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勝利への権利  作者: 青空 丸
成の果て
1/14

また会う日まで

ーー 

 太古の昔、人間はいつも戦争をしていた。

お互いが憎みあい、殺しあっていた。

それを見かねた神が、地上に神の子「ライト・テオス」を授けた。

神の子は十の「神の権利」を使い、世界に一時期の安泰をもたらした。

だがその安泰も長くは続かなかった。

人々は神の子から「神の権利」を奪おうと計画した。

そしてその計画通り「神の権利」を奪うことに成功した。

神の子から奪った「神の権利」を持った国が世界の全てを制した。

しかし、「神の権利」が悪用されたことにより戦争は今までよりも激しくなり、死者数も激増した。

いつしか戦争の目的も「神の権利」の奪い合いへと変化していった。


 そして今もその奪い合いは続いている。


ーー

 もうダメだと本能が叫んでいる。

周りで友が死んでいっている。

みんな相手と戦う前に殺されて倒れている。

もはや戦う権利すら与えられていない。

これが戦争か……

どうしてこんなことをするのだろう。

何のために自分は死にゆくのだろう。

辺り一面が荒野で見晴らしが良いため、一気に矢が飛んできているのが分かる。

辺り一面に矢が雨のように降ってきて、地面に沢山刺さっている。

矢を避けきれず何人も倒れていっている。

何か叫びながら死んでゆくものもいた。

「かっ、母ちゃん……お……俺は………………」

心のどこかでは分かっていたつもりだった。

ー殺らなきゃ殺られるー

誰も死にたくない。多分殺したくもない。なのに戦争は起きる。

誰が人を殺す「権利」を持っているのだろう。神だろうか……それとも悪魔だろうか……

何が自分に人を殺させようとしているのか。

そんなことを考えることには何も意味はない。

答えが出たとしても、どうにもならない。

残酷な世の中だ。

心では分かっていても、体がついていかない。


 矢がマグナに向かっていくつか飛んできている。

だがマグナは気付いていない。いいや、避けようとしていないのかもしれない。

「おいッ!マグナ!何ぼーっとしてんだよ。死にてーのか?」

ふと、我にかえると前で親友であるカルタ・ポールが飛んでくる矢を剣で弾いていた。

片腕を負傷しているようだ。

動きが少しぎこちなかった。

ポールは、同期の中でもずば抜けて成績が良かった。

何をやっても敵わなかった。

当然、戦闘能力もポールの方がかなり高い。

強烈な劣等感を感じ、激しく嫉妬したこともあった。

今もこうやって、一方的に助けられている。


 辺りを確認し、剣を持ち直した。

「もう大丈夫みたいだな、よし行くぞ」ポールが走り出した。

マグナには矢の第二波が来るのがわかった。

「今はマズイ!戻ってこい!!」大きな声で叫んだつもりだった。

所詮 ーつもりー なのだ。本当に大声を出した保証もどこにもない。

自分ですら分からない。

ポールは止まらずにまだ走り続けている。

いつも見ていた光景だ。

いつも前を走っているのはポールであった。

その後ろ姿をずっと見てきた。

「おい…………無視かよ……」いくらポールでもあの数の矢を怪我をしている状態で避けきれるとは思わなかった。

恐怖でどうしても足が前にでない。まるで何かに掴まれているようだった。

そして最も恐れていたことが起こった。

ポールの体を何本もの矢が貫いていた。

最後まで、前を走られた。親友として一緒に横で走りたかった。

追い付けなかった自分への苛立ち、前で進み続けたポールへの怒りが急にこみ上げてきた。

ポールが倒れるのと同時に視界がぼやけた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ…………」

雷鳴のような叫びが天空に轟いた。


 きれいごとだけの世界なんて存在しない。

表があれば裏がある。勝利する者がいれば敗北する者がいる。

みんなしかたがないことなんだ。

そう……何もかも…………


 大きく一歩を踏み出し剣を持って歩み始めた。

周りにはもう誰もいなかった。誰も横を走ってくれない。誰も後ろに付いてきてくれない。皆、前で走り終えている。

ーお前のゴールはまだ先だろ……ーどこからか声がしたような気がした。

敵は数えきれないほどいるのになぜかあまり恐怖を感じることはなかった。

こちらが前進するのを見て、敵の部隊は弓を一斉に準備し始めた。

マグナは矢の第三波が来るのが分かったが、お構い無しに突き進んでいく。

そして「勝利」を掴むために走った。

近くにあるようで遠くにあったものを……

もう二度と離さぬように。

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