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第14話 祭壇

 上空から黒い翼が宙を舞っている。

 蝙蝠型のモンスターが風を切り、ジークへと飛来する。

 それをジークはバックステップで躱し、自身とモンスターとの間合いを計っていく。

 両手で握りしめた一振りの剣を構え、剣先を蝙蝠へと向けて、狙いを定める。


 「はぁっ!」


 蝙蝠へと薙ぎ払われる一閃。

 一太刀で蝙蝠の羽は両断される。

 片翼がなくなったことにより、飛行機能を半分失った蝙蝠はフラフラとその場に浮遊する。

 そのスキをジークが逃すはずもなく、狙いを定め胴体を袈裟切りにする。


 「アイス・ディザスター」


 ユーリが2節の魔法名を小さく呟くことで、周囲の水分を糧にして生み出された吹雪が骸骨の形をしたモンスターであるスケルトンに襲いかかる。

 やがて、骨の身体は絶対零度の雪に包まれ、氷漬けとなってしまう。

 中級魔法でありながら、対象を一定確率で行動不能に出来る魔法をユーリは放った。


 「・・・・」


 スケルトンは放っておいても問題ないとユーリは判断する。


 「くっ!」


 仲間の青年が苦悶の声に気付き、そちらに意識を傾ける。

 見れば狼のモンスターの牙がジークの右腕をかすめていた。

 腕からは僅かに赤い血が一滴、大理石でできた地面へと滴り落ちる。

 痛みに臆すことなくジークは狼のモンスターに対して、華麗な剣捌きを持って薙ぎ払う。


 「ヒール」


 すぐさま回復魔法を使うことで仲間の援護を図る。

 回復魔法が効いたようでジークの右腕はすでに完治していた。

 その腕には、血はおろか傷一つついていなかった。

 彼の無事を確認したユーリは安堵のため息を漏らす。



 しばらく戦闘を繰り返した二人は周囲の敵がいなくなったのを確認してから、休憩に入った。

 二人のいる場所は何もなく、ひらけた空間なので敵が来てもすぐに対応することが出来るというユーリの判断である。

 道中のモンスターはそこまで強くないとはいえ、モンスターの通りがほぼ無い入口付近ならいざしらず、内部はモンスターの数も多いので、常に神経を尖らせている必要があった。

 そのため、精神的な疲れを癒す必要がある。



 「ふぅ、この辺りで休むか」


 そう言ってジークは彼の近くにあった、椅子にするにはちょうどいい大きさの岩に腰掛ける。


 「よいしょ」


 ユーリも彼の近くにある岩に腰掛けた。



 「・・・・」

 「・・・・」


 アサギの売店で売っていたサンドイッチをユーリは無言で咀嚼していた。

 口の中一杯に広がる、ハムとサラダの味わいを味わっている。

 宿泊施設で売られている、ごく普通のサンドイッチなので、特殊な調味料は使っていないはずだが、半日ほど歩き続け、戦闘で知らぬうちに疲弊した身体にその素朴な味わいは極上のものであった。

 無意識のうちに笑みがこぼれてしまう。

 目の前で岩を椅子代わりにして座っている青年も自分と同じようにサンドイッチを無言で食していた。その姿はどこか犬を連想されるものであり、そんな彼を見ているとユーリの中に悪戯心が芽生えてしまう。


 「・・・・・・・・あーん」


 ユーリは自身が食べているサンドイッチの切れ端を小さく細い指で挟み、ジークの口元に運ぶ仕草を見せた。


 「ッ!」


 少女が思いがけない行動に出たからであろう、ジークは目を見開き、少女とは明後日の咆哮を見てしまう。

 明後日の方向を向いているので彼女の角度からは視認出来ないが、その頬は紅潮していた。


 「いきなりなにするんだよ!」

 「なんとなく」


 自分は何をやっているのだろうとユーリは頭を悩ませてしまう。

 本来自身は、あまり自分から人に係わることはせず、知人と接する時も、どちらかといえば「受け身」の態勢であった。

 しかし、どういうわけか目の前に居る青年が自分以外のものに注意を向けていると、その意識を自身に向けて欲しくなり、無意識のうちに干渉してしまう。



 しばらく二人が歩いていくと、通路の両端に穴が開いた通路に辿り着いた。

 微妙に通り道が狭いので、穴に落ちない様に、お互い距離を詰めて並んで歩きだす。


 「うわっ」


 すると、左右の壁から突風が吹き荒れ、ユーリの小柄な身体を左右の穴に押し出そうとする。

 とつぜんの衝撃に、心の準備もなかったユーリは簡単に見えない手に押され体勢を崩してしまう。


 「大丈夫か?」


 その小さい体が、先の見えない真っ暗な穴に落ちてしまう前に、ジークはがっしりとユーリの肩を後ろから掴む。


 「あ・・・・ありがとう」


 いかに高レベルの自身であっても、目の前に広がる先が見えない真っ暗な穴に落ちてしまえばどうなるか知れたものでは無い。

 ユーリは自分を助けてくれたことに対して、はにかみながら感謝の言葉を掛けた。


 その後も何度か戦闘と休憩を繰り返し、二人は地下へと通じていると思われる下り階段を発見する。

 その階段からは僅かに風が吹いている。

 また、先は薄暗く先を確認することは出来ない。

 つまるところ、何かあるかは実際に階段を下りてみないと分からないということ。


 「いかにも、って感じだね」

 「降りてみるか」


 ジークはしばらく考える素振りを見せたが、階段を使って下の階層に移動してみることを提案する。

 こうもあからさまな階段であれば、この先には重要な手掛かりがあるというのは、この手のダンジョンではお約束であることを長年のゲーム経験で学んでいるユーリは、ジークの提案に異を唱えるつもりは皆無であった。

 無論、この世界はゲームではないという認識なので、混同するつもりも彼女には無かった。



 階段を使って下のフロアに辿り着いた先で二人を待ち構えていたのは、大きな祭壇と通路口を挟んで見える部屋であった。

 部屋は大きく、足音だけがこだまする。



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