決戦の丘へ~大いなる神々の黄昏(ラグナロク)④自然神アリスの怒り!!
銀仮面の女デッグ.アルヴァーの手には赤々と燃え上がる松明の炎。
兵士たちにより黒十字架に磔された霧の国の妖精リョース.アルヴァーが天を仰いでいる。
黒十字架の下に山と積まれた薪に油が注がれる。
デッグ.アルヴァーが叫ぶ。
『見よーーー!!』
『我ら闇の軍団に楯突く者の最後を!!』
小鹿や子ウサギ、そしてウルフハウンドが砦の囲いを潜り抜け黒十字架の周りを駆け回る。
それは森の主人を何とか救いたいと必死に小さな命を燃やす覚悟を示していた。
薪を必死に運び去り主人の窮地に奔走する小動物たちの姿。
その様子にデッグアルヴァーが兵士たちに命じた。
『ええい!!』
『おぬしら、この邪魔どもを始末せよ!!』
火筒が子ウサギや子鹿に向けて放たれた。
バババーーーーン》》》
バババーーーーン》》》
バババーーーーン》》》
キュン)))
キュン)))
次々と倒れ込む動物たち。
幼い男の子や女の子が涙ながらに叫ぶ。
『やめろーーー!!悪魔!!』
『この子たちの命を取らないで!!』
民を人質にされているため聖ジークとウィリー.アステルは手出しができずに唇を噛んだ。
『くっ!!』
ドドドドド……
迫り来たラナの速足騎馬軍団が砦の横を通る荷馬車隊列に攻撃を仕掛けた。
砦の中央の櫓からこれに視線を送る魔導師ソウ.ルーイ。
『我の策、成れり!!』
荷馬車隊列の兵士たちはルナ速足騎馬軍団を見て一目散に蜘蛛の巣を散らすように逃げ去った。
荷馬車隊列を取り巻くルナ速足騎馬軍団。
ニヤリと笑いを浮かべ逃げ去る兵士たちの後ろ姿にルナが叫んだ。
『罠よーーー!!』
『退避ーーー!!』
しかし、時既に遅く砦から大火筒(大砲)が荷馬車隊列の真ん中に向けて放たれた。
ドドトドーーーーーーン))))
空を横切る大砲の火玉。
見たこともない新兵器に、ただ戸惑うばかりの騎馬軍団。
『何だ?』
『あの火の玉は?』
次の瞬間、大音響と共に火薬倉庫と化した荷馬車隊列が地響きとともに爆発した。
((((((ドカァァアアアーーーーーン))))))
吹き飛ばされる馬や人の群れ。
そこらじゅうに倒れ込む。
ルナ速足騎馬軍団は不意を突かれたちまち壊滅した。
ルナはわずかばかり残った騎馬隊を連れ砦へ無謀とも思える突撃に出た。
『このままでは、終わらせない!! 』
『せめて、一刃でも!!』
ドドトドーーーーーー))))
これを見たウィリーアステルが蒼馬で前を遮った。
ヒヒヒンーーーーーン)))
『もうーー!!』
『1つしかない命、大切にしなさいよ!!』
『あなたの命は、もうあなただけの物ではないはずよ!』
『そのお腹の中には、王子がいること忘れないで!!』
『愛する人と生きる幸せをムダに散らしてはいけないわ!!』
ウィリーアステルの横で立ち竦む飛翔剣のアンスウェラ。
彼はウィリーの横顔に失ったアルテミウスを重ねていた。
『アルテミウス……お前なのか……』
銀仮面の女デッグ.アルヴァーが薪に火を放った。
ゴゴゴゴォォォオオオ))))
たちまち燃え上がる炎の柱。
聖ジークが叫ぶ。
『やめてくれーー!!』
重なるように遠くの霧の森が燃え上がる。
空を舞う大魔龍が三本の首から火炎放射を吐き出す。
魔鳥たちが残存している騎馬隊を襲い始める。
炎の海と化したラグナロク。
金の龍の背に乗る戦、ヴァルキリーが
火の海と化したラグナロクの上空でティルヴィングの剣を抜き放った。
『ティルヴィングの剣よ!!』
『わたしの命と引き換えに、この惨劇を終わらせよ!!』
『闇を打ち払い愛と光の世界を甦らせよ!!』
ピカッーーーーーーーツ》》》》》
ティルヴィングの剣が目映い光を放った。
『戦乙女 ヴァルキリー、汝キュピレスよーーー!!!』
『その願い、今こそ成就の時なりーーーー!!』
『運命神エリス!!』
『自然神アリス!!』
『この戦乙女ヴァルキリーに力を与えてくださいませーーー!!』
その時、にわかに空が黒雲に覆われた。
雷雲が沸き起こり、雷鳴が轟く。
突然の大豪雨がラグナロクに降り注ぐ。
ザザザザザザザザ………………
ザザザザザザザザ………………
ザザザザザザザザ………………
砦の中央でヒヒイロ侯爵が空を見上げて嘆く。
『な、なんじゃ!!』
『ソウ.ルーイよ!』
『これでは、頼みの火筒が遣えぬではないか!』
ソウ.ルーイは黒十字架のリョースアルヴァーに杖を向け呟いた。
『女神アリスの怒りを買いましたな……』
『三女神を相手にしては、勝ち目は、まずありますまい。』
『ここは、エリスシオンの地でごさいます。』
その言葉が終わらぬうちに地響きが西の地に轟いた。
物見櫓で兵士が叫ぶ。
『漆黒の破壊騎士の軍団が迫っておりますーーー!!』
震えるヒヒイロ侯爵。
『ソウルーイよ、ワシは逃げるぞ!!』
逃走用に備えてあった馬車に早々に乗るヒヒイロ侯爵と魔導師ソウ.ルーイ。
ソウルーイがヒヒイロ侯爵に撤退の指示を促した。
震える声でヒヒイロ侯爵。
『て、て、撤退の合図じゃーー!!』
ラグナロクの丘に撤退木音が鳴り響く。
カンカンカンカン))))))
水が引くようにへーベル河に浮かぶ黒船へ撤退を始めたヒヒイロ侯爵軍。
黒十字架にいたリョースアルヴァーは聖ジークにより縄をほどかれ救いだされた。
囚われていたエリスシオンの民もアンスウェラやウィリーアステルの活躍により保護され安全な場所へと移された。
迫り来るハル王の長弓騎馬軍団が魔鳥、目掛て矢を放った。
ビューーーーーツ》》》
ビューーーーーツ》》》
ビューーーーーツ》》》
バタバタと落ちて行く魔鳥の群れ。
撤退して行くヒヒイロ侯爵の長槍大隊に突撃を開始するハル王軍団。
ドドトドーーーーーー)))))
たちまち壊滅に追い込まれるヒヒイロ侯爵軍。
わずかながら残ったヒヒイロ侯爵の軍は
ほうほうのていで黒船にたどり着いた。
急いで帆を上げて櫂を漕がせた。
『はよう、はよう、!!』
『本国へ返るのじゃ!!』
『二度と、再びエリスシオンの地は踏まぬぞ!!』
豪雨と荒波の中、ヒヒイロ侯爵軍の黒船は姿を消していった。
ハル王軍団から勝利の雄叫びが上がる。
『勝ったぞーーー!!』
『オーーーーーッ!!』
やがて雷雨も止み空が晴れ始めた。
全ての人々の視線は空へと向けられていた。
空の真ん中で対峙する金の龍と大魔龍。
ラグナロクの頂上決戦。
暗黒総帥オリハルコンと戦乙女ヴァルキリーの一騎討ちが、まさに始まろうとしていた。
戦乙女ヴァルキリーの手には全ての悪を打ち払う魔剣ティルヴィングが光を放っていた。
そして対する暗黒総帥オリハルコンの手には救世主を刺し通す伝説の槍ロンギネスと……
物語の終結を示す万物を見通す眼。
プロメテウスの【サーガリング】
遂に、このラグナロクの丘にティルヴィングとサーガがまみえた。




