と立っていない。
出前迅速も良い所だ。
「ははは、丁度注文のキャンセルがあってね。お客さんが頼んでくれて助かったよ」
ウェイターは手早く肉とワインをテーブルに並べる。
「ここはブルームーン王国3大都市の一つ、ゴルセタだからね。人が多くて驚いただろう?」
「ああ、話には聞いて居たがこれ程とはな」
勿論話になど聞いていない。
適当に合わせただけだ。
ヘイルからは、でかい街は何処だとしか聞いて居ないからな。
「まあ色々と規格外の街だ。何だったら俺が案内しようか?」
随分とよくしゃべると思ったら、そういう事か。
情報屋という訳では無いが、おのぼりさん相手に小遣い稼ぎといった所だろう。
「実は、冒険者ギルドを探している」
そう言うと、俺はポケットから大銀貨を取り出して彼に投げた。
男はそれを受け取ると、にんまりと笑う。
「おおう、豪勢だねぇ。お兄さん」
反応からして、少し渡し過ぎたのかもしれん。
ヘイルから分捕った物だ。
まあ良いだろう。
「冒険者ギルドは、支店なら目の前の通りを南に少し行けば看板が出てるよ。本部の方は街中心付近だから、かなり北に行く必要があるね」
本部と支店か。
まあ登録だけなら支店で問題ないな。
「他に何か聞きたい事はあるかい?」
「そうだな……金貨一枚程度で寝泊まり出来る、お勧めの宿はあるか?」
俺はもう一枚大銀貨を投げて渡す。
二回目は銀貨で済まそうかとも思ったが、けち臭いのでやめておいた。
「まいどありぃ!金貨一枚クラスなら、街の中心部付近にある黄金邸が良いと思うぜ。俺みたいな貧乏人には縁が無いが、物凄く豪華らしい。此処の通りを真っすぐ北に抜けて、大通りを西に行けば辿り着くはずさ」
「そうか、感謝する」
そう言うと俺は手でウェイトレスを下がらせる。
この世界での貨幣は銅貨・大銅貨・銀貨・大銀貨・金貨・大金貨・白金貨の7種類。
日本円に直すなら銅貨は10円ぐらいだ。
貨幣価値は一段階上がる毎に約10倍になり。
大銅貨は銅貨の10倍で100円。銀貨なら更に10倍の1000円だ。
金貨は大体十万円だと考えると、宿はかなり高級と言える。
こんな贅沢が出来るのもヘイル達のお陰だ。
彼らはああ見えて金ランクの冒険者だったらしく、それぞれ白金貨(1000万相当)を所持していた。
お陰で暫くは金に困る事は無さそうだ。
食事を終えた俺達は、店を出る。
まずは冒険者ギルドを目指すとしよう。




