表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
霊魔の黄昏  作者: 地大
3/5

彼女と別荘

ちょこっと説明回。

 シキについて話をするため、レイカたちはルナの家に移動した。

 ルナの家を見て、レイカは唖然として一言。


「……デカい家だな」

「ふふっ、お世辞はいりません、こちらは別荘ですので。それにそこまで豪華でもないですし」


 ……これで別荘なのか。この豪邸を『そこまで豪華じゃない』と言い切るルナは何者なんだろうか。


 ルナの別荘は、誰が見ても豪邸と言えるものであった。

 シオンというメイドがいることもそうだが、この別荘を見てレイカはルナが相当なお嬢様であると確信した。

 客間へ案内され、これまた豪華なソファに腰かけたところで、ルナが深々と頭を下げた。


「この度は本当にありがとうございました。そして、巻き込んでしまい申し訳ありません」

「……俺は部外者でありながら勝手に首を突っ込んだんだ、謝る必要はない」

「そう言って頂けると幸いです。では改めて、シオンも含め自己紹介をさせて頂きますね」


 コホン、とルナが咳払いをする。


「私はルナ・クロスレイ。あなたの高校の転入生、それと西洋にある魔導協会会長の一人娘でもあります。

 こちらは私専属のメイドであるシオン・シュヴァリエ。日本へは彼女と私の二人だけで参りました」

「お嬢様って割に随分と警戒が薄いんだな」

「元々お忍びでしたので。ですが既にローファルが私の来日を知っていたのではもう隠す必要はありません。

 近々警護の者もこちらへ集めるつもりです」

「……その、ローファルって奴らとお前たちの関係は何だ? それとシキと魔導協会も」

「ええ、それについては順を追って説明させていただきます」


 ちょうどシオンが運んできた紅茶を一口飲んでから、語り始める。


「まず、神崎君が魔力と霊気についてどれほど知っているか存じませんが――」

「あぁ、それなら一切知らん。俺はただ何となく霊気が使えるだけだ」

「な、何となくっ……」


 紅茶をレイカの前に置いたシオンが顔を歪める。


「どうした」

「……いえ。なんでもありません」

「シオンがそんな顔をするのも無理ないですよ。魔力と霊気はこの世界に存在する異能。

 そもそもヒトは知らないものを行使することなどできません。

 我々が異能を扱うにはまず、異能を良く知り、試行を重ね自らに秘められた異能を自覚しなければならないのです。

 そんな中、『何となく』で異能を自覚し行使する者がいたらそりゃ驚きます」

「驚くを通り越してキモさすら感じます。少し引きます」

「……そんなおかしいことなのか?」

「例えるならば……言葉も文字も知らない赤子がプログラミングをしているようなものですかね」

「それは怖いな」


 レイカが自身の非常さを理解したところで、ルナは一から説明を始めた。


「魔力や霊気は、限られた者が存在を理解し、扱うことのできる異能で、魔力を扱う者は魔導士、霊気を扱うものは霊能者と呼ばれます。

 現に私は魔導士ですし、霊気を扱うレイカさんは霊能者ということですね。

 そして、私たちが所属する魔導協会というのは、ヨーロッパに点々と存在する魔導士を集約するために大昔に組織されたものです。

 協会の設立によって、これまで迫害を受けていた魔導士と人々が共存する社会ができたのですが、

 ある時から、魔導士のさらなる地位の向上を望む者たちが現れ、協会に異を唱えるようになりました。

 反協会の魔導士たちは結託し、組織を作り、長い歴史の中で度々協会と衝突してきました。

 シキはそのような反協会の魔導士の一人です。ローファルはシキが作った反協会のための組織と言えるでしょう。

 私たちの目的は、シキと、ローファル含む反協会組織を阻止することです」

「……なるほど。協会の話はわかったが、なんでわざわざシキを追う? 協会から遠く離れても追う必要があるほど危険な奴なのか?」

「シキが特別危険な魔導士だというわけではありません。問題は場所です」

「場所?」

「日本です。日本には霊能者が多いと聞きます。

 霊気を扱える者はヨーロッパではとても希少ですから、我々魔導協会にとって霊能者とは未知の存在。

 そしてシキはその日本で反協会の組織を立ち上げた」

「……魔力のみならたかが知れてるが、魔力と霊気の混合する組織であればどれほどの脅威になるか予測できない、と」

「ええ。ですからシキが組織を完成させてヨーロッパへ戻るその前に阻止せねばなりません。そのために私たちはこうして日本へ来たのです」


 説明し終えたルナが、一息ついたあとに「そこで、お願いがあるのですが」と深刻な面持ちで切り出す。


「神崎君に、シキの阻止を協力して欲しいのです」

「は?」


 レイカだけでなく、シオンも驚いていた。危うくティーポットが手から滑り落ちるところを寸前で持ち直した。


「今日私が襲われた時、魔力が通じなかったのを覚えていますか。

 シキやローファルは我々が魔力のみを使うことを知っていますから、原理はわかりませんが霊気で対策を講じたのでしょう。

 これから先も同じようなケースが考えられます。その時、反協会勢力に対抗する手段が必要です。

「そこで、霊気を使える俺に手伝ってほしいってことか」

「ええ、そうです。お願いできますか?」


挿絵(By みてみん)


 両手を膝の上で組んだ固い表情のルナに対し、少しの間を空けてレイカが苦笑する。


「……悪いな。生憎俺はそういう正義の活動に興味はない。あんたらに協力する理由がないんだ」


 本心であった。今回はとっさに身体が動いていたが、レイカは困っている者に無条件に手を差し伸べるような聖人ではなく、また悪を絶対に許さぬ正義漢でもない。

 レイカにとってこれ以上この非日常に首を突っ込む理由もメリットもないのだ。


「……そう……ですか」


 ルナは顔を伏せ、小さく呟いたが、すぐに顔を上げ、


「それは失礼しましたっ。今回の件は忘れてください」


 と笑って見せた。


「…………いや。ちょっとだけ、待ってくれ」


 レイカの口から無意識に出た言葉であった。


「ど、どういうことでしょう……?」


 関与する理由が無くとも、ほんの少しだけ後押しをしてやりたい。そんな気持ちがレイカに過ぎった。


「会わせたい奴がいる」

コメントはお気軽に。

どうあがいてもやる気になります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ