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1.門

 林を抜けると、城塞都市を見下ろす場所に出た。

 都市の輪郭は円形で、壁に囲まれ、そこを川が中央を避けて貫通している。

 アニメでよく見るデザイン。アニメでお馴染みの俯瞰アングル。

 それを肉眼で見ている俺の前途は、切り立つ崖だった。ルート復帰に3時間かかった。


 門には軽鎧佩剣の女が居た。あたりを静かに警戒している。厄介事の予感がした。

 入城は目鼻描写のないモブ男による「身分証を、なければ銀貨一枚だ」という展開が理想だ。

 左手首がストレスで痒くなる。やや遅れて右手首も。

 手首を押さえ、消えろと念じる。女が引っ込んだ。自分でも驚いた。


 入城の列に並んだ。これが全く動かない。


「待たせたな、坊」


 俺は無言で門番の疲れ顔を真似た。

 待たせてと持たせては似ているとおもった。空目しやすさはテンポ悪に直結する。


「貴族さまがゴネやがって……臨時の門番が指図するなだとよ。俺は元々……」と、身の上話開幕の気配に、じいっとそいつのヒザを見た。


「俺は農家だったんだが、このところめっきりセクシー大根しか採れなくなってな。納めればすぐさま苦情もんよ。それで……廃業ってワケさ」


 門番が指揮者さながら、両手で宙に股を描いた。

 大根に人参、野菜がセクシー化するのはそれほど珍しくない。しかし全てというのは異常であった。


「その土地か土は魔女に買ってもらえるよ。恐らく、マンドラゴ化の兆候じゃないかな」


 魔女という単語にピンと来たのだろう。門番は話半ばで防護帽と槍を俺に押し付け、砂煙を立てながら駆けていった。

 俺は聞き手不在にも関わらず最後まで説明し切った。普段とは違い、今日はそんな気分だった。


 託された槍は、持と待が似ているなどと思ったための伏線回収なのか。

 俺はここで次の交代まで門番の真似事をするべきか、気にせず先に進むか。

 門番の不在を災いの芽と認知して放置するのは作者の好まざるところ。


 待ってもいい。あてのない旅だ。時間は十分にある。主人公が作者の願望・分身であるならば、俺は方向性を見失った作者の分身・気ままな放浪者なのだから。

 ただし、あてがなくとも〔ファンタジー〕に投稿するからには、うっすらとでも物語性が必要だ。

「ギルガメッシュ叙事詩のパクリですらない」との烙印がその判定基準となるだろう。


 などと考えている内に、さっそく交代が来た。

 三千はいったと思ったが、まだ千文字だった。

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