15.フロア2
当初懸念していた荷物持ちの任は免れた。力自慢の大男が率先して受け持ったのだ。他の三人は割れ物を運ぶなど大男のサポートに廻った。
パーティは団結していた。大男の献身によるところが大である。
キャンプでのそれぞれの役割は、まず勇者は次の戦いのためにMPの回復に努め、影の薄い男は調理、大男と俺は見張りや雑務を担当した。その大男はまれに大槌の手入れに時間を費やした。その作業にかかりきりになれば、俺の負担が増えことになるが、俺は俺なりに意欲的に取り組んだ。団結故に仲間の役に立てることが嬉しかった。
調理と言えば包丁なのだが、影の薄い男は刃傷未遂の一件から刃物を持たずの誓いを立てていた。男は食材を手でちぎり、のちに勇者から授かった流水のダガーを使っていた。当の勇者は光の剣を操った。
つまりパーティーには実体の刀剣を扱う者はおらず、俺の股間の傷が彼らにうずく事は無かった。
冒険中は容赦なくうずく。俺はそれを頼りに、
「敵襲だー!」と、茂みに隠れたゴブリンを見つけ、
「止まれ!」と、落とし穴を警告し、
「財宝だ!」と、壁に隠された小部屋を言い当てた。
汚らしく錆びたダガー、初心者が落としてそのままの武器、金貨の山に刺さった抜身の剣……そこには常に刀刃の存在があった。
人知れずうずきに耐えかねて股間に手をやる。事情を知らぬ勇者はそんな俺をこう評した。
「おまえはスカウトに向いているようで向いていない」
察知能力に、窮地を招きかねないばらつきがある。そりゃあ刀刃ありきなのだから当然であった。