池のほとりに
ーー
「お…おう、サンサ…戻ったか……よし、晩飯食べにいこうぜ。」
ロッドが立ち上がり出発する準備をしている。
フルトとホイルズはもう部屋から出ようとしていた。
「………………ああ…………」
サンサは色々と考えたが、今は尋ねるべきではないと思った。
さっきの3人の会話については、これからゆっくりと時間をかけて探ることにした。
食堂へ行き、4人で晩飯を食べた。
パンとスープ、そしてメインは鶏肉であった。
噛んだ瞬間に溢れる肉汁……
ここに来て初めて食べた肉の美味さに悶絶した。
近くを通っている川へ行って衣類の汚れを落とした。
そして、部屋に戻り、雑談を少しして床に着いた。
次の日も朝、ロッドと散歩に行き、昨日と同じように朝礼に参加し、遠距離武器訓練所で弓の練習をした。
だが、今日も矢が的に当たることはなかった。
ロッドが付きっきりで指導してくれていたが、あまり上達したとは思えなかった。
それからいくらか月日が経った。
その日の夜も4人で晩飯を食べていた。
メニューは昨日までとと少し変わって鶏肉がカボチャに変わっていた。
「サンサーお前さぁーショーライの夢とかあるか?」
サンサに向かってフォークを揺らしていたフルトが、唐突に尋ねた。
サンサが不思議そうな顔をしていると、
「いやーちょっと気になってねー!教えてよ!」
フルトが顔の前で手を合わせてねだるように言った。
「うーん……夢か……今は夢なんて大層なもんじゃないけど昔の自分について知ることが目標かな……じゃあ、フルトは夢は何なの?」
サンサが聞き返すと待ってましたと言う感じで少し食い気味に答えた。
「俺が世界を変える!」
他の3人がポカーンとしているとフルトがホイルズの方を指差し言った
「次はおまえだー」
ホイルズは少し困っている様子で首を傾げていた。
「ぼ、僕は…………皆が笑っていればそれで良いかな……」
「いいなぁーそれ!気に入った!」
フルトがホイルズに言った。
ホイルズは少し照れながら「じ、じゃあ次はロッドだね……」とロッドに振った。
「俺はファンメル軍の司令官になってこの国を強くする……次の世代の子供たちにあんな辛い思いをさせたくない。」
ロッドが、真剣な顔で厳かに言った。
「……ああ、すまない。こんな暗い話をして……
そういえば明日にガイ兵士長たちが帰ってくるらしいぞ」
ロッドは気丈に振る舞っていたが無理をしているのがバレバレだった。
そうこうしているうちに全員が食べ終わっていた。
また、昨日と同じように川に行き、部屋に戻った。
今日は何も怪しい様子も無かったな……とサンサが布団の中で考えていた。
気が付くと辺り一面真っ白なところに1人でたっていた。
いくら歩いても走ってもずっと白であった。
ー違う……俺は……バ…モノ…んかじゃな…ー
どこからか声が聞こえてきたような気がした。
目を開けると朝になっていた。
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
サンサは「夢」を見ていたのだと思った。
それが自分の過去を知るための鍵となるかもしれない。
自分の過去を知ることに微かな希望が生まれた。
今日もまた1日がはじまろうとしている。
窓を開けると太陽の光が真っ直ぐに部屋の中に突き刺さってきている。
サンサは周りを見回したがロッドの姿は無かった。
先に散歩に行っているのだろうと思いドアノブに手をかけた。