2段ベッドと鏡
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兵舎に入って右側の通路を進むと洗面所があった。
そこには鏡が並んでいた。
サンサは初めてサンサ・ウェルネットを見た。
年齢は十代後半ぐらい、黒っぽい髪で顔立ちはまぁまぁだと思う。
今まで全く気にしていなかったが服はボロボロで靴も履いていなかった。
こんな状態で森に倒れていたのならバーンが疑うのも無理はないと思った。
サンサが洗面所の鏡の前で立ち止まっていると
「おい!今日からお前は俺たちの部屋で暮らすことになるぜぇ!俺が案内してやるからついてこーい」
やけに元気が良い黒髪の頭が爆発している少年がこちらに手を振っている。
案内してくれるらしいからサンサはついていくことにした。
兵舎の二階にその部屋はあった。
中に入ると頭爆発くんの他に二人がいた。
二段ベッドが二つ有り、辺りに物が散乱していた。
男四人で暮らすには少し狭い気がする。
この建物自体がとても大きく三階…いや四階建てぐらいに見えた。
サンサはこの兵舎には軽く百人は入るだろうと予想していた。
「お前はこっちのベッドの上を使ってくれ」
頭爆発くんが右側にあった二段ベッドの上の部分を指して言った。
「じゃあ自己紹介するぞー、俺はフルト・ロードだ!好きな食べ物は夕食のスープにパンを浸したやつだ!よろしくな!!」
サンサの第一印象は「頭が爆発している奴」だった。
活発で皆の輪の中心に居るようなタイプだと思う。
「じゃー次はロッドが自己紹介しろ!」
右側の下のベッドに座っている短めの茶髪をした男が立ち上がった。
「俺はロッド・ゴーステアだ。これからよろしく頼む」
サンサの第一印象は「しっかりもの」だった。
リーダーシップが有りそうな感じだった。
「最後はホイルズだな」
フルトが腰につけているポーチから出したと思われるパンを食べながら言った。
「ぼ、僕はホイルズ・ガディ……って言うんだ。
こ、これからよろしく……………………い、以上です」
サンサの第一印象は「控えめ」だった。
ずっとおどおどしていて気の弱そうな感じだった。
「お前も自己紹介してくれよ」
フルトがサンサにパンを全て口のなかに入れながら言った。
「俺は……えーと……サンサだ……記憶がない……俺は自分の過去を思い出したい。まだ信用できないかもしれないが、これからよろしく頼む」
「よっしゃー自己紹介しゅーりょー!よーし今日はもう寝るか!!よし寝よう!おやすみー……ZZZ…」
フルトが一瞬で寝た。それに驚いていると
「ハハハ……フルトはいつもこんな感じだよ。僕たちももう寝ようか……」
ホイルズが笑いながら言った。
それからランプを消し全員床についた。
サンサはよほど疲れていたのかすぐに深い眠りについた。
他の2人もすぐに夢の中に入った。
こうしてサンサ・ウェルネットとしての初日が終了した。