黄昏公園
専門用語が多いですが、後々本文で徐々に説明をしていきます。
最初は雰囲気で大丈夫です。
美しく切り揃えられた銀の長い髪をなびかせ、青い瞳の転入生は微笑んだ。
――私、貴方に不思議なご縁を感じるんです。
これからよろしくお願いいたしますね、神崎君――
神崎君こと神崎レイカ自身も『不思議なご縁』というのを彼女に薄々感じていた。
なぜか、昔親しかった女の子の面影を、髪色も声質も異なる彼女に感じた。
放課後、レイカはふと追憶にふける。
幼少期の淡い記憶に色濃く残った、紅色に染まる小さな背中。その姿を追って手を伸ばし……はっと我に返る。
荒げた呼吸と脈拍に気づき、一度深く息を吐いて冷や汗を拭う。
辺りを見回して初めて、ここが街はずれの公園だとわかった。
季節外れの7月に転入してきた転校生と会ってから呆然としていたレイカは、知らずのうちにふらふらと街はずれの公園まで来ていたらしい。
そしてそのままベンチにもたれ、まどろんでいたらしかった。
下校時刻からだいぶ経ってしまったようで、ちょうど黄昏時であった。公園に子供の姿はない。
頭を振り、まどろんだ意識を覚ましてベンチから立ち上がった時、枯れた噴水の向こうに二つの人影を見つけた。
なんとなくの気まずさから人影の方を避けて公園を出ようとした時、噴水の向こうの髪が夕陽に照らされ、銀色に輝いた。
それを見たレイカはなぜか、惹かれるように人影の方へ歩き出していた。
二つの人影は一組の男女で、柔らかな口調で話す男に対し、女は警戒するような口ぶりをしていた。
会話の内容がレイカの耳にも届く。
「貴方の目的は一体何なのですか……!」
「だからぁ、さっきも言いましたよねぇ? 貴方を殺さなきゃならないんです」
「その目的を聞いているのです!」
予想外の内容に驚いたレイカの足が止まる。
男は呆れたように息を吐く。
「はぁ……それ、言う必要ありますかね? 魔導協会会長の一人娘であるルナ・クロスレイを殺す。これだけで十分じゃないですか。どうせ死ぬってのに知ってどうするんです」
「私は死にません。狙われた理由を知り、貴方を倒し、協会へ報告します」
男と対峙する銀髪の少女、ルナの言葉を聞いた男の眉間にしわが寄る。
「は? 今、なんて言いました?」
「貴方を倒します」
男から、ブチッ、と何かの切れる音。
「調子にィ……乗ってんじゃねェぞ!!!」
すぐさま、金属のぶつかり合う音が響く。
男はどこからか現れた巨大な柳葉刀で斬りかかり、ルナが自分の背丈より大きな大鎌でそれを抑えていた。
「聞かせて頂きます、なぜ私を殺そうとするのかを!」
「うるせェ! 『魔力解放』!!」
男が叫ぶと同時に柳葉刀が青白い光を帯び、ルナの大鎌を弾く。大鎌はルナの手から離れ、空中で霧散してしまった。
そのまま刀の腹でルナを薙ぎ払う。
「俺がなぜオマエを殺そうとしたか、知りたいんだったか? そこまで聞きてェなら教えてやる」
腹部への衝撃で咽るルナを見下ろし、男は気味悪く笑う。
「シキ様の御命令だ。直々のな」
黙って会話を聞いていたレイカの頭にその言葉が引っかかった。
――シキ。俺はその名前を知っている。
かすんだ記憶の中に紅く、鮮明に刻まれた名だった。
「シキが……なぜ、私を……」
「さぁな? 俺も理由は聞いちゃいない。だが、間違いなく我々の組織『ローファル』を思っての御命令だ。……これで聞きたいことは聞けただろう? 今すぐに殺してやる」
「待て」
倒れたルナを守るように、レイカは男の前に立ちはだかった。
「なんだぁ? オマエ。この小娘を助けにでも来たってか?」
「教えろ。シキに関してだ」
「あぁ? オマエもか。……ハァー、いちいち教えてやるほど俺はお人よしじゃァねェんだよッ! 死ね!」
またも、金属の摩擦音。
とっさに『顕現』させた刀が、柳葉刀を防ぐ。
レイカの手に握られたその刀は、紅色の鈍い輝きを放っていた。
アマテラス。この紅色の刀の名である。
「……へぇ。オマエ、魔導士か。だが、さっきの小娘を見てなかったのか?」
柳葉刀が青白く発光する。
「魔力解放!」
柳葉刀が紅色の刀、アマテラスを弾く。
アマテラスは手から離れ霧散――
「!!」
――しなかった。
男は目を見張る。
「なぜ! この剣は魔力を断絶し、顕現された魔具を打ち消すはず――」
レイカは握りしめたアマテラスを振り上げる。
「……悪いな。俺の刀は魔具じゃあない、霊具なんだ」
振り下ろした斬撃を受け、男はその場に崩れ落ちる。
「あと、魔導士でもねぇよ」
レイカが手放すと、アマテラスはすぐに霧散した。
後ろで息を整えたルナが、恐る恐る尋ねる。
「あの、この男は……」
「あー……寸前で峰にして打ったから死んじゃあいない。斬られたと思って失神しただけだ。すぐ起きるだろうから縛っとけ」
「は、はい。……えと、ありがとう、ございました。その、貴方、もしかして……」
怯えた彼女に振り向いたレイカの口元が綻びる。
「あぁ、そうだ。あんたの転入した高校の同じクラスで隣の席。神崎レイカ。あんたの言う通り、不思議なご縁ってヤツがあったな」
黄昏時、夕陽に染まる公園で。ここが、彼と彼女の物語の始まりである。
良し悪しだけでもいいのでコメントは気軽にどうぞ。
どちらにせよやる気になります。