第10話 受付
掃除が行き届いているのか、建物の中は思った以上に清潔感の溢れる物だった。
扉を抜けて入ったロビー奥には上に昇る大きな階段があり、その両再度に三つずつカンターが置かれている。
左から順番に総合案内・クエスト受付×2・清算×2・買い取りの全部で4種類だ。
時計を見ると、時刻は朝の5時過ぎを刻んでいる。
早朝の為か、ホールに人影はない。
カウンターも6つの内、今開いているのはクエスト受付と総合案内の2つだけだ。
この2種類だけは24時間受付している様で、他はまだ始まっていなかった。
俺は真っすぐに総合案内へと向かう。
総合案内という名称ではあるが、登録はどうやら此処で行うらしい。
正直ちょっと紛らわしい名前だ。
「何か御用でしょうか?」
「冒険者登録を行いたい。俺とこいつの2人分を頼む」
俺は親指で後ろにいるウルを指さす。
一度やって見たかったのだ。
これを。
「身分を証明される物は御座いますか?」
「無い。だが代わりにこれを 」
俺は懐から書状を取り出す。
それはヘイルが書いてくれた紹介状だ。
別に紹介状など無くても冒険者自体にはなれるらしいが、階級を上げる上で、無いと足を引っ張られてしまうらしい。
そこで彼が気を利かして紹介状を書いてくれのだ。
「これは……ヘイル様からの紹介状!?」
案内受付の女性は驚いて大きな声を上げる。
ひょっとして彼は有名人なのだろうか?
「し、失礼しました。今確認いたします」
案内嬢は幾何学模様の書かれてある板を取り出し、書状をその上に翳す。
すると紋様が光り輝き、封の部分――蝋にヘイルの親指の型が残されている――に光が照射された。
指紋認証の様な物だろうか?
「確認いたしました。間違いなくヘイル様の物の様です。では中を検めさせて頂きますね」
そう言うと彼女は器用に蝋を剥がし、中身に目を通した。
「少し席を外させていただきますね」
書状に目を通した彼女は眉をしかめ、立ち上がって奥に引っ込んだ。
「ふむ。どうやらあのヘイルと言う男は、曲者だった様だな。行くぞウル」
超聴覚を持つ俺には、奥に引っ込んだ案内嬢の声が丸聞こえだ。
その内容から、俺達が魔物である事がばれている事が分かった。
どうやらヘイルの手紙にその事が書いていたらしい。
奴には完全に一杯食わされた様だ。
そのままここに居ても面倒な事に成るのは目に見えている。
俺達は案内嬢が返ってくる前に、その場を素早く後にした。




