違和感
暑い夏。
照り付ける日差しを恨めしく思うのは、道を歩いている時だからかもしれない。
冬であれば夏が恋しくなり、夏になれば冬が恋しくなる。
意識が朦朧とするなと僕は思う。
「……暑い」
つい呟いてしまった僕は、すぐそばにあった欅の大木の下に入り込む。
風があまりないのも暑さに拍車をかけているとはいえ、やはり日差しを遮る木の下は幾分涼しい。
僕はそこで火照った体を休めていると、同級生のイチがこちらにやってくるのが見える。
イチは活発な少年で僕と同い年の同級生だ。
田舎の学校なので、一年から六年まで全部同じクラスだが、僕の学年は珍しくイチ以外にも同じ学年の子がもう一人いたりする。
都会に行けば、学年ごとに幾つもクラスがあるらしい。
インターネットで知ったその情報は、僕には興味があったし、そのうち進学すればこの村を出て、大きな町に下宿することになるらしいから、その時に経験できるだろうか?
そういったことを思い出しながら僕は、目の前にやってきたイチが楽しそうに笑うのを見た。
「ちょうど良い所にいた。今日か明日は暇?」
「どこかに遊びに行くの?」
「いや、実はさ……ほら、夏だから肝試しなんてどうかなって」
「……暗い時に行く気はないよ。危ないもん」
「大丈夫、明るい時だから」
イチがそう言って笑う。
でも僕は何かの“違和感”を感じた。
なんでだろうと僕はぼんやりしながらイチの話を聞いているとそこでイチが、
「“裏野ドリームランド”って知っているか?」
「うん、なんでも“ばぶる”の時に作られた? 遊園地なんだっけ。あのころだからこんな辺鄙な場所に作れたのね、っておばあちゃんが前に言っていた気がする」
「そうそこ。そこに行ってみないか?」
「でもあそこに行くと時々子供がいなくなるんでしょう? 他の町や村にも隣接しているけれど、確かそっちではそれぞれの遊戯にも噂が……」
「だからそれを確かめに行くんじゃないか。肝試しにはもってこいだろう? 大人にはもちろん内緒で行こう」
イチが楽しそうに行こう行こうという。
僕はどうしようかと思っているとそこで、もう一人の同級生がやってきた。
「ミツル! こっちに来なよ!」
そこでイチが手を振って、ミツルを呼ぶ。
それに気づいたミツルがぎょっとしたようにイチを見た。
すぐに駆け寄ってきて、
「イチどうしてこんな所にいるんだ?」
「みんなと一緒に遊びたくてさ。今日か明日……できればこれから、“裏野ドリームランド”に肝試しに行きたいんだ」
「……そういえばイチは、おとといそう言っていたものな。僕達と一緒に遊びに行きたいって」
「うん」
イチは頷くも、それを聞いたミチルは自分のカバンのポケットの方をちらりと見てから、
「僕達で行くのか? イチは……一緒に遊べば満足なのか?」
「うん」
イチが相変わらず笑顔でうなづく。
それにミチルが大きく深呼吸をしてから、
「わかった。今から行けばお昼過ぎにはここに戻れるな」
「え~、あとらくしょん? とか全部見て回ろうよ」
「どこも曰くつきの場所ばかりだから、一つだけだ」
ミチルが体をこわばらせながら、イチに言う。
イチはそれに困ったように黙ったから、
「だったらミチルはどこがいい?」
「……涼しい場所かな」
「じゃあ、アクアツアーに行こうよ。あそこにはまだ水がたまっていて涼しいはずだから」
「……まるで、見に行ったみたいな発言だな」
「聞いたりもしたよ。じゃあ、今すぐ行こうか」
イチがやけに乗り気で僕達を誘う。
そして最後にやってきたミチルは、ずっと何かを考えているようだったのだった。




