聖都エリス.シオン無血開城、名門ラミス家の凋落(ちょうらく)。
二万の大軍で悠然と進む隊列。
先頭を行く黒十字に金をあしらった大きなモニュメントが太陽の光に煌めく。
黒十字騎士団を先頭に、弓兵、剣兵、槍兵が黒山の様に続いている。
漆黒の破壊騎士に率いられた神聖ヘーベル帝国の行軍である。
怒濤の勢いでヘーベル河周辺の都市を傘下に収めた彼。
今や並ぶ国なしと、その台頭ぶりを世に知らしめた。
四散分裂したサバナ地方で領主に格下げされたヒヒイロ侯爵が本国の留守を預かることとなった。
国費を消耗する銅孔雀台の建設は頓挫し后も他国へと亡命したとの噂が
新しき帝国の主、ハルの元へ届けられていた。
漆黒の破壊騎士の歩みを妨げる者は皆無だった。
なんなく、ヘーベル河を渡りエリス.シオン城を包囲し使者を送るハルの表情は既に帝王の風格を備えていた。
あとは、聖都エリス.シオンで王冠を手に入れ正式に戴冠式を行なえば
名実ともに世を統べるエリス.シオンの頂上を極めし聖別王となることを彼は知っていた。
聖都シオン城の門が開かれ使者の努めを担った軍師スレンがハル皇子の書簡を持ち
サー.ラミス王が座る玉座の間へと二人の門番により案内された。
軍師スレンが扉の前に立つと、従者の兵士が荒々しく扉を開けた。
バターーーーン)))
王座で、震えながらスレンを見ているサー.ラミス王
『我、主からの書簡である!』
その場に立ったまま、スレンが書簡を前に突きだした。
国王の母メグ.メルがスレンの無礼な態度を諌めた。
『スレン殿、それが一国の君主に接する態度とは思えませぬ!』
スレンは国母メグメルに視線を移して呟いた。
『これは、これは……リシュフエンドルフ后、久方ぶりにお会いでき光栄でごさいます。』
『彼の国へ使者として訪れた時以来でございます……麗しき姫君であられましたが……めっきり、お歳をとられましたなぁ。』
『かくゆう、わたくしめも、他人事ではありませんが……ワハハハハ』
その後、スレンの嘲笑の表情が次第に強張ったものへと変化して言った。
『敗国の王サー.ラミスよ!』
『ここへ来て、ハル皇子の書簡を受けとるのだ!』
震える足取りで玉座を降りスレンの元へ向かうサーラミス王。
国母メグメルの伏せた顔から涙がこぼれ落ちる。
『女神エリスの血筋を受け継ぐラミス家も我、息子の代で終わるとは……
お許しくださいませ、歴代のラミス王族たちよ。』
スレンから震える手でハル皇子の書簡を受け取ったサー.ラミス王は封を開き目を通し再び彼を見た。
そこでスレンが口を開いた。
『聖都エリス.シオンの開け渡しとエリスの血脈を継ぐ名門ラミス家の断絶を条件に助命を許す!』
『城門まで出向き、自ら聖王冠をハル皇子に手渡し禅譲せよ!』
『その後、貴殿は母君と余生を霧の湖ででも過ごされよ……称号はサー公とでも呼ばれるがよかろう。』
ラミス家の最後の王、サーは、スレンに自らの命と母メグメルの助命を願い、重い足取りで城門へと歩いて行った。




