ロング.ムー開眼の時。
ガァーーーーン》》》
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小高い丘の上に建つエリス.シオンの聖所パトリシア修道院の外壁に斧を振るう石工たちの姿。
『土台の石は砕いてはならん!』
『修道院を破壊したのち、その上に大聖堂を築くのだ!』
石工たちの指揮をとる魔術師スレンの姿。
修道院の周りを遠巻きに囲みその様子を悲嘆にくれながら見ている老人から幼い子供たち。
腰の曲がった脚の自由が効かぬ一人の老婆がたまらず石工たちの間に割って入った。
『斧を振るうのをお止めくだしゃれ!』
『ここは先祖代々に渡る聖所でございます!』
『汝らの頭に必ずや三女神の怒りの鉄槌が下りましょうぞぉ!』
石工たちのが笑いながら老婆を押し倒し罵倒した。
『この死に損ないめ!』
『俺たちの仕事の邪魔だ!』
老婆は倒れた込んだ拍子に砕かれた石に頭をぶっけて気を失った。
魔術師スレンが老婆の元へ近付き二人の石工に命じて近くの池に放り込むよう命じた。
修道院の周りで、その有り様を見て震える村の人々。
『よいかー!』
『何人たりとも、邪魔をするものは容赦せぬ!』
気を失った老婆を運ぶ二人の石工の前に霧がどこからともなく流れてきた。
やがて、その霧は光を放ち、その後、人の形を成した二人の美女が現れた。
一人は黄金色の髪に夜明けの青空のように透き通った眼をしていて
また一人は銅色の髪に深緑の葉から滑り落ちる朝露のような煌めく瞳をしていた。
二人の石工は、しばらく、その二人の美しさに見とれて呆然と立ち止まった。
二人の石工は、互いに顔を見合わせ、声を揃えて呟いた。
『もしや……女神?』
黄金色の髪をした美女が前に進み出て二人の石工に告げた。
『そたなたちの咎は問わぬ……老婆を下ろし、お前たちの主人に伝えよ。』
『三女神、怒りの雷が降りる前に、この地を離れ己が領地へ帰せよと…』
二人の美女は老婆を宙に浮かせると霧の様になり村人たちの中へと消えていった。
老婆は、ゆっくりと芝生の上に下ろされた。
『わしは、生きておるかのう…?』
金髪の少年が老婆を、優しく抱き起こして話し掛けた。
『おばぁちゃん、もう大丈夫だよ、女神様が助けてくださつたから。』
それを聞いていた村人たちがザワザワと何やら話し込んでいた。
一人の村長らしき老人が少年の前に進み出て訊ねた。
『少年よ……お前は女神様を見たのか?』
少年は頷き答えた。
『見たよ!、はっきりと』
村長がさらに訊ねた。
『お前は名を何と言う?』
『僕の名前は【ロング.ムー】』