2つのパン
ーー
小鳥の鳴き声で目が覚めた。
サンサが起きたときにフルトとホイルズはまだ寝ていたが、ロッドの姿は見当たらなかった。
サンサが布団の片付けをしているとロッドが帰ってきた。
「ロッド、どこ行ってたんだ?」
サンサが尋ねた。
「散歩だよ。朝に軽い運動をするのが日課になっているんだ」
ロッドが汗を布でふきながら言った。
「グルルルルルルッ~~」
突然サンサのお腹が鳴った。そういえば今まで何も口にしていなかった。
「腹が減っているのか?少し早いが食堂に行くか?案内してやるぞ」
ロッドがにこやかに言った。
しかしまだ二人は夢の中のようだ。
「ああ、ありがとう」
サンサはロッドと二人で部屋を出た。
食堂は兵舎を出てすぐのところにあった。
中に入るととても良い匂いがした。
「いらっしゃい!あら?見かけない顔ねぇ……」
厨房の方からおばさんがこちらに話しかけてきた。
「ああ、こいつは昨日から入った新入りだ、おばさん2人前頼む!」
ロッドが指を二本立てて二人前というのを表しながら言った。
「はいよ」
おばさんが2人分の朝食を用意してくれた。
「ありがとう!今日も美味しそうだな」
ロッドがお金を置いて席へと向かった。
サンサも真似をしてお金を置き、ロッドを追いかけた。
まだ早い時間ということもあり空いている席が沢山あった。
メニューはパンが2個とスープ一杯、茹でた野菜の3種類だった。
全部がとても美味く、すぐに平らげてしまった。
「お前よっぽどお腹が空いていたんだな」
がっつくサンサを見てロッドが笑いながら言った。
「ところでお前……昨日バーン副兵士長を倒したよな……どっかで戦いかたとか学んだことがあるのか?」
「うーん……覚えてないな…けど何か懐かしい感じがしたかもな…」
サンサは曖昧に答えた。
「そうか……」
ロッドは少し険しい顔をしているようにも見えた。
「そろそろここを出よう……朝礼までは少し時間があるから俺が施設の案内をしてやろう」
再びにこやかに笑い食器を持って立ち上がった。
サンサはロッドについていった。
「ここは昨日も来たな……第一から第四の闘技場だ。対人演習の時などに使う。よし、次行くぞ!」
しばらく歩いていると弓が沢山置いてあるところについた。
「ここは遠距離武器専用の訓練所だな。次だ次!」
その後も重りなどが沢山置いてあった「筋力増強室」や槍や刀が沢山あった「近距離武器訓練所」など、色々なところへ行った。「そろそろ朝礼が始まるな……集会所に向かおう」
「分かった……」
サンサはロッドのあとについて行って集会所へと到着した。
「もう結構集まってんな」
ロッドと話をしているとフルトとホイルズが眠そうな顔でこっちに向かってきた。
「おはよー早いなー」
ホイルズが目を擦りながら言った。
フルトの頭が昨日の時より盛大に爆発している。
「お、朝礼が始まるみたいだぞ。静かにしろよ」
ロッドが注意を促した。
バーンが台の上に立った。
「今からファンメル兵士訓練所の朝礼を始める。
本日もガイ兵士長が不在のため、副兵士長である俺が代わりをするッ」
「教訓音読ッ!己を知りッ打ち勝つものだけがッ、敵に打ち勝つことが可能となるッ!日々の継続は力なりッ!」
バーンが声を張り上げて叫んだ。
「己を知り打ち勝つものだけが敵に打ち勝つことが可能となる。日々の継続は力なり」
バーンの後に続いて、教訓を全員で復唱した。
「よし、各自鍛練に励めッ!朝礼は以上だッ!解散ッ!」
バーンの合図の後各自がそれぞれに動き出した。
横で見ていたイーエスがサンサに近づいてきた。
「今日はお前にこの『ファンメル兵士訓練所』について詳しく教えよう。まぁ座れ」
言われるがまま椅子に座った。
「まずはこの訓練所が存在する理由から教えよう」